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Volume 10, No.1 Pages 2 - 3

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

「長期利用2003A採択課題中間評価」について
Intermediate Evaluation of 2003A Long-term Proposal

(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 User Administration Division, JASRI

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 2000B期(平成12年10月〜平成13年1月)から開始した特定利用課題は、2003B期(平成15年9月〜平成16年2月)から重点研究課題を導入するのに合わせて長期利用課題と改称し実施しています。これまで中間評価は5回実施しましたが、その内3回は「特定利用 中間評価」として実施し、第4回中間評価から「長期利用 中間評価」と改称しました。 今回、第6回中間評価として長期利用2003A採択課題の中間評価を実施しましたので、その結果を報告します。
 長期利用の中間評価は利用研究課題選定委員会長期利用分科会において、書類による評価と面接による評価の両方で行いましたが、面接評価の際に評価用書類の内容をふまえて、(1)研究の進捗状況(2)採択時の審査員の意見の反映度(3)成果の発表状況(4)成果の位置づけ、意義(5)3年目の計画の妥当性、の5つの観点から評価を行いました。以下に対象課題の評価結果と研究概要および得られた成果を示します。


〔課題名〕:100万気圧以上における高温その場観察実験の開発と地球惑星内部物質の相転移の研究
〔実験責任者〕:巽 好幸(海洋研究開発機構)
〔採択時の課題番号〕:2003A0013-LD2-np
〔評価結果〕:実施する。
〔研究概要〕
 地球を構成するマントルとその金属核の境界での圧力・温度は、135万気圧3000K以上に達しているとされる。高輝度X線を用いたその場観察実験から導き出される超高温高圧下における物質の安定な結晶構造、圧縮率、熱膨張率などの結果から、地球や惑星深部の層構造をはじめて解明できる。しかしながら、100万気圧を超える圧力と2000K以上の高温高圧の状態におけるX線その場観察の報告例はきわめて限られており、ほぼ未知の世界である。
 本研究では、100万気圧以上の超高圧下における高温実験の技術開発を積極的に行う。具体的には、300万気圧・4000Kにおけるその場観察実験を目指し、Nd:YLFレーザーの導入とX線集光光学系の整備を行う。
 それにより、マントルの底にあたる135万気圧・2500Kまでの温度圧力範囲でパイロライトのその場観察実験の実施、マントルと化学的に大きく異なる玄武岩海洋性地殻の下部マントルにおける密度の決定、地球の内核(固体鉄)・外核(融解鉄)の温度を制約する重要なデータとして300万気圧までの鉄の融解曲線の決定、地球の核の温度圧力条件に相当する300万気圧・4000K間での条件でX線回折その場観察実験を行い、鉄及び軽元素の系における安定な相とその結晶構造・相転移の解明を行う。
 また、技術開発の成果を他分野へ積極的に公表すると同時に実験技術の普及を行うことで、超高温・高圧条件を利用した材料科学・新物質開発の分野の発展にも貢献したい。

〔成果〕
 本課題は、ダイヤモンドアンビルにより非常に高い圧力を、レーザー加熱により非常に高い温度を同時に発生させ、X線その場観察実験を通して、地球・惑星科学物質研究を遂行することを目的としている。200万気圧、2000Kまでの条件下での高温高圧発生については、技術開発が順調に進展し、当初の計画をすでに達成している。その上で、この高温高圧発生技術を利用して、地球マントル最下部に相当する温度圧力でケイ酸塩鉱物のX線高温高圧その 場観察実験を精力的に実施している。結果として特筆すべきは、ポストペロブスカイト相の存在を世界で初めて発見したことである。シミュレーション法を活用することで、その結晶構造の解析にも成功しており、地球マントル最下部のD”層における地震波速度の異常がうまく説明されている。


〔成果リスト〕
(原著論文)
1. 6361 Murakami et al., “Post-Perovskite Phase Transition in MgSiO3”, Science,304,(2004)855-858.

2. 6362 Kurashina et al., “Phase Transition of Albearing CaSiO3 Perovskite: Implications for Sesimic Discontinuities in the Lower Mantle”, Physics of the Earth and Planetary Interiors,145,(2004)67-74.

3. 6517 Oganov and Ono, “Theoretical and Experimental Evidence for a Post-Perovskite Phase of MgSiO3 in Earth's D˝ Layer”,Nature,430,(2004)445-448.

4. 6519 Iitaka et al., “The Elasticity of the MgSiO3 Post-Perovskite Phase in the Earth's Lowermost Mantle”,Nature,430,(2004)442-445.



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794