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Volume 18, No.4 Pages 315 - 317

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第8回三極X線光学ワークショップ
3-way X-ray Optics Workshop VIII

後藤 俊治 GOTO Shunji

(公財)高輝度光科学研究センター 光源・光学系部門 Light Source and Optics Division, JASRI

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 表題のワークショップは2013年7月30日、31日にアメリカのアルゴンヌ国立研究所(ANL)において開催された。このワークショップはESRF-APS-SPring-8三極ミーティング本体のサテライトとして行われているもので、2001年11月にESRFにおいて第1回が開催されてから3周目となる。前回は2012年1月末にESRFにおいて開催され、その後の各施設での放射光X線光学に関連する進展などを中心に報告・議論された。前回はESRFの組織の構造を反映する格好で、光学系に関連したメカニカルエンジニアリングと検出器の話題を加えて、2日間のプログラムが組まれたが、今回は再び光学系を中心としたワークショップへとフォーカスされ、その上で2日間のプログラムとなった。プログラムは以下に示す通りである。ESRF、APS/ANL、SPring-8に加え、PETRA-III/DESYからの参加による25件の口頭発表が行われた。各施設の概要報告、結晶光学2セッション、薄膜、シミュレーション・モデリング・コヒーレンス、光学素子評価、ナノ集光の7つのセッションが展開された。また、APSからは数件のポスター発表も行われた。参加者は約50名であった(写真参照)。以下は必ずしもプログラム順ではなく、また、すべてを網羅したものでもないが、簡単にワークショップの概要について報告する。


〈概要〉大橋(SPring-8)からは、内面を滑らかにしたフレキシブルチューブを用いた液体窒素冷却二結晶分光器の高安定化や、新たにSPring-8内に成膜ラボが立ち上げられたことなどが報告された。R. Barrett(ESRF)からグラナイト架台による高安定な光学系機構の標準化や、液体窒素冷却ミラーの開発状況などが報告された。ESRFのアップグレード計画もにらんで一段高いレベルでの光学機器の標準化を図っているように見える。H. Schuite-Schrepping(PETRA-III)からは独自のミラー調整機構の設計や、液体窒素冷却のミラー・多層膜の開発状況などが報告された。L. Assoufid(APS)からはプロファイルコーティングによるK-Bミラーの仕上げとその計測技術、また、新たに立ち上がった光学系評価ビームライン(1-BM)の話題などが提供された。

〈結晶光学・薄膜〉J. Härtwig(ESRF)は、シリコンの研磨表面の状況でダメージやコンタミネーションの様子が異なること、仕上げをよくすると散漫散乱が少なくロッキングカーブの裾がきわめて小さい、良好な分光結晶が得られことを示した。分光結晶の表面研磨仕上げの工夫とあわせて、そのX線的な高品質評価技術の確立が重要になるだろう。PETRA-IIIでもシリコン結晶分光器や多層膜分光器でスペックルが見られることが報告されており、また、C. Morawe(ESRF)が最近(今回の発表でも)指摘しているように、多層膜の評価をしていると基板のシリコンの不十分な仕上げに起因するスペックルがみられるということであり、シリコンの表面加工仕上げは一段上のグレードが求められ始めているという印象をもった。
 各施設とも非弾性散乱(IXS)の光学系の開発と利用が積極的に行われている。特にESRF、APSでは共鳴非弾性散乱(RIXS)の開発整備・利用を積極的に進めている。このように、ESRF、APS、SPring-8ではそれぞれで高分解能分光器とアナライザ結晶システムの開発が盛んに行われている。石川大介(SPring-8)は非弾性散乱ビームライン用のアナライザ結晶の開発状況として、温度勾配アナライザによる色収差解消のアイディアを紹介した。X. Huang(APS)は、RIXS用の高分解能分光器・アナライザの開発状況について報告した。ESRFでもRIXS用の分光器・アナライザが整備されつつある(R. Barrettの報告)。これらは複結晶法であったり、アナライザに多くの結晶を精度よく並べるなど全体が大掛かりになる。基本的なビームライン光学系のコンセプトが重要であり、さらに湾曲型アナライザの製造技術が重要となっている。特に湾曲基板と反射シリコン結晶の接合技術が重要である。山崎(SPring-8)は液体窒素冷却高熱負荷分光器の安定化とオフラインでの高熱負荷試験の話題について報告した。現状分光器において0.1秒程度の角度安定性が達成されている。I. Sergeev(PETRA-III)からLarge-Offset Monochromator(LOM)に関して報告がなされた。PETRA-IIIは大きなリングの改修というその生い立ちゆえにビームライン同士がSPring-8よりもいっそう近接しているため、LOM(オフセットが1 mを超える巨大な二結晶分光器)で隣同士を隔てスペースを確保するという工夫をしている。これが可動機構部の脆弱性をもたらし、その結果、冷媒循環による振動に弱いという弱点を露呈した。この点は以前から問題と感じていたが、今回さらに明らかになったようである。香村(SPring-8)は前回の澤田の理論的な報告に続いてBerry位相アプローチのいくつかの興味深い実験結果について示した。

〈ナノ集光〉湯本(SPring-8)は二次元集光を可能とする回転楕円ミラーの開発状況について報告した。APSではプロファイルコーティングによる楕円ミラーの製作を長く進めてきており、B. Shi(APS)がその製作の現状について、W. Liu(APS)がその白色ビーム集光への応用について報告した。また、M. Wojcik(APS)はフレネルゾーンプレートによる20 nm程度の集光の現状について報告した。

〈光学素子評価〉 仙波(SPring-8)はLTPによるミラー表面形状観察の現状や、可搬型Fizeau干渉計によるオンサイト光学素子表面計測技術の状況について報告した。A. Vivo(ESRF)はESRFで使用される数多くの光学素子の形状計測を続けており、その現状を報告した。S. Marathe(APS)は透過型回折格子を用いたAt-wavelengthの光学系評価方法について紹介した。

〈シミュレーション・モデリング・コヒーレンス〉 M. Sanchez del Rio(ESRF)は長年にわたりShadowをベースにした統合ソフトウェアXOPを開発・提供しているが、基本は光線追跡であり、ここにいかに波動の要素を足していくかで苦労しているようである。一方、X. Shi(APS)のシミュレーションは波動から出発しており、集光ミラーに同じ表面形状誤差を与えて光線追跡と波動計算の比較をデモンストレーションした。前者では全くビームが集光できないのに対し、後者はビームプロファイルを崩しながらも集光するという差があり、波動計算の重要性が指摘された。
 8月2日の午後に三極ミーティング本体においてL. Assoufid(APS)によりワークショップの概要が報告された。次回は三極ミーティング本体が2015年3月ごろSPring-8において行なわれることが決まった。これに合わせて光学ワークショップが行われることになるだろう。



三極X線光学ワークショップVIII参加者



三極X線光学ワークショップVIIIプログラム
Organizing Committee: Lahsen Assoufid (APS); Ray Barrett (ESRF); Shunji Goto (SPring-8), and Horst Schulte-Schrepping (PETRA-III)


July 30 (APS Auditorium)

9:50 Welcome/General Information
(Lahsen Assoufid, Chair, Optics Workshop/APS)
9:55 APS Welcome
(Linda Young, Director, X-ray Science Division/APS)
10:00 Opening
(Dennis Mills, Deputy Associate Director/APS)

Session 1: Optics Overviews (Chair: Dennis Mills/APS)
10:15 SPring-8
(Haruhiko Ohashi/SPring-8)
10:40 ESRF
(Ray Barrett/ESRF)
11:05 PETRA-III
(Horst Schulte-Schrepping/PETRA-III)
11:30 APS
(Lahsen Assoufid/APS)

Session 2: Crystal Optics-1 (Chair: Shunji Goto/SPring-8)
13:15 Crystal Optics at ESRF
(Jürgen Härtwig/ESRF)
13:40 High-resolution Crystal Optics R&D at APS
(Xianrong Huang/APS)
14:05 High-resolution Crystal Optics
(Daisuke Ishikawa/JASRI)
14:30 Analyzer Crystal Development at the ESRF
(Ray Barrett/ESRF)

Session 3: Thin Film Optics (Chair: Al Macrander/APS)
15:15 Thin-film Optics R&D at the APS and Deposition Laboratory Upgrade Plans
(Ray Conley/APS)
15:40 News from the ESRF Multilayer Facility
(Christian Morawe/ESRF)
16:05 K-B Mirror Fabrication Using Thin-film Coating
(Bing Shi/APS)
16:30 Optics Facilities Tour

July 31, 2013 (APS Bldg. 401, Room A1100)

Session 4: Crystal Optics-2 (Chair: Horst Schulte-Schrepping/PETRA-III)
9:00 Topics on Berry Phase Approach
(Yoshiki Kohmura/RIKEN)
9:25 Stability Issues at Monochromators and Mirrors
(Ilya Sergeev/PETRA-III)
9:50 High-heat-load Monochromator
(Hiroshi Yamazaki/JASRI)
(Coffee Break)
10:35 Updates on High-heat-load Cryo-cooled Crystal Systems
(Ralph Döhrmann/PETRA-III)
11:00 Recent Developments in Diamond Crystal Optics for XFEL and Synchrotron Radiation Sources
(Yuri Shvydko/APS)

Session 5: Optics Simulation, Modeling and Coherence (Chair: Christian Morawe/ESRF)
11:25 Optics Modeling and Simulation at ESRF
(M. Sanchez del Rio/ESRF)
11:50 Optics Modeling and Simulation at APS
(Xianbo Shi/APS)

Session 6: Optics Testing (Chair: Haruhiko Ohashi/JASRI)
13:25 Status of 1-BM Optics & Detector Test Beamline
(Al Macrander/APS)
13:50 Challenges in Metrology at the ESRF
(Amparo Vivo/ESRF)
14:15 Metrology at SPring-8
(Yasunori Senba/JASRI)
14:40 At-Wavelength Metrology Using Grating Interferometry
(Shashidhara Marathe/APS)

Session 7: Nanofocusing Optics (Chair: Ray Barrett/ESRF)
15:25 Zone Plate Development at the APS: Status and Plans
(Michael Wojcik/APS)
15:50 Deformable Mirror and Stitching Interferometry for Nano-focusing
(Hirokatsu Yumoto/JASRI)
16:15 Performance of Micro/Nano-focusing K-B Mirrors under White and Pink Beams
(Wenjun Liu/APS)
16:40 Closing

 

 

 

後藤 俊治 GOTO Shunji
公益財団法人高輝度光科学研究センター 光源・光学系部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0877
e-mail:sgoto@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794