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Volume 18, No.4 Pages 321 - 323

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

APS-ESRF-SPring-8三極ミーティング2013 User Servicesワークショップ報告
Report on the APS-ESRF-SPring-8 Meeting (3WM2013) User Services Workshop

神辺 圭一 SHINBE Keiichi

(公財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 User Administration Division, JASRI

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1. はじめに
 APS・ESRF・SPring-8のUser Officeの関係者が定期的に集まり、今まで培ってきた知識や経験を共有し、より効果的・効率的な運営に役立てることを目的としたUser Servicesワークショップが三極ミーティングに合わせてAPS(米国シカゴ アルゴンヌ国立研究所内)で開催された。本ワークショップは2004年に第1回目がSPring-8で開かれ、今回が4回目となる。本稿では、各User Officeの発表内容についてまとめる。


2. 会議内容
 User Servicesワークショップは、7月31日にAPSカンファレンスルームA5000室にて開かれた。今回は、米APS・仏ESRF・SPring-8に加え、第3回目のワークショップから参加をはじめたPETRA-III(独DESY)による発表もあり、11名の発表者および十数名の聴講者が会議室に集った。
 まず、はじめにSusan Strasser氏より、開催の挨拶およびAPSの概要説明があった。APSのUser Officeのスタッフは現在10名が在籍しており、うち9名が常勤職員である。また2012年度のAPSの予算規模は約1億4千万ドル強であり、年々増えている。ユーザーの利用実績については、利用者数、実施課題数、ビームタイムともに毎年漸増傾向にあるとの報告があった。加えて、APSの2012年の成果登録数は1,500件(うち査読付論文は1,400件強)に達しており、こちらも増加基調にある。なお、実施課題数はSPring-8と比較すると倍以上に達するが、これは測定代行(メールインサービス)の利用比率が高く、これらの実施件数も課題数に含まれているためである。
 次にJoanne McCarthy氏によるESRFの施設概要の説明があった。ESRFの2012年度の予算規模は約8,600万ユーロであり、ヨーロッパ各国の共同出資による運営が行われている。さらに、2013年からは出資国に南アフリカ共和国が加わった。また、2009年から2015年にかけてESRFの改修計画が行われており、実験ホールの拡張やビームラインの増設も進行中とのことである。近年の利用実績については、課題申請数、実施課題数、ビームタイム、登録研究成果数(2012年は1,800件)ともに過去5年間ほぼ同じ水準を保っている。
 続いて、DESYから初参加のDaniela Unger氏より、PETRA-IIIおよび周辺施設の概要説明が行われた。PETRA-IIIは2007年に既存の放射光施設を全面改修したものであるが、2014年には実験ホールの拡張工事に取りかかるため、ユーザー向けの運転は行われないとのことである。また、2015~16年にかけてビームラインの増設計画も進行中であり、工事中の停止期間にあわせてユーザー向けWeb申請システムの改修も実施予定である※1。なお、PETRA-IIIの募集サイクルはSPring-8と同じく年2回であり、実験報告書も提出が義務化されている(実験終了後3ヵ月以内)。ただし、文量はA4紙1ページ程度であり、内容の一般公開もされていないとのことである。一方、研究成果の登録については、User OfficeとLibraryの担当者によって妥当性のダブルチェックが行われているとの言及があった。また、DESYではWeb上で実験内容に応じた安全教育のオンライン配信に対応しており、来所前に受講できる点がSPring-8のユーザーポータルとは異なっていた。
 SPring-8からは大野が施設概要と研究成果の現状についての説明を行っている。
 午前の部の後半のセッションでは、研究成果データベースについて、APSのRick Fenner氏による説明があった。APSでは、専任の研究成果管理者が在籍しており、データベースに登録されている全てのジャーナルにインパクトファクターを関連付ける作業等も並行して行っているとのことであった。また、APSでは、毎週新着の登録論文を公式Twitterアカウント(@advancedphoton)でも紹介している。
 午後の部では、最初にユーザーのデータ管理に関する発表が行われた。まず、APSのConstance Vanni氏からAPSのWeb申請システムの概要説明があり、ユーザーポータルサイトでは課題申請や来所申込書類の提出といったSPring-8のシステムと同様の機能の提供に加えて、誓約書類の電子署名機能や安全教育のオンライン受講といったAPSの独自機能の紹介もあった。なお、APSではバッジ番号(SPring-8のユーザーカード番号に相当)は自動的には割り振られず、ユーザー登録後にスタッフによる承認を経てから発行されるようである。
 続いて、筆者よりSPring-8のWeb申請システムの現状説明およびSACLAユーザーの受け入れにシステムをどのように対応させたか、また今後どのような機能拡張を予定しているかといった内容の報告を行った。
 APSのSusan White-DePace氏からは、NUFO※2(National User Facility Organization)と呼ばれるアメリカ国内の研究機関および海外の研究機関を利用するアメリカ人研究者向けユーザー組織の説明があった。NUFOは複数の研究機関を束ねたユーザー組織であり、一般への啓蒙・広報活動に加え、政府や議会、産業界などへの提言といったいわゆるロビー活動も行っている。
 続いて、今度は課題制度に関するトピックへ移り、APSのBeverly Knott氏より、課題の仕組みに関する説明があった。APSの課題募集サイクルは年3回であり、科学審査は1課題に対し2人のレフェリーがレビューを行う。また、課題選定は大きく分けて「一般の課題」「蛋白質構造解析または粉末解析の課題」で区分けされ、前者の課題は審査員がAPSに参集して審査を行う。一方、後者の課題については、審査員が集まらずにリモート審査で採否を決定する。また、ビームタイム配分についても同様に、前者は担当者がAPSに集まって直接割り当て作業を行うが、後者は電話会議で配分を決定するとのことであった。なお、最近のAPSにおけるWebシステムの開発事項としては、粉末解析の測定代行課題(メールインサービス)や複数施設を利用する課題種別への対応が挙げられていた。
 さらに、ESRFの課題選定フローの変更について、Joanne McCarthy氏からの報告があった。ESRFでは従来、平均8名からなる審査委員会(11科学分野のグループ)が課題を包括的に審査していたが、採否決定までに時間を要し、また課題申請数が増えるにつれ、課題評価の一貫性の担保が難しくなってきたため、2012年9月より新しい審査フローを導入するに至った。新制度では、課題申請時に申請者自身が希望審査分野や社会テーマ・産業分野への関連性を明示的に記述(選択)し、ここで指定した分野に基づいたグループによって審査が行われる。この方式の導入により、各課題審査グループの責任の明確化や採否決定までに要する時間を2週間短縮できたといったメリットがあったという。なお、SPring-8の課題選定は以前より、申請者が希望する課題審査分野に基づいた個別の分科会によって行われており、今回ESRFが採用した仕組みを先取りしていたと言えよう。
 コーヒーブレイクを挟んだ後、APSで実験する海外ユーザーの手続きについて、Susan White-DePace氏による説明があった。アメリカの国立研究所を利用する海外ユーザーに必要な手続きはDOE Order 142.3で定義され、APSの誓約書類も基本的にこの内容に準拠している。誓約書には免責事項や知財の取り扱い、権利放棄事項などが定義されており、ユーザーは課題の実施前に全項目への同意が求められる。また、海外ユーザーは、最も利用する施設の情報をDOEのFACTS(Federal Access Central Tracking System)データベースに登録する必要もある。なお、ユーザーは所属国によってnon-sensitive country(日本、イギリスなど)、sensitive country(中国など)、T4 country(キューバなど)に分類されるため、手続き内容や来所の可否判断が異なってくるものと思われる。
 最後に、鈴木よりSPring-8のユーザー組織(SPRUC)の概要および2009年の事業仕分けの顛末に関する報告があり、その後、本日の各発表を総括するディスカッションの時間が設けられた。


3. まとめ
 User Servicesワークショップを通じて感じられたのは、User Officeの悩みと課題はどこも似たり寄ったりということであった。それは、研究成果の登録が不完全、提出書類が期日までに揃わないといった個々のユーザーに関わるトラブルから、頻繁に変わる制度対応への苦労、財源や人的リソースの不足など多岐にわたると言える。また、User Officeに留まらず、組織全体として産業分野の利用を一層促す取り組みを進めていることが各施設の発表から強く感じられた。さらに、将来のアップグレード計画は各施設ともに着々と進んでいるため、筆者もSPring-8/SACLAのユーザー向けWebシステムの担当者として今後もユーザーや施設、社会のニーズを敏感にくみ取り、改良や新機能の開発を継続的に進め、またシステムが安定的に稼働するような運用体制を維持し、すべての利用者にとって安全・快適なシステムを提供できるように尽力したい。


参考:プログラム
User Office Satellite Workshop Three-Way Meeting (3WM) Wednesday July 31, 2013
Conference Rm. A5000

-Facility Overviews-

9:10 Welcome
Susan Strasser, APS
9:15 APS
Susan Strasser, APS
9:45 ESRF
Joanne McCarthy, ESRF
10:15 Coffee Break
10:30 PETRA-III
Daniela Unger, PETRA-III
11:00 SPring-8
Hideo Ono, SPring-8

-Publications-

11:30 Description of the APS Publications Database
Rick Fenner, APS
11:45 SPring-8 Publication Process
Hideo Ono, SPring-8
12:00 Working Lunch
General Discussion of Publications Issues
Rick Fenner, Discussion Leader

-Databases and Data Management-

13:00 APS User Portal and Associated Databases
Constance Vanni, APS
13:15 SPring-8 User Portal
Keiichi Shinbe, SPring-8
13:30 National User Facility Organization Portal
Susan White-DePace, APS
13:45 General Discussion
Susan Strasser, Discussion Leader

-Scientific Access: Proposal Systems-

14:00 APS Beam Time Access System Overview
Beverly Knott, APS
14:30 ESRF Proposal Review: New Structure
Joanne McCarthy, ESRF
15:00 General Discussion of Issues
Joanne McCarthy, Discussion Leader
15:30 Coffee Break

-Special Facility Access: Requirements/International and Government Review-

15:45 APS Non-U.S. Citizen Issues and User Agreements
Susan White-DePace, APS
16:00 Governmental Issues in Japan
Masayo Suzuki, SPring-8

-User Meetings, User Organizations, User Workshops, Industrial Issues-

16:15 SPring-8 User Issues
Masayo Suzuki, SPring-8
16:45 General Discussion
Constance Vanni, Discussion Leader
17:30 Adjourn

謝辞
 今回の三極ミーティングおよび本ワークショップのホストを務めたAdvanced Photon Sourceの関係各位、SPring-8の報告を一部担当していただいたJASRI研究顧問の大野英雄氏およびJASRI研究調整部部長 鈴木昌世氏、発表内容に関する様々なアドバイスを寄せていただいた利用業務部の各位にこの場を借りてお礼申し上げます。


※1 現行のユーザー向けWeb申請システムは、PSI(スイス)が開発したプログラムをベースにしている
※2 National User Facility Organization
  http://www.nufo.org/

 

 

 

神辺 圭一 SHINBE Keiichi
(公財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 図書情報課
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-2797
e-mail:shinbe@spring8.or.jp

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794