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Volume 09, No.5 Pages 382 - 383

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SRMS4報告
Report on SRMS4 International Conference

中村 哲也 NAKAMURA Tetsuya

(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門Ⅰ Materials Science Division, JASRI

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 2004年8月23日からの3日間、フランス・グルノーブルにおいて第4回Conference on Synchrotron Radiation in Materials Science(SRMS4)が行われた。私にとっては今回で3度目のグルノーブル訪問となった。昨年のヨーロッパは猛暑となりESRFの裏山も自然発火による森林火災にみまわれたそうだが今年は一転して冷夏となっており、今回の渡航は蒸し暑い日本から逃げ出してちょうど良い避暑となった。それにしても、グルノーブルの町を囲む切り立った山肌には荒々しい見事な地層模様が露出しており、何度訪れてもその美観に感動させられる。アルプスの山々を造形したダイナミックな大陸移動が造りだしたものなのだろうか。
 SRMS4は、アメリカ合衆国(APS)で行われた第1回、神戸で行われた第2回、シンガポールで行われた第3回に続くものであり、特にSRMS2は神戸で行われたこともあって良く覚えている方も多いと思われる。これまでのSRMS1〜3の会議では、材料評価の観点からどのような放射光利用が可能であるかについて活発な発表と議論が交わされてきた。今回のSRMS4には約220名の参加者があり、そのうち、およそ40%がEU圏外からの出席者で、参加国も27ヵ国に達した。各国が競うようにして放射光施設を建設していることを反映した結果ではないだろうか。オリンピック参加国数に迫ることも、そう遠い将来ではないのかもしれない。




写真1 グルノーブル駅前の様子




写真2 SRMS4ポスターセッションの様子



 日本からは32名が参加したが、そのうち8名が事務関係者であり会議内容の分析の他に、ESRFの視察とユーザー支援に関する情報交換などが行われたようである。事務関係者をこのような国際会議に多く見かけることは非常に稀であるが、研究者と事務官がそれぞれの異なる視点で動向の調査を行うことは歓迎すべきであろう。
 会議では27件のInvited talkを含む約50件のオーラルと、約140件のポスター発表が行われた。国際会議としてはあまり大きなものではないが、パラレルセッションも2会場のみで、個人的に興味のある講演が時間的に重複するような問題も感じられず、ゆとりのある規模であった。会議は、Semiconductors & Electronic materials, Surface & Interface, Magnetic materials, Clusters, Engineering materials, Biomaterials & Polymers, Glasses & Amorphous materials, Nanostructures, High pressures, Catalysis & Archaeological materials, Instrumentation & Techniques の11のセッションに分けて進められた。トモグラフやX線回折顕微などといったイメージングを中心的話題としたEngineering materials のセッションでは、材料の破壊状態やひずみ分布、さらに、多孔物質の“孔”の詳細分布などが3Dグラフィックスによって美しく映像化された講演が続いた。その他、オーラル発表の一部として、ブラジル、ポーランド、シンガポールなどの新しい放射光施設の建設等状況が紹介された。今回、220名の参加者数に対し非常に広範なトピックスが持ち込まれたために、各専門分野内での進捗状況を把握するには少々物足りない感じであった。しかしその一方で、放射光の透過・吸収、回折、非弾性散乱など多岐にわたる手法を用いた材料評価の有用性を参加者全員で再確認し、より一層の普及と発展を目指して議論するちょうど良い機会となったと思われる。
 会議が閉会した翌日には、ESRFの軟X線ビームラインID08の担当者(N.Brookes氏)を訪ね、ID08の各装置について説明していただいた後、ディスカッションをもつ機会に恵まれた。ディスカッションでは、ESRF ID08とSPring-8 BL25SUにおける装置の仕様、計測方法、平均ビームタイム、ユーザーとの関わりなどについて、広く意見交換を行った。その詳細な内容についての記述は省略させていただくが、今回の訪問で得た情報と刺激をSPring-8のアクティビティ向上に役立てたいと抱負している。
 最後に、グルノーブルの町でもっとも有名なバスチーユの丘で行われたバンケットにおいて、次回開催候補地として、イタリア(ベニス)、ブラジルなどが名乗りを上げたことを皆様に報告しておく。




中村 哲也 NAKAMURA  Tetsuya
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門Ⅰ
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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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