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Volume 18, No.3 Pages 230 - 232

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第13回SPring-8夏の学校を終えて
The 13th SPring-8 Summer School

八木 直人 YAGI Naoto

SPring-8 夏の学校実行委員会 委員長/(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI

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 第13回SPring-8夏の学校」は、6月30日(日)~7月3日(水)の3泊4日の日程で、全国から68名の学生の参加を得て、普及棟およびSPring-8蓄積リング棟・ニュースバル放射光施設・XFEL実験研究棟を会場として開校されました。この夏の学校は、SPring-8サイトに施設を持つ各機関((公財)高輝度光科学研究センター(以下、JASRI)、(独)理化学研究所 放射光科学総合研究センター(以下、理研)、(独)日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究部門)と、これらの機関と連携大学院協定を持つ大学(兵庫県立大学大学院物質理学研究科・生命理学研究科、関西学院大学大学院理工学研究科、岡山大学、北陸先端科学技術大学院大学)、およびSPring-8サイトにビームラインを持ちそこで教育を行なっている大学(兵庫県立大学高度産業科学技術研究所、東京大学放射光連携研究機構)が主催し、(公財)ひょうご科学技術協会の後援を得て、ビームタイムや教官を供出し合って行ったものです。校長は昨年に引き続き関西学院大学大学院理工学研究科(日本原子力研究開発機構兼務、日本放射光学会会長)の水木純一郎先生にお願いしました。実行委員会は主催団体のスタッフで構成され、事務はJASRI研究調整部が行いました。
 この夏の学校の開校目的は、「将来の放射光利用研究者の発掘と育成」であり、主として大学院博士課程前期(修士)と学部4年生を対象としています。募集人員は60名程度でしたが、これを上回る70人の応募がありました。しかし、今回は実習ビームラインの本数が昨年より2本増えて18本となったため、応募者全員の参加が可能と判断されました。その後参加者の都合でキャンセルもあり、最終的に68人の参加者で開催されました。
 今回の夏の学校では、初日に3講座、二日目に4講座の講義があり、その後の二日間に2テーマの実習を行いました。講義題目と講師(敬称略)は以下の通りです。
 放射光発生の基礎(理研 北村英男)、X線光学の基礎(JASRI/兵県大 山崎裕史)、回折散乱の基礎(関学 水木純一郎)、X線自由電子レーザー(JASRI 片山哲夫)、X線の強度を測る(JASRI 八木直人)、XAFS(JAEA/関学 西畑保雄)、軟X線スペクトロスコピー入門(東大 松田巌)。
 どの講義も、講師の先生方の工夫によって、専門外の学生も飽きることのない、分かりやすい講義となっていました。
 また、二日目午前にはSACLAとニュースバルの見学、夜にはSPring-8の見学を行いました。さらに三日目の夕方には、これまでの夏の学校にはなかったSPring-8蓄積リング収納部の見学が行われました。どれも案内者による丁寧な説明があり、施設の大きさや複雑さ、最新の装置技術に感銘を受けた参加者が多かったようです。
 実習のテーマと使用したビームラインおよび担当者(敬称略)は以下の通りです。

BL01B1 "その場"XAFS計測
(JASRI 宇留賀朋哉・新田清文・加藤和男・伊奈稔哲)
BL02B1 単結晶構造解析の入門
(岡山大 野上由夫、JASRI 杉本邦久・安田伸広)
BL02B2 粉末X線回折法を用いたダイアモンドと黒鉛の構造観察
(JASRI 金廷恩・宋哲昊、JASRI/北陸先端大 藤原明比古)
BL07LSU 合金の合成と光電子分光分析
(東大 原田慈久・松田巌・宮脇淳・丹羽秀治・小瀬川友香)
BL13XU高分解能マイクロX線回折による局所領域歪み測定
(JASRI/岡山大 木村滋)
BL14B1 X線吸収スペクトル入門
(JAEA 松村大樹)
BL14B2 その場XAFS計測
(JASRI 本間徹生・平山明香・高垣昌史・谷口陽介・大渕博宣)
BL19B2 粉末X線回折
(JASRI 大坂恵一・宮澤知孝・松本拓也、JASRI/岡山大 廣沢一郎)
BL19LXU 放射光時間分解X線回折法
(理研/関学 田中義人・大隅寛幸)
BL23SU 放射光光電子分光法による物質の電子状態分析
(JAEA 藤森伸一)
BL24XU放射光X線計算機トモグラフィ(CT)法の基礎
(兵県大 高野秀和)
BL25SU 高分解能軟X線光電子分光
(岡山大 横谷尚睦・村岡祐治)
BL26B1 単結晶回折(タンパク質)
(理研 引間孝明)
BL26B2 単結晶回折(タンパク質)
(JASRI/関学 熊坂崇、JASRI 奥村英夫)
BL37XU フレネルゾーンプレートを使った結像顕微鏡
(JASRI/関学 寺田靖子、JASRI 鈴木芳生)
BL40B2 X線小角散乱法を用いた蛋白質分子の構造解析
(JASRI 八木直人・関口博史)
BL46XU X線反射率
(JASRI 小金澤智之)
ニュースバル 放射光を用いたX線微細加工プロセス
(兵県大 山口明啓)


写真1 講義風景


写真2 実習風景


写真3 懇親会風景

 参加者は実習テーマの選択希望を出すことができますが、各ビームラインあたりの参加者数には限りがあり、すべての希望をかなえるのは無理でした。しかし、第一希望の実習は必ず受けられるよう工夫したので、ある程度の満足は得られたと思います。もちろん参加者は専門外の講義や実習も受けることもありますが、講師や実習担当の方々の努力もあって、専門外の分野の技術や研究にも十分に興味を持ってもらえたようです。学生時代に広い研究分野を学ぶことの重要性はしばしば指摘されていますが、一般の講習会では得られないような広範な知識を得られる点こそが、夏の学校の大きな特長となっています。
 夏の学校の目的は、放射光の勉強だけではなく、同世代の異なった分野の人たちとの交流を通じて知り合いの輪を広げ、将来の研究につなげることも重要な目的の一つです。初日には参加者の自己紹介と懇親会があり、三日目には萌光館でのバーベキューもあって、教官と参加者が一緒になって会話を弾ませていました。参加者が将来の進路を決める時の参考になることと思います。
 参加者が熱心に講義や実習を受け、また楽しんでいる様子からも、この夏の学校が有意義なものであったことは明らかでした。ここ数年夏の学校の参加希望者は増加しており、参加をお断りすることが多くなってきましたが、今年は実習ビームラインの数が増えたこともあって希望者全員が参加できたことは喜ばしいことでした。
 最後になりましたが、熱意のこもった講義をしていただいた講師の先生方、二日間にわたる実習を最後まで熱心に指導していただいた実習担当の皆様、分かりやすい説明で参加者の興味を引きつけてくださった見学引率者の皆様、特にSPring-8蓄積リング収納部の見学を可能にして頂いたJASRI加速器部門の方々に感謝致します。また、事務局としてウェブ作成から懇親会・バーベキューのお世話までご努力いただいたJASRI事務局担当者にも感謝したいと思います。


写真4 記念写真




八木 直人 YAGI Naoto
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-2750
e-mail: yagi@spring8.or.jp

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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