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Volume 18, No.3 Pages 226 - 229

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

上海で開催された第4回世界加速器会議(IPAC’13)に参加して
Report of IPAC’13(The 4th International Particle Accelerator Conference)

満田 史織 MITSUDA Chikaori、高雄 勝 TAKAO Masaru、大熊 春夫 OHKUMA Haruo

(公財)高輝度光科学研究センター 加速器部門 Accelerator Division, JASRI

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1.はじめに
 第4回世界加速器会議IPAC´13(http://www.ipac13.org/) が中国、上海にて開かれた。IPACは、ヨーロッパとアメリカで隔年交互に開催されていた加速器の国際会議EPACとPAC、アジアで3年毎に開催されていたAPACを統合したもので、地域の枠組みを超えて加速器に関する情報を共有することを目的としている。アジア・欧州・アメリカの3地域が持ち回りで開催することになっており、2010年京都開催の第1回[1][1] 水野明彦、大熊春夫、稲垣隆宏:SPring-8利用者情報3(2010) 179. から数えてアジア地域での二巡目の開催となる今回は、SSRF(上海放射光施設)を擁するSINAP(上海応用物理研究所)と中国の加速器研究施設のメッカであり、BSRF(北京放射光施設)を持ち、新たな回折限界光源リングBAPS(Beijing Advanced Photon Source)の建設を目指しているIHEP(高能物理研究所)が、中心となってホストを務めた。

2.会議概要
 会議は、2013年5月12日から17日までの6日間に渡って上海の黄浦江沿いに位置するShanghai International Convention Center(上海国際会議中心)にて開かれた。口頭発表は、座席数1000人規模の聴衆を収容できる大ホールとその半分の500人ほどを収容できる中ホールの二つの会場に分かれて行われた。初日のOpening sessionはその大ホールに一同会して行われた。ホールはいずれも仮設の演壇のみのフラットなフロアに椅子を並べただけの会場であったが、Awardの授賞式とClosingを含む最終日のsessionは演壇つきの数百人規模の聴衆を収容できる階段状のAuditoriumで行われた。参加登録した人数がおよそ1200人であることを考えると十分な大きさの会場である。ポスターセッションは中ホール口頭発表会場に隣接する小フロアと階下の大フロアにて企業展示とともに開催された。一日当たり、平均300件以上のポスター発表があった。


会場となった上海国際会議中心(地球儀を模した丸いドームを両脇に従えた建物)。バックには高さ468mの東方明珠電視塔

 会議運営はスムーズな進行で発表が取り行われ、1000人規模の参加者が集う国際会議としては配慮の行きとどいた会議運営であった。運営委員の努力に参加者として感謝の意を表したい。運営委員の報告によれば、参加登録者の地域別割合は、アジア地域32%、ヨーロッパ地域32%、アメリカ12%、企業展示のメーカー23%であった。国別では、中国256名、アメリカ141名、ドイツ115名、スイス88名、日本80名、イギリス41名、フランス33名などであった。
 プログラムは、初日午前のOpening sessionと最終日午前後半のClosing sessionおよび木曜日午後のAwardの授賞式を含む特別セッションを除き、他は全日、口頭発表のパラレルセッションが朝の9時から途中休憩・昼食をはさみながら夕方の4時まで行われ、その後2時間のポスターセッションが行われた。口頭発表の件数は、30分の招待講演が32件、20分の一般口頭発表が36件であった。全68件中、22件が放射光光源加速器に関するものであった。これは、2年前の会議と比べても全体としての比率は1/4から1/3と増加している。そのうち9件がXFEL関連の発表であった(こちらも2年前の発表数6件から増加している)。ERLについては、コミッショニングが始まったばかりのKEK compact ERLの現状報告があった。他の12件は光源リングに関するものであった。
 ポスター発表の件数は全体的に発表のキャンセルが目立ったが、1413件の発表申し込みに対して1187件の発表があった。プログラム構成としては初日を除き、午前から午後にかけての口頭発表で施設全体像の把握、要素技術開発の概要など浅く広く理解できるような発表が多く、個々の詳細についてはポスター発表にてその開発担当者から直に話を聞くことにより知ることが出来るようになっている。そのため、膨大な発表件数の中から比較的容易により広く深く情報収集をすることが出来る。紙面も限られているのでポスター発表は割愛するが、口頭発表で印象的であった発表について以下に報告する。

3.口頭発表報告
 まずは、Opening sessionであるが、昨年、最も話題となった科学ニュースとしてヒッグス粒子の発見(?)があったが、この実験が行われた欧州合同原子核研究機関の大型ハドロン衝突型加速器LHCに関して、実験の行われた2年3ヵ月における加速器の性能向上についての詳細な報告があった。
 放射光施設関係の総合報告としてZ. Huang(SLAC)より、放射光利用において将来に渡り重要となる輝度とコヒーレンスについてレビューがあった。蓄積リング型ではアンジュレーター、ウィグラー、そして回折限界が決め手となり、対して100 fs短パルス光であるFELは極度に高い輝度と平均パワーの高さで圧倒している。今後、Compact-FELも含めて将来の放射光としてそれぞれ施設としての利点を生かした目標へのアプローチが重要であるとまとめていた。
 Opening sessionのその他の発表として、加速器を大幅に小型化できると期待されるレーザー航跡場加速のレビューがあり、ここ10年以内に非常にコンパクトなFELの実現も考えられるとのことであった。また、嘗てない勢いで原発開発を進める中国のお国柄か、加速器駆動原子炉(Accelerator Driven System, ADS)のレビューがあった。ADSの実用化には大電流陽子加速器が必要となるが、これについても開発状況などの報告があった。
 次に、パラレルセッションにおける光源加速器に関連する注目すべきものについて報告する。
 電子蓄積リング及びFELで利用されるアンジュレーターについてのレビューがM. E. Couprie(SOLEIL)からあり、真空封止アンジュレーターから発展して、液体窒素温度まで冷却するクライオアンジュレーター、超伝導アンジュレーター、更に高温超電導アンジュレーターと開発が進んできているとのことであった。また、高速パルス電源による電磁場アンジュレーター、RFアンジュレーター、レーザー駆動アンジュレーターなど超短周期高磁場をキーワードとし技術開発が進んでいることが報告された。
 A. S. Muller(KIT)から、電子蓄積リングにおける短パルス光生成についてレビューがあった。短パルス光の用途として、時間分解分光実験、レーザーポンププローブ実験が挙げられており、各施設の短パルス光生成へのアプローチについて紹介があった。蓄積リングのオプティクスをバンチ長が短くなるように変更(注:電磁石励磁量の変更によりエミッタンスやバンチ長などのビームパラメーターを変更することが出来、それをオプティクスの変更と呼ぶ)する方法(Low-αモード)やRF加速電圧に高調波を加える方法によりバンチ長自体を短くする方法、レーザーで電子ビームにエネルギー変調を与え、電子ビームのエネルギー分散を利用して短バンチ電子ビームを分離しそこから短パルス光を取り出す方法(レーザースライシング)、横方向にビームを蹴る電磁波を用いて電子ビームを垂直方向に傾け発生したX線をスリットで切り出す方法など、短パルス光生成へのアプローチとして各施設で検討されていることについて具体的な事例を挙げて述べられた。いずれのスキームに対してもビーム不安定性の問題があり、短パルス光観測のための、高分解能・高繰り返し検出器の開発の問題があると報告された。また、短パルス光生成の新しい方法についてL. H. Yu(BNL)により、レーザーの代わりに低エネルギー短バンチ電子ビームを用いたスライシング法とそこから得られる光のスペックについて報告があった。従来の方法では、安定性や低繰り返しなど短パルス光の強度に問題があったが、短バンチ電子ビーム切り出しに信頼性のある線形加速器からの電子ビームを使うことで解決しようというものである。


口頭発表会場

 J. L. RevolによりESRFアップグレードのPhase IIについて報告があった。現在、ESRFは実験ホールの拡張やビームラインの延伸などのアップグレードが進行中であるが、こちらをPhase I、今回発表された光源改造の方をPhase IIと称し、エミッタンスの4 nm.radから150 pm.radへの低減を目指している。その技術的要点となるものは、1セルあたり7台の偏向電磁石を使用した電磁石配列と、進行方向に磁場強度の変化する偏向電磁石と偏向・四極コンバインドマグネットを併用し、低エミッタンス化による電磁石の高磁場化と加速器コンポーネント配列高密度化を緩和することである。2012年にデザインスタディに着手することをESRFの評議会が承認したということで、2015〜2018年に詳細設計及び部材調達、2018年にシャットダウン、2019年にはユーザー運転再開の予定とのことで、まるでどこかで聴いたようなスケジュールの計画であった。
 FEL関係の発表では、S. Reiche(PSI)よりSASE光とシード光についての比較レビューがあり、そのシード光生成スキームにおいてエネルギージッターの抑制が課題となるとの話であった。Y. T. Ding(SLAC)からLCLSでの極短電子バンチ、X線パルス長の測定方法の開発が報告された。C. M. Caselle(KIT)からは、ANKAで使用する超伝導THz検出器を使ったコヒーレント放射光の超高速DAQシステムについて報告があった。高温超伝導体YBCOを読み出し回路に使用し、3 ps時間分解能500 fsジッターでの検出を実現するものであるが、超伝導体の抵抗0の特性を生かした斬新な読み出し回路構成であった。European XFELの建設ステータスレポートとしてM. Huning(DESY)より報告があった。2014年秋に入射器系トンネルが完成する予定である。現在1.3 GHz、 23.5 MV/mの超伝導空洞の製作が800セル必要なところ100セルの製作が済み、そのうち全てが仕様規格内の出来であった。これらをすべて製作、クライオスタットに組み込みモジュール化するのに112週かかり2015年に加速管の完成、エージングの開始となる予定である。
 最終日のClosing sessionの1つとして、アジアにおける放射光施設の稼働状況、建設計画の全体像がD. Wang(SINAP)から発表され、アジアでの加速器の利用普及が放射光施設に特に多く幅広く進んでいることが理解できた。現在計画中の施設も含めて、西はトルコから東はオーストラリアの範囲に、中東で建設中のSESAME放射光国際センターや計画中のイランISRF、計画が明確ではないがトルコTACの3つの施設とその近くの西アジアのアルメニアCANDLEなどを加えて総数24施設があり、そのうち8施設が日本にて稼働している。新規施設として、2012年完成の中部シンクロトロン、アップグレードにより生まれ変わったPLS-II(韓国)、2013年に完成予定のHLS(中国)のアップグレード、2014年建設完了のTPS(台湾)が挙げられていた。XFEL計画として、PAL-XFEL(韓国)、DCLS(中国、大連)、SXFEL(中国、上海)が挙げられた。更に、第3世代放射光建設計画として東北放射光施設、回折限界光源リングとして中国北京BAPS、そしてSPring-8 IIが紹介された。アジアでの放射光施設の進展には目覚ましいものがある。この発表に関し、質疑応答にて「放射光新興国へ放射光の歴史がある国々は十分なサポートをしていかねばならない」とのコメントがあったのは印象的であった。

4.おわりに
 全体を通して、加速器の国際会議であるIPACでの放射光光源加速器の存在感が確実に増しているように感じられた。特に回折限界光源リングに関する進展は、リニアコライダーの前段のダンピングリングとも加速器技術として共通する点が多く、注目を集めている。この点は、XFELについても同様である。Opening sessionのHuangの発表では、光源リングやXFELの目覚ましい発展にも拘わらずまだまだこの分野の減速の兆候は見られないとのことで、更にこれに貢献しなければと気持ちを新たにしたところで報告を終えることにする。

 

 

参考文献
[1] 水野明彦、大熊春夫、稲垣隆宏:SPring-8利用者情報3(2010)179.

 

 

 

満田 史織 MITSUDA Chikaori
(公財)高輝度光科学研究センター 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0851
e-mail:mitsuda@spring8.or.jp

 

高雄 勝 TAKAO Masaru
(公財)高輝度光科学研究センター 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0860
e-mail:takao@spring8.or.jp

 

大熊 春夫 OHKUMA Haruo
(公財)高輝度光科学研究センター 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
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e-mail:ohkuma@spring8.or.jp

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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