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Volume 09, No.5 Pages 372 - 373

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第4回SPring-8夏の学校を終えて
4th SPring-8 Summer School

鳥海 幸四郎 TORIUMI Koshiro

兵庫県立大学大学院 物質理学研究科 Graduate School of Material Science, University of Hyogo

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 「第4回SPring-8夏の学校」は7月10日(土)〜13日(火)の3泊4日の日程で、全国から33名の大学院生および学部生等の参加を得て、放射光普及棟およびSPring-8蓄積リング棟を会場として開校されました。この夏の学校は、(財)高輝度光科学研究センター(JASRI)と姫路工業大学大学院理学研究科(当時)の共催で2001年に第1回を開催して、今年で4回目となります。今年の4月に姫路工業大学が兵庫県立大学に統合された関係で、夏の学校の運営組織が、JASRIと兵庫県立大学大学院物質理学研究科・生命理学研究科の共催と変わりましたが、校長には(財)高輝度光科学研究センター理事長の吉良爽先生、副校長には兵庫県立大学物質理学研究科長の川村春樹先生にお願いしました。実行委員会は、JASRIおよび兵庫県立大学大学院の物質理学研究科・生命理学研究科と連携大学院に所属する(独)理化学研究所播磨研究所および日本原子力研究所関西研究所のスタッフで構成され、夏の学校の運営を行いました。 
 
 
 
熱心に実習に取り組む参加者 
 
 この夏の学校の開校目的は、「将来の放射光利用研究者の発掘と育成」であり、大学院生と学部4年生を対象としています。当初は、手探りの状態で始めたということもあって、募集人数は20名程度、4本のビームラインを実習に使って2泊3日の日程で開校しました。参加希望者が多く、参加を断らなければいけなかったため、前回からは募集人数を50名として10本のビームラインを使い3泊4日の日程で開催しております。
 今回の夏の学校では、SPring-8利用実験の特徴と有効性について具体例を挙げて講義する応用講座に関して、学生の理解が深まるように実習を行った後で講義が聴けるようにスケジュールを組みました。このため、参加者は初日に基礎講座を4講、2日目と3日目に2テーマの実習を行い、4日目に夏の学校のまとめとして4つの応用講座を受講できることになりました。講義題目と講師は以下の通りです。4つの基礎講座、「SPring-8について、概要説明」原 雅弘(JASRI)、「放射光の発生」橋本 智(兵庫県立大高度研)、「挿入光源」田中隆次(理研播磨研)、「ビームライン」後藤俊治(JASRI)、また4つの応用講座、「放射光粉末法による結晶構造解析」高田昌樹(JASRI)、「蛋白質結晶構造解析」柴田直樹(兵庫県立大院生命)、「軟X線分光」下條竜夫(兵庫県立大院物質)、「放射光蛍光X線分析」中井 泉(東京理科大理)を開講しました。実習は、当初10テーマを計画しましたが、予定していた装置の故障等で8テーマで実行することになりました。実習テーマと使用したビームラインおよび担当者は以下の通りです。「粉末結晶構造解析(BL02B2)」加藤健一(JASRI)、「高温高圧物性(BL04B1)」舟越賢一(JASRI)、「軟X線磁気円二色性分光(MCD)(BL23SU)」岡根哲夫(原研関西研)、「微小領域高精度回折(BL24XU)」津坂佳幸(兵庫県立大院物質)、「タンパク質X線結晶構造解析(BL38B1)」長谷川和也(JASRI)、「タンパク質分子の電子密度の観察(BL44B2)」内藤久志(理研播磨研)、「白色X線回折(BL28B2)」今井康彦(JASRI)、「赤外物性(BL43IR)」森脇太郎(JASRI)。 
 
 
 
 
応用講座の受講風景 
 
 参加者は、講義とともに実習を十分に楽しんだようです。実習担当者の言を借りると、「はじめに予定していた実習内容を変更して追加するくらい、非常に興味を持って取り組んでいたように思う」「実習中に説明を熱心に聞いてくれましたし、色々と質問もしてくれました。関連分野の学生もそうでない学生も、興味を持って実習に取り組んでもらえたと思います」「興味を持って真剣に取り組んでいた。実験室と放射光の性能の違いを体験できたと思う」など、参加者の真剣な様子がうかがえました。
 夏の学校参加者にはアンケートに答えてもらいました。参加者の実習を行った感想は、「基礎的なブラッグの式により、ここまで最先端の実験結果が得られるとは、目から鱗が落ちる思いだった」「今までの平板法に比べて非常に微量でできて感動しました」「非常に楽しくできてとても有意義でした」など、実習担当者の苦労が報われるものが多くありました。また、夏の学校全体の印象としては、「様々な放射光を知り、多くの人と知り合えたことが良かった」「利用研究の活発さを改めて感じました」などの感想があり、また「参加してとても良かった。SPring-8について知れたことや、夏の学校を通して多くの友達ができた。自分にとってとてもプラスになった。また必ず研究を行いにきます!」といったうれしい感想もあり、吉良校長の開校の挨拶にもあった「夏の学校では、放射光の勉強とともに良い仲間を見つけてほしい」との言葉を実践してくれたようであります。
 今回の夏の学校では、参加希望者数が予想より少なく、また応募の時期が例年に比べて遅いことが気になりました。参加者の募集は、ホームページ、ポスター配布、学会誌への広告、利用者懇談会会員等へのメールなどを利用して行いましたが、大学院生や学部生への周知が十分でなかったものと思われ、今後の課題と思われました。
 最後に、講義および実習を担当して下さった先生方、夏の学校を開校するにあたりご協力頂いた(財)高輝度光科学研究センター、(独)理化学研究所播磨研究所、日本原子力研究所関西研究所放射光科学研究センター、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所、(財)ひょうご科学技術協会の関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。また、夏の学校の事務局として奮闘されたJASRI事務局担当者に感謝致します。 
 
 
 
第4回SPring-8夏の学校の参加者


鳥海 幸四郎 TORIUMI  Koshiro
兵庫県立大学 大学院物質理学研究科
〒678-1297 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-2-1
TEL・FAX:0791-58-0155
e-mail:toriumi@sci.u-hyogo.ac.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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