Volume 18, No.2 Pages 139 - 140
5. SPring-8通信/SPring-8 COMMUNICATIONS
SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告4 −分光分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair - Spectroscopy –
SPring-8利用研究課題審査委員会 分光分科会主査/東京大学 物性研究所 The Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo
平成23、24年度のSPring-8利用研究課題審査委員会の委員と分光分科会の主査を努めましたので、その報告と感想を簡単に述べたいと思います。
分光分科会はS1とS3というサブ分科を含んでいます。S1は私が、S3は小口多美夫先生(大阪大学)が主査でした。課題審査はS1とS3が合同で行い、今回の分光分科会の審査メンバーは、繁正英治先生(分子科学研究所)、雨宮健太先生(KEK-PF)、島田賢也先生(広島大学)でした。そして、JASRIの木下豊彦先生にはSPring-8のビームライン担当者や利用業務部とのリエゾン役を務めていただき、我々の審査を支えていただきました。
分科会の任務は、SPring-8の利用研究として応募された課題に対して、レフェリーによる評価(点数およびコメント)にもとづいて課題を選定し、シフト配分(放射光の利用時間)を行うことです。分光分科(S1、S3)が責任分科として担当しているビームラインは、BL17SU、BL25SU、BL43IR、BL47XUです。それ以外にも、BL10XU、BL27SU、BL46XUなどにも分光測定が可能なエンドステーションがあり、分光分科に申請された課題が利用する可能性があります。
選定課題の決定には、ビームラインごとにレフェリーの評価点が高い順に課題が並べられた表を参考にします。すべての情報は整理されサーバーにアップロードされており、端末のパソコンを利用して総合評価点の高い順に課題をチェックしていきます。ビームライン担当者による安全審査、技術審査は必要条件で、提案された推奨シフト数を参考にします。ビームラインごとに最大配分可能シフト数があり、高評価点の課題から順番にシフト数を割り振っていき、配分可能シフト数がゼロになったところで採択課題は終了です。不採択になった課題に対しては、その理由となるコメントをパソコン端末から書き込んでいきますが、多くは定型文を利用します。
採択・不採択のボーダー付近の課題については、注意深く課題を審査します。また、複数ビームラインへの利用申請されている場合は、できるだけシフトが配分できるように調整を行います。
不採択になった中で残念なのは、過去にSPring-8の利用実績がありながら論文発表を行なっていない申請者が何人かおられることです。課題申請の内容の評点はボーダーを超えているのに、成果の発表が無いと減点されます。内容が良い課題申請の場合は、とても残念に思いました。
選定・不選定の比率は、ビームラインに大きく依存します。分光分科会が責任分科となっているほとんどのビームラインでは、競争率が1倍を超えており、中には2.5倍を超えているビームラインもあります(BL47XU)。これは最近発展が著しいHAXPES(硬X線光電子分光)測定ができるビームラインです。一方、赤外ビームライン(BL43IR)は1倍を切る時もありました。SPring-8の顕微赤外分光装置は非常にパワフルな分析手法だけに、もっと使われてしかるべきです。ユーザー層の拡大とコミュニティの活性化が望まれます。
SPring-8の課題申請のレフェリーに選ばれた研究者の方にお願いがあります。ほとんどの方は、お忙しい中、沢山の課題申請書類に目を通していただき、公平・公正に評価していただいていると思います。低い評価点をつけられる場合は、その根拠をやや詳しく記述していただくと、課題審査の際にたいへん助かります。また、申請者が次回の申請にチャレンジするときにも参考になると思いますので、よろしくお願いいたします。
最後に、SPring-8を用いた最先端研究の課題提案を審査するという大変重い役目を終えることができ、内心ほっとしています。スムーズに審査が行えたのは、分光分科会の委員各位の見識の高さと、放射光を利用した研究に対するサポート魂の賜物です。そして、実質的に分科会をハンドルしていていただいたJASRIの木下先生と、問題が起こった時にすぐに解決していただいたスタッフの方に感謝いたします。
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