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Volume 18, No.2 Pages 141 - 143

5. SPring-8通信/SPring-8 COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告5 −産業利用分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair - Industrial Application –

鈴木 謙爾 SUZUKI Kenji

SPring-8利用研究課題審査委員会 産業利用分科会主査/(公財)特殊無機材料研究所 Advanced Institute of Materials Science

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 2011B期から2013A期まで、SPring-8利用研究課題審査委員会産業利用分科会は、主査:鈴木謙爾、委員:野村昌治、橋本保、平井康晴、松井純爾のメンバーにより運営されました。任期を終えるに当たり、この2年間における当分科会の活動経過ならびに気付いた問題点を要約して報告します。


(1)今期間の産業利用分科会における課題募集・審査は、従来通り、課題の科学・技術分野における先端性ならびに貢献度を基礎として、その上に研究成果の産業技術基盤ならびに社会経済への寄与度を重視することを基本的スタンスとして行われました。


(2)これまでの領域指定枠プログラム「重点産業利用課題」が2011B期にて終了しましたので、2012A期以降の課題募集・審査は下記の新方針に基づいて実施されました。
①今や、産業利用の応募課題の水準が十分に向上していますので、重点領域指定枠を廃止し、産業利用分科会の応募課題は、原則として一般課題として申請・審査されることになりました。
②ただし、高いリスクが避けられない先端的産業利用研究をさらに推進するために、産・学(官)連携による応募に限り、配分可能シフト数の15%を限度として配分する「重点産業化促進課題」枠が新たに設けられました。
③産業利用に特化した3本のビームラインBL14B2(XAFS)、BL19B2(粉末X線回折、イメージング、極小角散乱、多軸回折装置)、BL46XU(硬X線光電子分光、多軸回折装置)を利用する課題は、半年度毎のA、B期をさらに2分割し、4半期毎のAⅠ、AⅡ、BⅠ、BⅡ期の年4回の頻度で申請できます。年4回の応募・申請は、産業界から高い支持が表明されており、今後も継続して運用すべき定着した方式であると考えています。
④課題審査に際しては、新規利用者課題、民間企業課題を優先します。
⑤課題の準備、実施、解析、取りまとめ等の一連の支援を担当するコーディネーターを課題ごとに配置することにしました。


(3)2012A第Ⅰ期からの課題申請は、領域指定「重点産業化促進課題」あるいは産業利用分科「一般課題」のいずれかの枠を選択する二つの入口方式になっていますが、「重点産業化促進課題」枠を選択した場合、第二希望として「一般課題」枠での審査も受けることができます。


(4)これまで「重点産業利用課題」枠で利用申請ができたビームラインとして、産業利用に特化された3本のビームラインの他に、10本の一般共用ビームラインが用意されていましたが、2012A第Ⅰ期以降は3本のビームライン以外はすべて一般課題として申請していただくことになりました。これは、先述しましたように、産業利用課題のレベルが質・量共に高くなり、シフト数を確保するための枠設定が返って制限となり、今後のさらなる発展に有効に寄与しないのではないかと考えられたからです。


(5)今期間における課題の応募ならびに採択の状況について説明します。
①表1に、「重点産業利用課題」(2011B第Ⅰ、Ⅱ期)、「重点産業促進化課題」(2012A第Ⅰ期以降)、「一般課題(産業利用分科)」ならびに「萌芽的研究支援課題」(2012A第Ⅰ期以降)の直近2年間の応募数、採択数そして採択率をまとめて示します。全体としての傾向は、2009B〜2011A期の2年間と比べて特に顕著な変化はありません。いずれの期においても、Ⅱ期の応募課題数はかなり少ないですが、採択率は同程度あるいはむしろアップしています。これは、産業界のユーザーが産業利用に特化した3本のビームラインを利用する課題を十分に検討して絞り込んでいる結果であると受け止めています。
②採択率は60〜80%であり、概ね妥当なレベルにあります。しかし、2012B第Ⅰ期の採択率が平均46.3%とかなり低くなっています。これは、産業利用特化の3本のビームラインにおいて、長期利用課題、成果公開優先課題、成果専有課題によるビームタイムの先取りが行われ、審査により配分できるシフト数が減少したために、採択率が約30%の狭い門になってしまったからです。特に、BL46XUのシフト競争率は4.80倍に跳ね上がりました。
③2012A第Ⅰ期から萌芽的研究支援課題の応募が産業利用に特化した3本のビームラインにまで拡大されました。2012B第Ⅰ期では、応募数が6課題、採択率が83%の高い水準に達し、産業利用分野における今後の若手人材の育成・確保に明るい期待が持てそうです。

表1 産業利用分科会における課題の応募ならびに採択

 
利用期 重点産業利用課題 重点産業化促進課題 一般課題
(I分科)
萌芽的研究支援課題
(I分科)
応募 採択 採択率 応募 採択 採択率 応募 採択 採択率 応募 採択 採択率
2011B 121 56 46.3       36 23 63.9      
  48 37 77.1            
2012A       21 12 57.1 85 65 76.4 3 3 100
        3 3 100 43 32 74.4 0
2012B       17 14 82.4 113 81 71.2 6 5 83.3
        6 5 83.3 44 32 72.3 3 1 33.3
2013A       15 12 80 91 58 63.7 2 1 50
                         
*重点産業利用課題/重点産業化促進課題応募で一般課題採択課題を一般課題の応募・採択数に含める (2011B:2課題、2012AⅠ期・Ⅱ期:3課題・5課題、2012BⅠ期・Ⅱ期:6課題・2課題、2013AⅠ期:3課題)



(6)最後に、2年前の分科会主査報告で述べたことと一部は重なるかもしれませんが、2、3の問題点を指摘しておきますので、ユーザーの立場からもご検討いただければ、大変幸甚に存じます。
①分科会が審査を担当している産業利用課題は、成果非専有課題ですので、産業基盤として共通する基礎的課題、あるいはチャレンジングな新規・新領域課題という性格が濃厚であり、次世代の技術開発の種になる課題であるべきと考えています。
②しかし、産業利用においては、製品開発に直結したり、特定の知的財産の確保につながる研究成果を専有したいという指向は避けられません。換言すれば、成果専有課題の増加は、産業界の発展にとって歓迎すべき事です。しかし、成果専有課題が増加し過ぎて、成果非専有課題の採択が圧迫されるような事態になれば、新規かつ共通的な基盤研究が弱体化し、結果的に産業利用の成果が先細りするという悪循環を生むことになりかねません。SPring-8利用研究課題審査委員会(PRC)(委員長 雨宮慶幸)では、各ビームラインの成果非専有課題のシフト数率が3割を下まわらないという基準を当面適用することが合意されていますが、「SPring-8重点産業利用課題評価報告書(評価委員会委員長 太田俊明、平成23年3月31日)において指定されていますように、SPring-8の産業利用はこの問題を抜本的に考えなければならない時点にさしかかっていると思われます。
③研究成果の公開についてコメントします。SPring-8は、世界トップ・レベルの公共的研究施設であり、課題の応募・採択から研究の実施を経て成果の公開・帰属まで、すべての過程において透明性を確保する責務を負っています。しかし、産業利用の特別な事情を考慮して、成果非専有課題であっても成果公開を延期できる制度が機能しており、SPring-8の公益性と産業界の知財権確保のバランスを実現しています。産業利用分科では成果の発表・公開を怠っても審査においてペナルティー「DV」が科されませんので、一部の限られた課題ですが、成果発表を意図的に避ける傾向が見られることは残念に思います。成果非専有課題である限り、義務として研究成果は可及的速やかに公開されなければなりません。
④分科会における課題審査に際して、採否のボーダーラインにある課題の評価はレフェリー各位の相対的4段階評点に極めて重く依存します。特に、極端な評点が付されている場合、その根拠を示すコメントが審査の正当性あるいは正確性を担保するために必要になります。レフェリーには、お手数をおかけしますが、評点の根拠となるコメントを記載していただきますよう是非にお願いしたいです。
⑤2011B第Ⅰ期BL46XUの場合のように、30%を切る低採択率はしばしば応募意欲に水を差しているようです。幸いにして、SPring-8施設関係者のご努力により、2012A期以降の採択率は正常値に復帰しましたが、新規利用者の開拓のみならずリピーターの確保のためにも、60%以上の採択率が維持されるように行き届いた配慮をお願いしたいと思います。


 この2年間、ご多忙の中、多数の課題の審査・選定にご尽力いただきました審査委員ならびに利用業務部スタッフの皆様に衷心より感謝申し上げます。



鈴木 謙爾 SUZUKI Kenji
(公財)特殊無機材料研究所
〒982-0252 仙台市太白区茂庭台2-6-8
TEL:022-281-0572
e-mail:k-suzuki@proof.ocn.ne.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794