ページトップへ戻る

Volume 18, No.2 Pages 129 - 130

5. SPring-8通信/SPring-8 COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて
Report on the PRC (Proposal Review Committee) of SPring-8

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki

SPring-8利用研究課題審査委員会 委員長/東京大学大学院 新領域創成科学研究科 Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo

Download PDF (327.89 KB)

1.はじめに
 平成23年(2011年)4月〜25年(2013年)3月の2年間、SPring-8利用研究課題審査委員会(以後、本委員会)の委員長を務めました。それまでは、レフェリーとしてはSPring-8利用研究課題の審査に関わってきましたが、本委員会の委員を務めた経験のない立場でいきなり委員長の役割を仰せつかりました。そのため、最初は詳細が把握できない状態でのスタートでしたが、本委員会委員の皆様のご尽力と関係者各位のご協力により、無事に任を終えることができました。以下に、この2年間を振り返り、感想を簡単に述べたいと思います。



2.被災量子ビーム研究基盤支援
 上記期間の本委員会では、2011B、2012A、2012B、2013A期の四期を担当することになっていました。ところが、2011年3月11日の東日本大震災のため、被災した量子ビーム施設では実験を行うことが困難になりました。そこで、急遽、理研・JASRIが被災量子ビーム研究基盤支援を行うことを決め、2011A期の留保ビームタイム等を活用して「量子ビーム施設震災優先枠」を設定し、被災した施設で実施困難となった利用研究課題を緊急に支援することになりました。そこで、平成23年4月22日に本委員会を臨時に開催し、支援課題の審査を行いました。結果として、KEK経由で申請のあった113課題から104課題を選定しました。新米の委員長である私にとっては、委員各位と理研・JASRIの方々の議論の流れを把握して議事進行するということぐらいしかできませんでしたが、迅速に対応できたことは良かったと思います。本件における、理研・JASRIの迅速な支援への対応は、高い評価に値すると思います。



*2011A期においては、このほかに中性子施設関係の支援課題(4月22日の本委員会以降に別途2課題申請、うち1課題選定)あり。更に2011B期においては、中性子施設関係の支援課題のみ(4課題申請、うち4課題選定)あり。



3.本委員会での審査に関して
3-1. 審査方法に関して
 SPring-8が供用を開始して15年が経過し、利用研究課題の審査方法は、ほぼ確立しており、総じて順調に審査が行われていると感じました。具体的には、レフェリー・分科会・審査委員会という三段階の審査、分科会の分類法、有効期間が半年の課題採否とシフト配分の同時決定方法等々は、よく整備されていて、その結果、各期合計800件前後にも達する、しかも多種目の応募課題に対して効率よく審査できる仕組みが出来上がっているとの感を強く持ちました。

3-2. 重点課題の変遷
 政府が第4期基本科学技術政策において「我が国の強みを生かす成長分野」として「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」を掲げたことに伴い、新規にグリーン/ライフ・イノベーション推進領域を重点領域として指定し、重点グリーン/ライフ・イノベーション推進課題を2011B〜2013A 期に募集することになりました。それに伴い、グリーン/ライフ分科会が新たに創設されました。また、それまでの重点ナノテクノロジー支援課題は2011B期を以て終了しました。
 また、重点課題である重点産業利用課題が2011B 期を以て終了し、それに代わって重点産業化促進課題が2012A期より新たに立ち上がりました。

3-3. 本委員会での主な議論のポイント
 本委員会では、これまで通り、各分科での議論の要点と結果を各分科の責任者が報告し、その報告に基づいて全体で議論するという流れで行いました。それに先立つ各分科での議論は短くても3時間、長ければその倍の時間に及ぶ大変な作業であり、審査委員の方々には敬意を表したいと思います。また、分科会に先立つレフェリーの方々の評価もある意味では最も重要であり、レフェリーの名前は公開されてはいませんが、レフェリーの方々にこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。最後の2013A期の本委員会で、今後の審査の改善点に関して議論を行いました。活発な議論の結果、次期の本委員会への申し送り事項として、「これまで複数あったレフェリーのコメント欄を一つにし、その結果、評価点だけではなくレフェリーから総合コメントが得られやすいような評価シートに変更する」という意見で纏まりました。レフェリーの皆様の引き続きのご協力をよろしくお願いします。



4.おわりに
 上述しましたように、SPring-8利用研究課題審査の仕組みは大変に良く整備されており、多数かつ多種目の応募課題に対して、効率よく、透明性をもって審査できていると感じます。このことは、SPring-8から良い研究成果が出る基(もとい)になっていると思います。この仕組みを支えているレフェリーの方々、審査委員各位、JASRIのスタッフの尽力に敬意を表します。2年間、本委員会の委員長を無事務めることができたことは、皆様のご協力のおかげであり、心より感謝致します。



雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki
東京大学大学院 新領域創成科学研究科
〒277-8561 千葉県柏市柏の葉5 -1- 5
基盤棟601
TEL:04-7136-3750
e-mail:amemiya@k.u-tokyo.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794