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Volume 17, No.4 Pages 336 - 339

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SRI2012サテライトワークショップ - X-ray Detectors for Synchrotron Applications - 報告
Report on SRI2012 Satellite Workshop - X-ray Detectors for Synchrotron Applications –

豊川 秀訓 TOYOKAWA Hidenori

(公財)高輝度光科学研究センター 制御・情報部門 Controls and Computing Division, JASRI

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 本ワークショップは、2012年7月5日午後から7日にかけてスイスのチューリッヒ市街にあるチューリヒ工科大学にて開催された[1][1]ワークショップホームページ:http://indico.psi.ch/conferenceDisplay.py?confId=1389。全32講演が招待講演として厳選された内容で、各研究機関および関連企業から検出器開発および実験ステーションでの現状報告に関する以下の8セッションがプログラムされた。参加者は91名で、うち日本からの参加者は8名(研究機関4名、企業4名)であった。


写真1 チューリッヒ工科大学本館

 ・エネルギー分散型検出器(Diamond, BNL, STFC, PNDetectorからの4講演)
 ・軟X線画像検出器(SLS, DESY, LBL, PTB, Roentdek, ELETTRAからの6講演)
 ・蓄積リングにおける直接検出型画像検出器
  (SLS×2, Diamond, imXPAD, DESY, SPring-8, Cernell, Dectrisからの8講演)
 ・実装およびセンサー技術(Univ. of Bonn, Univ. of Surreyからの2講演)
 ・XFEL検出器(DESY×4, SwissFEL, SACLA, LCLS, MPEからの8講演)
 ・間接型検出器(SLS, ESRFからの2講演)
 ・データハンドリング(SLS, ESRFからの2講演)
 このなかで、日本からは筆者が直接検出型画像検出器セッションにてCdTeセンサーを用いたフォトンカウンティング型ピクセル検出器開発について、理研の初井氏がXFEL検出器のセッションにてSOIセンサーを用いた積分型ピクセル検出器開発についてそれぞれ報告した。ピクセル検出器とは各ピクセルに独立した読み出し回路を搭載した2次元検出器の総称で、微細電極をピクセル状に並べた半導体センサーと読み出し集積回路をフリップチップボンディングにより一体化する方法によるハイブリッド型と半導体プロセスのみでセンサー部と回路部を一体として製造するモノリシック型とに分類される。直接検出型画像検出器のセッションの8講演は全てハイブリッド型ピクセル検出器であり、エネルギー分散型検出器、実装およびセンサー技術、XFEL検出器のセッションでも関連する発表が多数あり、放射光用検出器として広く応用されている成熟度の高い技術である。一方、モノリシック型はどちらかと言うと開発段階にある比較的新しい技術で、XFEL検出器のセッションでのDESYのDEPFETセンサーとSACLAのSOIセンサーの2つの発表があった。
 別の視点からの検出器の分類としては、エネルギー閾値を設定して到来したフォトン数をカウンター回路で積算するフォトンカウンティング型と到来した全フォトンのエネルギー積算を行った後にAD変換する積分型とに分けられる。フォトンカウンティング型は低ノイズかつ広ダイナミックが得られる利点から蓄積リングにおける直接検出型画像検出器としての応用が進んでおり、Cernellの発表を除く7講演がこのタイプである。ただし、到来するフォトンを時間的に分離するには最低でも100 ns 程度を要することから、フェムト秒オーダーでパルス的にフォトンが到来するXFELでは積分型検出器が必須である。また、CCDやCMOSセンサーも積分型検出器に分類され、ダイナミックレンジの点で制限されるものの、数ミクロンレベルの微小ピクセルが得られることから、軟X線画像検出器のセッションの講演は主にこのタイプであった。
 ワークショップを通じ特に印象深かった点は、CCD検出器の高速化とMedipix[2][2]Medipix Collaboration: http://medipix.web.cern.ch/MEDIPIX/の大面積化に関する目覚ましい進展である。CCDはもともと高い空間分解能が得られることが大きな利点であり、高速化により蓄積リングでのエネルギー分散型イメージングや軟X線FEL研究への展開が急速に進んでいる。特に、XFEL検出器のセッションでMPE(Max-Planck Institute)からの発表で紹介されたPNSensor社[3][3]PNSensor社: http://www.pnsensor.de/のpnCCDは、ピクセルサイズ48ミクロン、フレーム率1000 fpsを達成しており、今後急速に利用が進むことが予想される。
 SPring-8でも多くのビームラインに導入されて広く活用されているPILATUSはフォトンカウンティング型ピクセル検出器の典型だが、微小ピクセル化、高フレーム率化、高エネルギー領域での高効率化などの要望があり、蓄積リングにおける直接検出型画像検出器のセッションではこれらに関する新しい技術が議論の中心となった。55ミクロンと現在最も小さなピクセルサイズを実現しているのがMedipixで、エネルギーの下限のみならず上限も制限できる点も利点である。1990年代後半にCERNで開発が始まり長らく小規模な検出器に留まっていたが、ESRF、Diamond、DESYがそれぞれ大面積化実機製作を進めており、蓄積リングでのコヒーレントイメージングを中心としたアプリケーションへの応用が既に進んでいる。ESRFは広く公開して販売も行うということなので、SPring-8でも是非試したい検出器である。また、SLSが開発しているEIGERもピクセルサイズ75ミクロンと高い空間分解能が得られる点で相補的な検出器として注目される。EIGERのもう一つの特徴はデッドタイムレスで最速24 kHzのフレームレートを実現した点である。SLSでは9 Mピクセルの大面積型を製作し、現在タンパクステーションで利用されているPILATUS-6 Mから置き換えることが計画されている。Dectris社[4][4]Dectris社: https://www.dectris.com/からはハードウエアによるデッドタイム補正を行うPILATUS3バージョンの発表があった。PILATUS-300 K以上の機種に採用されて販売される予定である。これにより計数率の上限が107 cps/pixelまで伸び、タンパク質結晶構造解析などでより高精度なデータが得られることが期待される。蓄積リングにおける直接検出型画像検出器に関しては、SOLEILで開発され、ベンチャー企業のimXPAD社[5][5]imXPAD社: http://www.imxpad.com/より販売が開始されたXPAD(ピクセルサイズ75ミクロン、フレーム率500 Hz)や、高エネルギー領域での高効率化を目指したSPring-8のCdTeピクセル検出器を含め、SRI2015までの3年間は各種タイプ乱立による激しい競争になることが必至である。


写真2 SLS検出器グループメンバーとの記念写真。左よりBeat Henrich氏、Bernd Schmitt氏(グループリーダー、ワークショップ議長)、筆者、Roberto Dinapoli氏


 次に注目すべき開発は、European XFEL向けに開発されているDEPFET、AGIPD、LPDの3つの積分型ピクセル検出器である。なかでもAGIPDは、ピクセルサイズこそ200ミクロンとやや大きいながら、ダイナミックゲインスイッチにより3段階のゲインを自動で切り替えることにより104 photons/pixelを達成し、European XFELでの220 nsのビームバンチ構造に対応した読み出し系が開発されており、最も有望な検出器であろう。ヨーロッパはCERNでのLHC実験を背景にピクセル検出器技術に関する極めて高い開発力を有しており、これらの性能を凌ぐ次世代機の検討もすでに始まっているとのことである。SACLA、LCLS、SwissFELを含めて多数の形態の検出器開発が提案実行されており、X線検出器開発の最先端として凌ぎを削っている技術分野である。SwissFELではSACLAに比較的近い光源性能が計画されており、ここでの利用を目指してEIGERの75ミクロンピクセルとAGIPDのダイナミックゲインスイッチ技術を融合して設計されているJungfrauの今後の進展に注目したい。
 世界的な視点での検出器開発のもう一つの動向は、高原子番号センサーによるピクセル検出器の検出効率の向上である。今回発表された検出器の殆どは受光媒体がシリコンで、軟X線および低エネルギー(20 keV程度まで)領域で用いる限りは高効率が得られるものの、30 keV以上になると検出効率が10%以下となりCdTeなどの高原子番号センサーの実用化が医療などの様々な分野で待望されている。SPring-8のCdTeピクセル検出器開発では利用領域を100 keV以上に拡張することを目指している。ヨーロッパではHigh-Zコラボレーションを組織してこの問題に取り組んでおり、実装およびセンサー技術のセッションでSurreyが代表して総括を発表した他、エネルギー分散型検出器のセッションでSTFC(Science and Technology Facilities Council)がCdTeないしCdZnTeセンサーを用いたハイブリッド型ピクセル検出器HEXITEC、直接検出型画像検出器のセッションでDESYからMedipixをシリコンセンサーだけでなくGe、GaAs、CdTeセンサーに応用する試みが発表された。SPring-8のCdTeピクセル検出器に関する発表はこれらと競争的な立場にあるが、In/Auスタッドボンディング法による実装精度、Pt/CdTe/Alピクセル型素子の室温での安定動作はヨーロッパではまだ到達できていない研究成果であり、SPring-8の技術力の高さをアピールすることができたと考えている。
 データハンドリングに関して、ESRFからはLIMAの報告があった。放射光施設で用いられている主な2次元検出器および制御ソフトウエアへの対応が既に完了しており、ヨーロッパの他の機関とも連携して取り組んでいるとのことで、今後の世界標準の一つとなるのではと思う。SLSからEIGERの24 kHzの超高速フレーム率に対応したデータハンドリングへの開発の紹介がなされた。ESRFとSLSでの共通点としては、HDF-5による圧縮形式を目指している点で、これも今後のスタンダードとなるのではと感じた。
 本ワークショップのサマリーは翌週フランスのリヨンで開催された本会議でのNew developments in Area Detectorsのセッションの招待講演としてワークショップ議長のBernd Schmitt氏より「New Developments in the area of hybrid pixel detectors, Summary of SRI satellite workshop on x-ray detectors」と題して紹介された他、多くの講演がオーラルもしくはポスターで再び発表された。PNSensor社のpnCCDはNew developments in Spectroscopy Detectorsのセッションで企業からのオーラル講演として発表がなされた。本刊にて別途掲載する本会議報告もあわせてご参照ください。



プログラム

Thursday 05 July 2012
14:00  Welcome, Bernd Schmitt
    (Paul Scherrer Institut, CH)

Energy dispersive detectors
14:10  Development of an energy resolving Multi-Element Germanium Detector at Diamond, Nicola Tartoni
    (Diamond Light Source, UK)
14:35  Detector developments at BNL, D. Peter Siddons
    (Brookhaven National Laboratory, USA)
15:00  Development of energy dispersive detectors at STFC, Matt Wilson
    (STFC Detector Development Group, UK)
15:25  Industrial Presentation: Silicon Drift Detectors for X-ray spectroscopy applications - present and future,
    Adrian Niculae
    (PNDetector GmbH, DE)

Soft X-ray area Detectors
16:00  Requirements from Synchrotrons, Thorsten Schmitt
    (Paul Scherrer Institut, CH)
16:25  Development of soft X-ray area detectors at DESY, Cornelia Wunderer
    (DESY, DE)
16:50  Soft X-ray Detector Developments at Berkeley, Peter Denes
    (Berkeley National Laboratory, USA)
17:15  Absolute calibration of X-ray detectors at low energies, Michael Krumrey
    (Physikalisch-Technische Bundesanstalt, DE)
17:40  Industrial Presentation: Recent and coming products from RoentDek, Ottmar Jagutzki
    (RoentDek GmbH, DE)

Friday 06 July 2012
Direct detection area detectors for storage rings I
09:00  Detector needs for x-ray diffraction experiments at synchrotron sources, Ana Diaz
    (Paul Scherrer Institut, CH)
09:25  Eiger, a fast framing, large area pixel detector for X-ray applications, Ian Johnson
    (Paul Scherrer Institut, CH)
09:50  Design and fabrication of EXCALIBUR detector modules, Julien Marchal
    (Diamond Light Source, UK)
10:15  Detector Developments at Cornell, Mark Tate
    (Cornell University, USA)

Direct detection area detectors for storage rings II
11:00  Industrial Presentation: X-Ray photon counting detectors from imXPAD, Vasse Laurent
    (ImXpad, FR)
11:10  The LAMBDA photon counting pixel detector, David Pennicard
    (Diamond Light Source, UK)
11:35  CdTe pixel and strip detector developments at SPring-8, Hidenori Toyokawa
    (JASRI, JP)
12:00  Industrial Presentation: The New PILATUS3 ASIC with Instant Retrigger Capability, Teddy Loeliger
    (Dectris Ltd., CH)

Soft X-ray area Detectors
12:10  Development of low energy Detectors at Elettra, Ralf Hendrik Menk
    (Sincrotrone Trieste, IT)

Interconnect and sensor technologies
13:30  Overview of interconnect technologies, Fabian Hugging
    (University of Bonn, DE)
13:55  Current Status of high-Z detector materials, Paul Sellin
    (University of Surrey, UK)

XFEL detectors I
14:20  Detectors and Science at the European XFEL, Christian Bressler
    (European XFEL, DE)
14:45  Development of the DEPFET Sensor with Signal Compression: a Large Format X-ray Imager with
    Mega-Frame Readout Capability for the European XFEL, Matteo Porro
    (Max Planck Institut Halbleiterlabor, DE)
15:10  AGIPD, the Adaptive Gain Integrating Pixel Detector: A 4.5 MHz camera for the European XFEL,
    Julian Becker
    (DESY, DE)

XFEL detectors II
16:00  The LPD Detector Development, Matthew Hart
    (STFC, UK)
16:25  Charge integrating silicon detectors for SwissFEL, Aldo. Mozzanica
    (Paul Scherrer Institut, CH)
16:50  Silicon-On-Insulator Photon Imaging Array Sensor (SOPHIAS) for X-ray Free-Electron Laser, Takaki Hatsui
    (RIKEN, JP)
17:15  Experience with Detectors at the LCLS, Chris Kenney
    (SLAC National Accelerator Lab, USA)
17:40  Large area, high speed pnCCDs as imaging spectrometers for X-ray FEL experiment, Lothars Struder
    (MPE, Semiconductor Laboratory, DE)

Saturday 07 July 2012
Indirect detection
09:00  Detector requirements for synchrotron-based X-ray tomographic microscopy: A customized high-speed
    data interface for sub-second temporal resolution at TOMCAT, Federica Marone
    (Paul Scherrer Institut, CH)
09:25  State of the art X-ray imaging cameras, Thierry Martin
    (ESRF, FR)

Data acquisition and data handling
10:30  Data backend system for fast multi megapixel detectors, Heiner Billich
    (Paul Scherrer Institut, CH)
10:55  LIMA: a generic framework for 2D detector data acquisition, Homs-Puron Alejandro A.
    (ESRF, FR)



参考URL
[1]ワークショップホームページ:http://indico.psi.ch/conferenceDisplay.py?confId=1389
[2]Medipix Collaboration: http://medipix.web.cern.ch/MEDIPIX/
[3]PNSensor社: http://www.pnsensor.de/
[4]Dectris社: https://www.dectris.com/
[5]imXPAD社: http://www.imxpad.com/



豊川 秀訓 TOYOKAWA Hidenori
(公財)高輝度光科学研究センター 制御・情報部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-1842
e-mail:toyokawa@spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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