ページトップへ戻る

Volume 17, No.3 Page 215

理事長室から − SANFRECCE(三本の矢)−
Message from President - SANFRECCE (Three Arrows) –

白川 哲久 SHIRAKAWA Tetsuhisa

(公財)高輝度光科学研究センター 理事長 President of JASRI

Download PDF (133.34 KB)

 SACLAと同じく国家基幹技術の一つとして開発整備が進められてきた特定高速電子計算機施設(スーパーコンピュータ“京”)が完成し、今秋からいよいよ供用開始の運びとなりますが、この“京”も「共用促進法」の特定先端大型研究施設として位置づけられており、この4月から一般財団法人高度情報科学技術研究機構(RIST)が“京”の登録施設利用促進機関(以下、「登録機関」)として利用者選定や利用支援の利用促進業務を開始しました。これで、SPring-8/SACLAの登録機関であるJASRIとJ-PARCの登録機関である一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)を併せて三つの登録機関が共用促進法に基づき(対象施設は三者三様ですが)利用促進業務を行うことになりました。


 SPring-8とJ-PARCはともに量子ビーム施設として利用研究者の層が重なる部分もありますし、これまでも東日本大震災で被災したJ-PARCの利用研究者をSPring-8で緊急に支援するなどの協力を行ってきたところですが、次世代スパコン“京”の強力なシミュレーション機能とSPring-8/SACLAやJ-PARCのナノレベルでの分析能力を組み合わせれば、ナノスケールで発現する物質の機能や現象を解明する全く新たなブレイクスルーが期待できますし、SACLAなどで得られる大量の実験データの解析には、スパコンの大容量計算機能が欠かせません。そのため、SPring-8/SACLAやJ-PARCと“京”との利用面での連携・協力を深めていくことは必然の方向と考えられます。


 このような認識のもと、JASRIではCROSSとRISTに呼びかけて、それぞれの施設におけるより効率的、効果的な利用を促進するため、三登録機関間の連携促進のための枠組みの創設を提案、両機関の賛同を得て6月1日付けで協力協定書を締結し、具体的な連携協力の在り方を検討するための協議会を立ち上げて、先日第一回の会合を持ちました。


 第一回会合では、まずお互いの利用促進業務の現状をよく理解することが協力を進めていく第一歩ですので、各機関の現状をそれぞれ報告しました。三機関の担当している施設や、これまでの“生い立ち”にかなりの違いがあり、今後具体的な連携協力の内容を詰めていくことはそれほど容易いことではないと感じましたが、情報の交換や人材交流、施設の相互利用などを進めるために協議会の下に部会等を設置して具体策を検討していくことで合意しました。今後早急に具体化できるものから進めて行く予定です。


 今回は第一回で、かつ三機関の中ではやはりJASRIが先輩格にあたりますので、これまでのJASRIの経験も踏まえて、私から「共用促進法の原点〜利用者本位〜」と題して記念講話をさせて頂きました。その内容は、これまでも本欄で何度か取り上げた、「利用者本位」の考え方の重要性を強調したもの(たとえば、「利用者情報誌」2011年2月号[1][1]http://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=17121参照)ですので、ここでは繰り返しません。同時に記念講話では、J-1広島サンフレッチェのSANFRECCEの謂れをお話ししました。ご存じと思いますが、戦国の武将毛利元就が三人の子供に“一本の矢では簡単に折れるが、三本束ねると容易に折れない”として兄弟が力を合わせることの重要性を説いた「三本の矢」の逸話です。最後に、「利用者本位」とSANFRECCEでお互いに頑張っていくことを確認し合って、一回目の協議会を終えたところです。


_____________________________________
[1]http://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=17121
Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794