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Volume 17, No.2 Pages 136 - 138

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第7回三極X線光学ワークショップ
3-way X-ray Optics Workshop VII

後藤 俊治 GOTO Shunji

(公財)高輝度光科学研究センター 光源・光学系部門 Light Source and Optics Division, JASRI

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 表題のワークショップは2012年1月30日、31日にフランス、グルノーブルのESRFにおいて開催された。このワークショップは三極ワークショップ本体のサテライトとして行われているもので、2001年11月にESRFにおいて第1回が開催されてから3周目に入ったところである。前回は2年前2010年4月にSPring-8において開催され、その後の各施設での放射光X線光学に関連する進展を議論するばかりでなく、ESRFの組織の構造を反映する格好で、光学系に関連したメカニカルエンジニアリングと検出器の話題を加えて、2日間のプログラムが組まれた。プログラムは以下に示す通りである。ESRF、APS/ANL、SPring-8に加え、前回と同様にPETRA III/DESYからの参加による29の講演が行われた。最初のセッションは各施設の概要報告であるが、それ以降のセッションでは、光学系、メカニカルエンジニアリング、検出器の話題が入り乱れているようであり、ホスト側でプログラムの組み立てに苦労したように見受けられる。参加者は約50名であった(写真参照)。以下は必ずしもプログラム順とはなっていないが、簡単にワークショップの概要について報告する。


三極X線光学ワークショップVII参加者

 ナノビームの形成と利用はどの施設でも積極的に進められており、K-Bミラー、フレネルゾーンプレート、多層膜ラウエレンズ、屈折レンズなどにより50〜100 nmの利用は普通に行われるようになっている。小山によりSPring-8のナノビームの開発と利用の状況についての報告がなされた。特に低炭素ネットワーク事業にてBL37XUおよびBL39XUの光学系をアップグレードした結果、100 nmの安定でルーチンな利用を推進していることを強調した。
 ダイヤモンドは優れた熱的特性やX線透過率の高さから、高熱負荷分光結晶や移相子として用いられている。結晶の完全性としてはまだまだ改善の余地があるが、メーカーによる改善が続けられ、品質に応じたX線利用が続けられている。玉作は、SPring-8におけるダイヤモンドの結晶性の現状とダイヤモンド結晶の非線形X線光学への応用について報告した。住友電工の<111>成長ダイヤモンドは、従来の<100>成長の結晶よりも大きなサイズの結晶が良質な状態で得られると期待でき注目をあつめた。また、Shvyd'ko(APS)によるとロシア製のダイヤモンドも良質なものが得られるようで、APSで詳しく結晶性の評価が進められている。ひとつにはXFEL-Oの共振器としての良質なダイヤモンド結晶を得るのが目的であるが、この結晶はLCLSのセルフシードの実験に用いられ、今年1月のテストの成功に重要な役割を果たしている。
 各施設とも光源のアップグレードなどと関連して初段の光学素子上で1 kW程度の熱負荷がかかるケースが見られるようになり、高熱負荷光学系に関する議論が久々に増えた。SPring-8からはBaronにより2011年に完成し現在コミッショニング中のビームラインBL43LXUの現状報告がなされた。このなかで、長尺アンジュレータからの放射光の極めて高い熱負荷を処理する初段の光学系と、非弾性散乱実験のための後段の高分解能の結晶光学系の話題が交えられた。
 光学素子そのものの品質は、継続的な努力により改善が見られているものの、コヒーレントなX線の利用においては、依然として品質が問題になっている例がある。先に述べたダイヤモンド結晶はその一例である。また、Morawe(ESRF)により多層膜ミラーの反射ビームイメージの評価結果に基づき、下地のシリコン基板の影響が残り、スペックルとなって現れていることが示された。基板も含めさらなる平坦性の改善が必要となっている。
 一方で、光学素子そのものの性能を十分に生かすには、それを支える機構がしっかりとしていなければならず、また、これらが置かれている周辺環境にも十分な注意をはらう必要がある。今回いくつか報告のあったメカニカルエンジニアリングの部分は、先に述べたナノビーム利用において特に重要となり、各施設とも光学系と一体で改善の努力を続けている。
 検出器に関しては、Graafsma によりDESYの各種検出器プロジェクトについて、また、JacobsenによりAPSの検出器プロジェクトの概要報告がなされた。SPring-8/SACLAからは登野によりXFELのビームラインで用いられている各種のビームモニタについて紹介された。光学系の調整と診断に重要な役割を果たすもので、蓄積リングのビームライン光学系においても共通かつ有効に活用できるものである。
 前回と同様に、X線光学の理論や数値計算に関する話題も提供された。澤田はBerry位相の考え方を動力学回折理論に導入し、結晶中での波の伝播について議論した。歪んだ結晶中での波の横滑り現象を説明するなど、実際の結晶の実験的な評価に対しても有益な情報を与えるものとして期待できる。また、最後の講演はOsterhoff(ESRF, Univ. Göttingen)による多層膜中での波の伝播に関するものである。理論計算の側面から多層膜ミラーの設計・製作と利用に対し情報提供が行われている。理論的な研究がうまく若手に伝承されているという印象を受けた。
 2月2日の午後に三極ミーティング本体においてHärtwig(ESRF)によりワークショップの概要が報告された。次回は三極ミーティング本体が2013年8月1日、2日にAPSにおいて行われることが決まった。おそらくこの前に光学ワークショップが行われることになる。今回、ESRFの上層部の意向で検出器を含むプログラムが組まれたらしいのだが、十分に練られておらず全体の議論の方向性がぼやけた感があった。ホストのHärtwigを含めこれまで本ワークショップを持ち回りでアレンジしてきた光学系のリーダーたちからは不評であった。次回ホストのAPSの考え方も尊重しながら、今回のようにメカニカルエンジニアリング、検出器を加えた拡大版とするか、光学系の部分に再度フォーカスするかを決めていくことになるだろう。



三極X線光学ワークショップⅦプログラム


January 30
Session 1 (9:00-10:30)
Welcome address (Jean Susini/ESRF)
 ~Welcome by Chairperson (Jürgen Härtwig/ESRF)
Optics development at the APS (Lahsen Assoufid/APS)
Overview of optics at SPring-8 (Shunji Goto/SPring-8)
PETRA III general optics and overview (Horst Schulte-Schrepping/PETRA III)
Optics development at the ESRF (Jürgen Härtwig/ESRF)


Session 2 (11:00-12:20)
Dispersive spread of virtual sources by monochromators (XiangRong Huang/APS)
Berry-phase approach to dynamical theory (Kei Sawada/ SPring-8)
XNAP: a pixel detector for time resolved studies (Pablo Fajardo/ESRF)
News from the ESRF mirror and metrology laboratory (Ray Barrett/ESRF)


Session 3 (14:00-15:20)
PETRA III special optics (Jan Horbach/ PETRA III)
Research and development of nested K-B mirrors for synchrotron hard x-ray nanofocusing (Bing Shi/APS)
Strategy for positioning mechanics for long mirrors at ESRF (Trevor Mairs/ESRF)
Micro/nano-beam activities at SPring-8 (Takahisa Koyama/SPring-8)


Session 4 (15:40-17:00)
Diamond related topics (Kenji Tamasaku/SPring-8)
Diamond crystal optics for synchrotrons and XFELs (Yuri Shvyd'ko/APS)
XBPM based on diamond (John Morse/ESRF)
Detectors at the Advanced Photon Source: present efforts, and future directions (Chris Jacobsen/APS)


January 31
Session 5 (9:00-10:20)
News from the ESRF multilayer facility (Christian Morawe/ESRF)
Nanopositioning system design for x-ray nanofocusing with K-B mirrors and MLLs at the APS
(Deming Shu/APS)
The IXS beamline at PETRA III (Hasan Yavas/ PETRA III)
XFEL photon diagnostics at SACLA (Kensuke Tono/ SPring-8)


Session 6 (10:50-12:10)
Status of the refractive optics at the ESRF (Anatoly Snigirev/ESRF)
Thermal stability considerations for ESRF upgrade optics (Robert Baker/ESRF)
Optics and gratings for the XUV beamline P04 at PETRA III (Jens Viefhaus/ PETRA III)
Converter screen and viewer for beam diagnostic (Thierry Martin/ESRF)


Session 7 (14:00-15:20)
ESRF Multilayer white beam test bench (Kathrin Friedrich/ESRF)
Optics for a high flux undulator beamline for inelastic x-ray scattering (Alfred Baron/SPring-8)
Optics movers and actuation, in the context of the ESRF upgrade stability (Yves Dabin/ESRF)
Detector developments at DESY for frontier photon science (Heinz Graafsma/ PETRA III)


Session 8 (15:50-16:30)
Wave-optical simulation of focusing x-ray multilayer mirrors (Markus Osterhoff/ESRF, Univ. Göttingen)
Final discussion, conclusions (Chair: Jürgen Härtwig/ ESRF)



後藤 俊治 GOTO Shunji
(公財)高輝度光科学研究センター 光源・光学系部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0877
e-mail:sgoto@spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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