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Volume 09, No.2 Pages 135 - 136

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SPring-8サブグループ合同ワークショップ
「X線非弾性散乱を用いた物性研究 II」報告
Joint Workshop by SPring-8 Beamlines and Research Subgroups ;
“X-ray Inelastic Scattering and Materials Science II”

岩住 俊明 IWAZUMI Toshiaki[1]、櫻井 吉晴 SAKURAI Yoshiharu[2]

[1]高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 Institute of Materials Structure Science, High Energy Accelerator Research Organization (KEK)、[2](財)高輝度光科学研究センター  利用研究促進部門Ⅰ Materials Science Division, JASRI

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 2003年12月22日(月)・23日(火)の両日、SPring-8放射光普及棟においてSPring-8サブグループ合同ワークショップ「X線非弾性散乱を用いた物性研究Ⅱ」が、SPring-8利用者懇談会4SGと1研究会(コンプトン散乱、核共鳴散乱、高分解能非弾性散乱、X線発光解析、理論)の主催により開催されました。直前の週末に地元の人でさえ何年ぶりかすぐには思い出せないぐらい珍しい12月の大雪があり、踝まで埋まるほどの積雪残る最中の会合となりました。相生駅からSPring-8に向かう車中からの景色は、まさに「トンネルを抜けると・・・」状態であり、今更ながらSPring-8の立地条件を思い知らされた方も多かったのではないかと思われます。
 本ワークショップは2002年3月29・30日に物質構造科学研究所で開催されたPF研究会「X線非弾性散乱を用いた物性研究」に引き続き、国内X線非弾性散乱研究者が一堂に会する2回目の研究会でした。開催の背景には、初回の会合と同じく各放射光施設でのX線非弾性散乱実験装置の充実とそれらを利用した実験的研究及び実験の進展に呼応した理論研究の盛り上がりがあります。また国際的な視点からは、本年9月に米国アルゴンヌ研究所で開催されるX線非弾性散乱を用いた物性研究に焦点を絞った国際ワークショップ“International Workshop on Inelastic X-ray Scattering (IXS)”の次回(2007年)日本開催に向けた国内研究者の集結という目的もありました。
 2回目となる今回は、初回時に紹介のあったビームラインやスペクトロメータを用いた応用研究の講演等もあり、初回後2年弱での研究の進展ぶりを十分に感じさせる内容となりました。国内におけるコンプトン散乱は円熟の域に達したという印象を受けます。世界的にはコンプトン散乱研究の再評価がなされつつある現状ですが、日本の独走は当分の間続きそうだという確信を持てる充実した講演が続きました。欧州から時間的に多少遅れて立ち上がってきた超高分解能X線非弾性散乱を用いた物性研究も、液体、固体の双方で一気にすばらしい成果が上がり始めたようです。今後国内の優れた試料開発グループと共同研究を進めることにより、日本独自の成果を期待出来るようになるのではないでしょうか。共鳴X線発光や核共鳴非弾性散乱では新しい手法の開発も盛んで理論と実験が密接な協調関係にあり、今後の物性研究への応用がおおいに期待出来ます。
 初回時には講演者の方々の研究内容をあまり把握していなかったこともあり講演プログラムを手法毎にまとめたのですが、今回は全体的に物性研究に重点が移ってきたこともあり物性を軸としてプログラムを組んでみました。このようなプログラム編成が参加頂いた方々に今ひとつ受けが良くなかったようであったことは少し残念で、世話人の不見識であったと反省しております。IXS2007国際ワークショップの国内組織立ち上げの手始めとして、PFの河田洋氏が議長として承認されたことは今回の会合の一つの成果でした。
 天候は良かったものの足下がおぼつかない今ひとつの気象条件ではありましたが、64人の参加を得て密度の濃い議論が行えたのではないかと思います。今回の会合に引き続き第3回「X線非弾性散乱を用いた物性研究」研究会をPFで開催することを予定しています。またIXS2007へ向けた国内組織の編成にも取りかかる予定ですので、X線非弾性散乱研究者の皆様の協力をお願い致します。最後に本会合をサポートして頂きましたSPring-8スタッフ並びにSPring-8利用者懇談会の皆様に感謝致します。

以下に講演者とタイトルを示します。

<超伝導>
A.Baron(JASRI)
「Phonon softening and electron phonon coupling in MgB2 and carbon doped MgB2 by inelastic x-ray scattering」

福田竜生(日本原子力研究所関西研究所)
「La2-xSrxCuO4、YBa2Cu3O7-xにおけるボンド伸縮モードフォノンの異常」

遠山貴己(東北大学金属材料研究所) 
「銅酸化物高温超伝導体とその関連物質の共鳴非弾性X線散乱」

<装置開発・新技術>
Yong Cai (National Synchrotron Radiation Research Center,Taiwan)
「Performance and Recent Results of the Taiwan Inelastic X-ray Scattering Beamline」

林久史(東北大学多元物質研究所)
「X線発光の2次元測定と選択的XAFS分光」

瀬戸誠(京都大学原子炉実験所)
「電子状態によりサイトを選択した核共鳴非弾性散乱」

河田洋(物質構造科学研究所PF)
「Compton散乱と反跳電子の同時計測法(X,eX)による3次元電子運動量密度分布測定」

小林寿夫(姫路工業大学大学院理学研究科)
「高圧力下での核共鳴非弾性散乱」

<新物質・液体>
山口益弘(横浜国立大学)
「金属水素化物のコンプトン散乱」

角田頼彦(早稲田大学理工学部)
「Metastable FCC-Feのフォノン状態密度」

櫻井浩(群馬大学工学部)
「垂直磁化膜の磁気コンプトン散乱」

坂井信彦(姫路工業大学)
「CeSbの磁性電子状態は全く局在4f電子軌道的でない」

乾雅祝(広島大学総合科学部)
「膨張した流体水銀の非弾性X線散乱実験」

<新現象>
原田慈久(理化学研究所)
「軟X線再結合発光と格子ダイナミクス」

岩住俊明(物質構造科学研究所PF)
「X線分光学的手法を用いた光誘起相転移研究」

<電子相関>
西川裕規(日本原子力研究所関西研究所)
「弱相関電子系に於ける共鳴非弾性X線散乱の理論」

H. Ishii (National Synchrotron Radiation Research Center,Taiwan)
「Resonant Inelastic X-ray Scattering Studies of Transition Metal Oxides」

魚住孝幸(大阪府立大学)
「遷移金属酸化物の共鳴X線発光スペクトルの理論」

小泉昭久(姫路工業大学大学院理学研究科)
「磁気及び高分解能コンプトン散乱を用いた層状Mn酸化物の軌道・電子状態の研究」

石井賢司(日本原子力研究所関西研究所)
「共鳴X線非弾性散乱による強相関電子系の電子励起」


岩住 俊明 IWAZUMI  Toshiaki
高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所
放射光研究施設
〒305-0801 茨城県つくば市大穂1-1
TEL:029-864-5596 FAX:029-864-2801
e-mail : toshiaki.iwazumi@kek.jp


櫻井 吉晴 SAKURAI  Yoshiharu
(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 利用研究促進部門Ⅰ
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0802(3803) FAX:0791-58-0830
e-mail : sakurai@spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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