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Volume 09, No.2 Pages 129 - 131

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

RIKEN/BBSRC合同シンポジウム:日英合同膜タンパク質の構造生物学
−ハイスループット膜タンパク質結晶構造解析をめざして−
RIKEN/BBSRC Joint Symposium : Japan-UK Membrane Protein Structure Biology
−Towards High-throughput Membrane Protein Crystallography and Related Technology−

吾郷 日出夫 AGO Hideo、宮野 雅司 MIYANO Masashi

(独)理化学研究所 播磨研究所 Harima Institute, RIKEN

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 2003年9月11日と12日の2日間にわたって、国内9名、海外8名の講演者が細胞膜近傍でおこる生体の営みを最新の構造研究に基づいて語る「理研・BBSRC合同シンポジウム:日英合同膜タンパク質の構造生物学−ハイスループット膜タンパク質結晶構造解析を目指して」(BBSRC : the Biotechnology and Biological Sciences Research Council)が、151名の方々のご参加を得てSPring-8普及棟と萌光館で開催されました。今回のシンポジウムは、膜タンパク質研究の第一線の研究者による、最先端の研究成果を拝聴し議論すると言うだけでなく、この分野で研究を進める若い研究者に成果報告の場を提供すると言う二つの趣旨にそって企画されたもので、「出来るだけ若手研究者の負担を軽くしよう」と言う岩田想氏(Imperial College)の提案で事前のアブストラクトの提出も求めない形式をとりました。
 2日間のシンポジウムの進行を簡単にご案内すると、初日は UCLAのKaback氏による“X-ray structure and mechanism of a membrane transport protein, the lactose permease of Escherichia coli ”と言う演題の講演で始まり、その後「エネルギー生産:電子伝達」、「情報伝達(1)」とセッションが続き、夕食を挟んでフリーディスカッションが行われました。「エネルギー生産:電子伝達」のセッションではImperial Collegeの岩田想氏とIverson氏からそれぞれコハク酸脱水素酵素とフマル酸還元酵素の構造について、また理研の神谷氏より光反応系2の構造についてのご講演を頂きました。「情報伝達(1)」のセッションでは理研の宮沢氏からニコチン性アセチルコリン受容体の開閉機構についてご講演がありました。夕食後のフリーディスカッションは場所を普及棟から萌光館に移し、PSI/SLSの富崎氏からスイスライトソースの膜タンパク質結晶ビームラインの状態についてお話を伺いました。このフリーディスカッションでは、会場の内外で夜遅く迄議論が盛り上がり、それには会場に準備されたアルコール飲料が一役買っていたことは言うまでもありません。シンポジウム2日目は、姫路工業大学の吉川氏による“Proton pumping mechanism of bovine heart cytochrome c oxydase”と言う演題の講演で始まりました。その後は「膜輸送体」、「水素輸送」、「ATP合成酵素」、「情報伝達(2)」とセッションが続きました。「膜輸送体」のセッションでは、大阪大学の村上氏が多剤排出輸送体AcrBについて、またUniversity of LeedsのHenderson氏から膜輸送体の発現について講演を頂きました。「水素輸送」のセッションでは、Imperial CollegeのByrne氏とRoyant氏からそれぞれギ酸脱水素酵素の高分解能構造に基づく水素移動の解釈と、バクテリオロドプシンの水素輸送についてご講演を頂きました。「ATP合成酵素」のセッションでは、東京工業大学の久堀氏からATP合成酵素の回転と制御の分子機構について、またImperial Collegeの岩田茂美氏からVoV1-ATP合成酵素の構造と機能についてご講演を頂きました。「情報伝達(2)」のセッションではこれからの標準的手法となりうる電子顕微鏡の単粒子解析によるイノシトール三リン酸受容体のカルシウム依存的構造変化について科学技術振興機構の浜田氏から報告されました。そして最後は、医学的に最も興味を持たれてきた7回膜貫通型Gタンパク質共役レセプターの構造研究結果3題で締めくくられました。まず、横浜市立大学の白川氏からはNMRの特長を生かした構造研究の可能性として構造可塑性が高いペプチド性リガンドがGタンパク質共役受容体に結合したときの立体構造について、理研の国島氏と堀氏からそれぞれ代謝性グルタミン酸受容体の細胞外ドメイン構造とウシ由来ロドプシンの結晶構造について報告がありました。
 以上、簡単に「理研・BBSRC合同シンポジウム:日英合同膜タンパク質の構造生物学−ハイスループット膜タンパク質結晶構造解析を目指して」についてご紹介してきました。今回のシンポジウムは副題に「膜タンパク質結晶構造解析」と言う言葉を含んでいますが、実際は結晶構造解析以外の分析手法によって得られた結果の講演も多数ありました。膜タンパク質は生体中のタンパク質の3分の1を占め、また細胞内外を区画する細胞膜という脂質2重膜の重要な構成要素でありながら、膜タンパク質の構造研究は、構造解析のための発現精製結晶化がことさらに困難であるため、ひとつひとつ手探りで進められてきましたが、2003年度のノーベル化学賞がMacKinnon, Agre両氏の膜タンパク質の構造生物研究に贈られたことに象徴されるように、最近の急激な進展は膜タンパク質構造生物学の次の飛躍を予感させます。このシンポジウムが、ますますいろいろな分野が複合的に補い合ってはじめて大きな進展が望める膜タンパク質の構造機能研究についてこれまでの到達点を確認して、これからの潮流を俯瞰するよい機会であれば望外であります。このような機会を提案実行頂いたImperial Collegeの岩田想氏など開催にご尽力頂いた関係各位に改めてお礼を申し上げます。今回の講演に関わる論文集を少部数作成中です。さらに、詳細をお知りになりたい方のために、残部がある限りにおいて希望者に先着配布します。

PROGRAM

11th/September/2003

Welcoming Speech
  Tetsutaro Iizuka (RIKEN Harima)    

Plenary I
  Ron Kaback (UCLA)
   X-ray structure and mechanism of a membrane transport protein, the lactose permease of  Escherichia coli

Energy Generation: Electron transfer
  So Iwata (Imperial College)
    Molecular architecture of succinate dehydrogenase and reactive oxygen species generation
  Tina Iverson (Imperial College)
   Structure of the Escherichia coli fumarate reductase respiratory complex
  Nobuo Kamiya (RIKEN Harima)
   Crystal structure analysis of photosystem II complex from Thermosynechococcus vulcanus

Signal Transduction (I)
  Atsuo Miyazawa (RIKEN Harima)
   Gating mechanism of nicotinic acetylcholine receptor

FREE Discussion
  Takashi Tomizaki (PSI/SLS)
   Beamline for membrane protein crystals

12th/September/2003

Plenary II
  Shinya Yoshikawa (Himeji Inst. Tech.)
   Proton pumping mechanism of bovine heart cytochrome c oxydase

Membrane Transporters
  Satoshi Murakami (Osaka University)
   X-ray crystallographic analysis of multidrug efflux transporter AcrB
  Peter Henderson (University of Leeds)
   Expression of membrane transporters

Protein Transfer
  Bernadette Byrne (Imperial College)
   Molecular basis of proton motive force generation ; structures of formate dehydrogenase-N and nitrate reductase
  Antoine Royant (Imperial College)
   Kinetic crystallography of bacteriorhodopsin

ATPase
  Toru Hisabori (Tokyo Inst. Tech.)
   ATPase : molecular  mechanism of rotation and regulation
  Momi Iwata (Imperial College)
   Structure and function of VoV1-ATPase

Signal Transduction (II)
  Kozo Hamada (JST)
   Calcium-sensitive structural changes in the inositol trisphostate receptor
  Masahiro Shirakawa (Yokohama City University)
   Conformation of a peptide ligand bound to tis G-protein coupled receptor
  Naoki Kunishima (BERI; present address: RIKEN Harima)
   Crystal structure of Metabotropic Glutamate Receptor
  Tetsuya Hori (RIKEN Harima)
   Crystal structure of bovine rhodopsin: a model of GPCRs
Closing Remarks
  Masashi Miyano (RIKEN Harima)



吾郷 日出夫 AGO  Hideo
独立行政法人理化学研究所 播磨研究所
構造生物物理研究室
〒679-5143 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2815 FAX : 0791-58-2816
e-mail : ago@spring8.or.jp



宮野 雅司 MIYANO  Masashi
独立行政法人理化学研究所 播磨研究所
構造生物物理研究室
〒679-5143 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2815 FAX : 0791-58-2816
e-mail : miyano@spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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