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Volume 08, No.5 Pages 367 - 368

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第3回SPring-8夏の学校を終えて
3rd SPring-8 Summer School

鳥海 幸四郎 TORIUMI Koshiro

姫路工業大学大学院 理学研究科 Graduate School and Faculty of Science, Himeji Institute of Technology

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 「SPring-8夏の学校」は、高輝度光科学研究センター(JASRI)と姫路工業大学大学院理学研究科の共催で、大学院生および学部4年生を対象として、2001年から開講しており今年で3回目となります(以下、単に‘SPring-8夏の学校’と略記)。SPring-8夏の学校は、将来の放射光利用研究者の発掘と育成を目的としており、放射光利用研究の基礎と応用に関する講義とSPring-8からの高輝度放射光を使った実習を通して、放射光利用研究の最先端の魅力を体験してもらうものです。この夏の学校は、上坪前放射光研究所長と平田前理学部長の発案ではじめられたもので、第3回SPring-8夏の学校も吉良放射光研究所長と木村理学研究科長の肝煎りで7月5日(土)〜8日(火)の3泊4日の日程で、SPring-8放射光普及棟と実験ホールを会場として開講致しました。
 
 
 
 

真剣に実習に取り組む参加者 
 
 昨年までのSPring-8夏の学校は、定員約20名、2泊3日の日程で、実習に使うビームラインも4本で試行的に開講しました。SPring-8夏の学校は、参加費が無料で、自己負担が旅費と宿泊費のみであるため、参加希望者が多く締切り前に定員を超えてしまう状況でした。希望者が参加できないのが問題となり、今回から定員を50名に増やしました。また、SPring-8夏の学校の目玉である放射光を使った実習を思う存分体験してもらうために、今年から日程を1日伸ばして3泊4日とし、さらに実習に使うビームラインを4本から10本に増やし、実習を少人数でゆったりと受けてもらえるように計画しました。これは、SPring-8夏の学校がSPring-8の公式行事として位置付けられ、ユーザータイムに実習できるように考慮して頂くことにより可能となりました。
 SPring-8夏の学校を開講する上で大きな問題となったのは、放射光を使った実習に参加するには、受講生を一般ユーザーと同じように放射線作業従事者として登録しなければならないことでした。この登録をするためには、受講生に電離健康診断と放射線安全講習(教育訓練)を受けてもらう必要がありました。放射光利用の経験がない受講生は、一般のユーザーと異なって、所属大学に放射線作業従事者として登録されていない可能性がありました。そこで、所属大学でそうした登録手続ができない場合には、JASRIで放射線安全講習を受けてもらうことで、支障なく実習に参加できるようになりました。
 今年の夏の学校には、全国から40名の学部4年生〜大学院生が参加し、充実した4日間を過ごしたようです。姫路工業大学からは、放射光関連の講義や見学がカリキュラムに組み込まれており、またSPring-8を実験に利用する大学院生が多くいるためか、4名の参加にとどまりました。
 今回の夏の学校のスケジュールを簡単に紹介しますと、初日(土曜日)の午後に放射光普及棟に集合し、一般ユーザーと同様に放射線安全講習を受けた後、夏の学校の開講式を行いました。初日と2日目の午前は、4つの基礎講座、「SPring-8について」原 雅弘(JASRI)、「放射光の発生」橋本 智(姫路工大高度研)、「挿入光源」原 徹(理研播磨研)、「ビームライン」後藤俊治(JASRI)(敬称略)を開講し、さらに「タンパク質結晶解析」樋口芳樹(姫路工大院理)、「XAFS」西畑保雄(原研関西研)、「イメージング」篭島 靖(姫路工大院理)、「軟X線分光」辛 埴(東大物性研/理研播磨研)の4つの応用講義を2日目の午後に開講しました。また、初日と2日目の夕食後に、SPring-8実験ホールとニュースバルの見学を行いました。2日目は朝9時から夕方5時までほとんど缶詰めで講義を受けてもらったため、「丸一日授業というのはやはりつらい」「各講座をもう少しゆっくり進めてほしかった」などという意見もありましたが、SPring-8の貴重なビームタイムを使う関係上、やむを得ないことでした。
 実習は、3日目と4日目の朝から夕方まで、1日に1つずつ2つ受けてもらいました。1つの実習に対する受講者は平均4名と少人数で、参加者にも講師にも大変に好評でした。10個の実習テーマと担当者は、「結晶構造解析」池田 直(JASRI)、「X線分析」寺田靖子(JASRI)、「タンパク構造解析」酒井久伸(JASRI)、河本正秀(JASRI)、「小角散乱」岡 俊彦(JASRI)、「非晶質X線散乱」佐藤真直(JASRI)、「硬X線分光」鈴木基寛(JASRI)、「軟X線分光I」安居院あかね(原研関西研)、「軟X線分光II」郭方准(JASRI)、松井文彦(奈良先端大)、「イメージング」上杉健太朗(JASRI)、鈴木芳生(JASRI)、「X線用ミラー」宇留賀朋哉(JASRI)(敬称略)でした。
 受講生は大変熱心に実習したようで、実習担当者のことばを借りると、「皆熱心に実習に取り組んでいた。少しでも分からない部分があると、すぐに質問を投げかけてきた。」「参加者は積極的に質問をして、こちら側も納得させるまで説明しました。原子配列の立体写真を自分の手で取れて興奮していました。」「何人かは、自分たちの作成した試料、あるいは別の測定方法で今調べている試料を、放射光を使って測ってみたいと言っていた。課題申請についても何人かの生徒から質問を受けた。本気で放射光を使ってみたいと考えているようだった。」
 最後に受講生にアンケートを書いてもらったところ、「大変有意義な4日間でした。ありがとうございました。」「大学に帰ってもっとがんばりたいと思いました。」「本当に凄い施設だと思い、実習の時はとても緊張しました。」「とても満足できました。お世話になった先生方や職員の方々にとても感謝しています。」などという感想を頂きました。また、「研究室の後輩に、友人に勧めたいを思います。」「来年もぜひ参加したいと思います。」などという感想も多く頂きました。
 SPring-8夏の学校と同様なものは、ESRFやAPSでも行われていると聞いています。今後も継続して発展させていく予定ですので、周囲の学生諸君にSPring-8夏の学校の存在を知らせて頂き、ぜひとも参加を勧めて頂きたいと思います。なお、夏の学校のテキストは、姫路工業大学理学研究科のホームページ上のSPring-8夏の学校からpdfファイルとして自由に入手することができますので、参考にして頂きたいと思います。ただし、個人利用以外の目的では、著者の著作権を十分に配慮して下さい。
 最後に、第3回SPring-8夏の学校を開講するにあたり、ご協力頂きました高輝度光科学研究センター、理化学研究所播磨研究所、日本原子力研究所関西研究所放射光科学研究センター、姫路工業大学高度産業科学技術研究所および理学研究科の関係者の方々に厚くお礼申し上げます。 
 


SPring-8夏の学校の参加者(放射光普及棟)

鳥海 幸四郎 TORIUMI  Koshiro
姫路工業大学 大学院理学研究科
〒678-1297 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-2-1
TEL・FAX : 0791-58-0155
e-mail : toriumi@sci.himeji-tech.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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