Volume 08, No.2 Page 111
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(第6回SPring-8利用技術に関するワークショップ)
X線発光分光
Present Status and Future Prospects of XES at SPring-8
X線と物質中の電子との相互作用による発光、散乱スペクトルからは、フォノン励起を含む励起状態に関する直接的な情報はもちろん、バンド構造、結合状態、動的構造因子、二体分布等の、基底状態に関する有用な情報も元素選択的に得ることができる。我々はこうした広義の発光を利用するスペクトロスコピーを「X線発光分光(XES)」と呼んでいる。XESからは、XAS、XPS、EELSなどの1次光学スペクトルでは得られない情報が得られるので、新しい材料評価法として大きなポテンシャルを備えている。しかしその信号強度が極度に小さいため、本格的な研究が始まったのは、国際的にも高輝度放射光が得られるようになったつい最近のことである。XESは低エミッタンスを特徴とする第三世代の大型放射光が必須のスペクトロスコピーなのである。
「Present Status and Future Prospects of XES at SPring-8」と題したこの国際ワークショップは、XESの実験技術とそれを用いた測定結果について、国際的なアクティビティを持つ研究グループが情報交換をすると共に今後の協力体制の礎を作ることを目的として開催された。プログラムは前述の総括を参照願いたい。
XESがカバーするエネルギー領域の広さ(meVからkeVまで)と関連する研究領域の多様さ(フォノン分散からXAFSまで)を反映して、発表・討論された内容は、meVの高分解能分光システムや分解能1eVの高感度分光器など様々な測定装置の紹介、非共鳴X線ラマン散乱、選択的XAFS、寿命フリーXAFS、価電子状態、電荷移動効果、価数変化、磁気円二色性のXESによる理論・実験の最新の研究報告であり、極めて内容の充実したものであった。また、懇親会、コーヒーブレイクの時間にも研究者間の議論は非常に活発に行われていたのが印象的で、本ワークショップの開催目的は十分に果たされたと思われる。
七尾 進 NANAO Susumu
東京大学 生産技術研究所
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