Volume 08, No.2 Page 77
1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
−特定利用分科会−
– On the SPring-8 Long Term Use –
毎回の利用研究課題選定委員会報告の中でも報告しておりますが、特定利用制度は、3年以内の長期にわたってSPring-8放射光を計画的に利用する制度で、2000B期から実施を開始したものです。この制度を利用するためには、従来の一般利用研究課題の選定基準に加えて、(1)長期の研究目標、研究計画が明確に定められていること、(2)SPring-8を長期的、計画的に利用することによって、科学技術分野における傑出した成果が得られること、新しい研究領域および研究手法を開拓できること、産業基盤技術を著しく向上させることなどのいくつかの要件をみたしているかどうかを考慮して選定されなければなりません。採択課題には、長期間にマシンタイムの配分を上限20%まで優先的に配分する訳ですから、応募課題で書類審査に残った課題に対しては、さらに責任者に面接して選定を厳格化します。
この課題としてはこれまで7件が採択されており、加えて、平成15年2月から実施する予定の今期申請には4件の応募がありました。審査は、特定利用分科会と外部審査委員とで審査されます。審査結果は、一般利用課題と異なってその理由を付して公表されるため、極めて厳しい「監視」の目が光ることになります。実験開始後1.5~2年の後に中間評価を受け、3年目の利用に入れるかどうかが決められます。
今回の申請のうち、海洋科学技術センター、巽好幸氏の「100万気圧以上における高温その場観察実験の開発と地球惑星内部物質の相転移の研究」が採択されましたことは、すでに前号で内容とともに報告されていますので、詳細な内容記述は重複を避けたいと思います。この課題を含めて、今までに実施された、あるいは実施予定の特定利用課題は合わせて8件となりました。そのうち4件が既に中間評価を終え、継続利用が認められています。
2003A期の利用課題選定結果の報告が本号で述べられていますが、その中でも触れたように、来期から研究課題の重点化がスタートいたします。特定利用研究は「長期利用課題」となって従来どおりの公募研究となりますが、一般課題と同じに旅費等の経済的支援は受けられません。支援を受けられる重点研究課題がいろいろな形で始まり、SPring-8の利用モードはますます複雑になりますが、どうすれば利用の成果を生むことができるかという大きな命題のもとでは、きめの細かい運用が施設側にも求められています。これには利用者がどのように協力できるかも重要な要素ですので、運用に対する皆様の絶大なるご理解をいただきたいと思います。
松井 純爾 MATSUI Junji
姫路工業大学 大学院 理学研究科 物質科学専攻 教授
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