ページトップへ戻る

Volume 08, No.2 Pages 73 - 74

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

−実験技術・方法等分科会−
– Method & Instrumentation Division –

渡辺 誠 WATANABE Makoto

東北大学 多元物質科学研究所 Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials, Tohoku University

pdfDownload PDF (17 KB)

 実験技術・方法等分科は下記の範疇の課題を審査しました。それらは、新しい装置や手法の開発研究であって実験技術・方法としての論文が書けるもの、放射光を照射して物質創製を行うもの、ビームラインを良好な状態で供用するには施設側のシフト数だけで不十分なため施設側から申請するもの、ビームラインの立上げ・改造などで利用者が主体的に携わらないと実行できない場合利用者側から申請するもの、他の分科で扱われないもの、以上です。ビームラインの立上げ・改造などに関する課題以外の具体的な課題は、光学素子、検出器、分光技術や構造解析技術の高度化、X線顕微鏡、マイクロビーム、ホログラフィー、トモグラフィー、トポグラフィー、各種干渉計測、放射光利用物質創製、放射線計測、原子核物理、考古学、鑑定などに関するもので多岐にわたっていました。平成14年度から「その他」という項目がなくなりましたが、事情は変っておりません。

 まず課題申請について、あったことや感じたことを羅列してみます。ビームタイムの配分を受けて装置・手法の開発研究が完了し、さらに利用研究へ展開することになった場合には、申請書はそれぞれの分科に出されるべきですし、多くの場合出されていました。しかし、それでも本分科に申請されたものがありました。その場合は最も適切な分科に審査を回しました。また申請者の勘違いにより、本分科にはなじまない課題が回って来たこともありました。勿論、この場合も適切な分科で審査してもらいました。施設側への要望として、どの分科にはどの様な課題が審査されるのか、小項目まで並べる様な案内をしてほしいと思います。また、実験装置や技術・方法を良く説明する図面の添付をぜひ義務づけてほしいと思いました。「その他」の範疇のものについては、我々が判断しにくいこともあり、その分野の分る若干名の研究者名を挙げてもらっても良いのではないかと思っています。なお、X線顕微鏡の分野では十分実用の域に達した部分があるにも拘らず、材料物性学、生物学、医学の分野からあまり申請が出されていないような気がします。成果が伝わらないことが一つの大きな原因でしょうが、単に外部から申請がくるのを待つだけでは成果が生かされないのではないかと危惧しています。

 次に、シフト配分について述べてみます。本分科では他の分科に比べると採択率は高いが、シフト充足率は低い様でした。これは、ビームラインの改造等は必ずやる必要があるので多くの件数を採択するが、一つのビームラインに集中するのではなく万遍にシフト配分を行っているということを表わしています。本分科への申請件数は徐々に少なくなってきていますが、これはSPring-8全体が成熟状態に近づいていることを物語っていると思います。申請課題とシフト配分に関して問題と感じたことを並べてみます。まずビームラインの立上げ・改造に関する申請については、本来施設側でやるべきことであれば、別途シフトを確保した方が良いと思います。その場合施設外の協力者の旅費確保のためには、協力者が利用申請をするのではなく別な方式を導入することが必要だと思います。放射光利用物質創製の申請については、申請分野として掲げられているにも拘らず、実際には希望のビームラインが他の分野の申請と競合し、十分なシフト配分ができませんでした。また、検出器の開発は重要であるにも拘らず、検出器の担当者とビームラインの担当者との連携が必ずしも十分でなく、検出器の担当者から申請された研究課題の新奇性と、ビームラインにおける必要性との関連が明確でない場合もありました。

 三つ目の話として、この2年間で委員長から検討するように指示された2件の問いかけについて触れてみます。1番目のものは「本分科で特徴ある課題採択をする必要があるか、もしあればどの様にすべきか」というものであり、2番目のものは「本分科は必要か」というものでありました。「特徴ある課題採択が必要か」ということの具体的な内容は、留保ビームタイム、グループ採択、緊急配分あるいは長期配分などを取り入れて、重要と思われる課題の研究を促進させてはどうかということでした。しかし、本分科には特に強い主張はありませんでした。その理由は、本分科は生命科学分科の様に試料が出来たら直ちに測定しなければならないという様な研究はないので留保ビームタイムは考えにくく、またグループ採択も申請課題がそれぞれ独立しているので意味がないからです。緊急なものや長期的なものについては、それぞれ応募できるカテゴリーがあるので、新しいものが必要とは考えられませんでした。

 「本分科は必要か」ということの具体的な内容は、他の分科はおおむねビームライン毎に審査しているのに、本分科は横断的に審査しており、今後増加する申請に対しシフト配分がやりにくいことと、委員に対する審査件数の平等化をはかるため分科の再編が必要かもしれないことの二つのことと思われます。前者については他の分科の場合にもあてはまるように見えます。このことは、現状の申請が研究分野毎になされており、ビームライン毎ではないことによっているからでしょう。後者については、本分科の申請件数が漸減していることもあり、利用者の意見も聴して分科全体を見渡した議論が必要でしょう。ビームラインが特定される装置・方法等の課題(ビームラインの立上げ・改造等)の審査は、主としてそのビームラインを担当する分科でなされることになっても支障がないように思えます。しかし、ビームラインに固有でない装置・方法等の課題やどの分科にもあてはまらないものの場合の審査には一工夫が必要でしょう。

 最後になりましたが、上で述べました事柄について私の理解不足によるものや、色々あったと思われます私の至らないところにつきましては、御容赦のほどよろしくお願いします。現在、委員の2年間(分光)と主査の2年間(本分科)の合計4年間を終えてほっとしているところです。



渡辺 誠 WATANABE Makoto
東北大学 多元物質科学研究所
〒980-8577 仙台市青葉区片平2-1-1
TEL:022-217-5376 FAX:022-217-5379
e-mail:watamako@tagen.tohoku.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794