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Volume 08, No.2 Pages 64 - 65

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

−生命科学分科会−
– Life Science Division –

田之倉 優 TANOKURA Masaru

東京大学大学院 農学生命科学研究科 Graduate School of Agricultural and Life Sciences/Faculty of Agriculture, The University of Tokyo

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 利用課題選定委員会を終えるに当たり、この2年間の生命科学分科会の活動について報告するとともに今後解決すべき課題について述べたい。前期(1999年度-2000年度)において課題提案申請書の書式や留保ビームタイムなどのタンパク質結晶学ビームラインのための制度がほぼ確立されたので、今期はその潤滑な運用を実施することでスタートしたが、2002年度からタンパク3000プロジェクトが開始され、共用ビームタイムのうちの30%は個別的解析プログラム(いわゆるタンパク500)の利用に供することになり、そのビームタイム配分法を模索することになった。


審査全般について

 放射光施設の整備や高感度の検出器の開発、分子生物学のシンポによる位相問題解決のルーチン化などにより、タンパク質結晶の構造解析において現時点で一番時間がかかるのはタンパク質結晶調製となっている。また、タンパク質結晶は必ずしも安定ではなく結晶ができたらできるだけ早く測定したいというユーザーの希望が強く、それに呼応するかたちで2000A期からスタートした留保ビームタイムは今ではタンパク質結晶の利用研究課題選定にはなくてはならない制度として定着した。今後も利用研究課題は、留保ビームタイムを十分に確保して緊急なビームライン使用希望に柔軟に対応していくべきだと考える。さらに進んですべての課題選定を留保ビームタイム方式で行うという考え方もあるが、留保ビームタイムの審査は数日で行うため、課題選定委員の負担を考えると当面は現状のような年2回の定期的な課題選定と留保ビームタイムの課題選定を組み合わせた方式が望ましいと考えている。
 留保ビームタイムの課題の審査については、現在のところは課題選定委員全員で当たり、主査のグループからの申請がある場合に申請していない委員がとりまとめを行う以外はすべて、主査がとりまとめを行っている。タンパク質結晶構造解析の優先度は研究に関する価値観の各委員の違いを反映して選定委員毎に少しずつ意見が異なるので、やはり課題選定委員全員で審査をすることが望ましい。ただ、留保課題の審査のとりまとめをすべて主査が行うと主査の負担が過重になるので、予め順序を決めておいて交代でとりまとめに当たるようにすることも考えられる。


タンパク3000プロジェクトのビームタイムについて

 2002年度よりタンパク3000プロジェクトのビームタイムが始まった。課題選定委員会生命科学分科I委員がタンパク3000課題選定ワーキンググループ委員を兼ねることがタンパク3000推進委員会で認められたので、タンパク3000プロジェクトについては課題選定は既に行われているという考えに基づいてビームタイムの配分のみを行った。ただ、これまでの一般課題とは異なる方式での配分であり、またタンパク3000で初めて放射光施設での測定をするユーザーがいたことから、当初想定しなかった問題点が次から次に出てきて混乱した。タンパク3000の測定が始まってからこれまでにほとんどの問題点は解決できたと思うが、引き続き効率よくユーザーの希望をできるだけ叶えるようなビームタイム配分のための検討を続ける必要があると考えている。いくつかの問題が起こったが、タンパク3000プロジェクトは放射光のユーザーを増やしたという点は特筆すべきである。
 また、タンパク3000プロジェクトのビームタイム枠30%が入ったため、BL40B2では小角散乱などの生命科学分科Ⅱのビームタイムの確保が難しくなったため、BL40B2とBL38B1のタンパク3000ビームタイム枠を一部交換することによって、小角散乱のユーザーが課題を実施するのにそれまでと比べて極端に窮屈にならないよう処置した。


BL41XUの希望について

 BL38B1とBL40B2の装置のセッティングはユーザーフレンドリーになっており、これらのビームラインを好むユーザーも多い。一方、一般課題およびタンパク3000課題のユーザーにアンジュレータ光源でX線強度の強いBL41XUの人気は高く、BL41XUのビームタイムは常に不足している状態である。アンジュレータ光源のビームラインをもう一本整備することも関係の方々でご検討いただきたい。


おわりに

 年2回の定期的な課題選定以外に留保ビームタイムの課題の選定や2002年度から始まったタンパク3000プロジェクトのビームタイムなど、JASRIの方々の協力なしには生命科学分科のビームタイムの効率的運用はできない。あらためて関係の方々に御礼申し上げます。



田之倉 優 TANOKURA Masaru
東京大学大学院 農学生命科学研究科
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Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794