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Volume 16, No.3 Page 248

5. 告知板/ANNOUNCEMENTS

最近のSPring-8関係功績の受賞
SPring-8 Related Achievements

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※功績が認められ最近受賞されたSPring-8利用者等を掲載しています。

平成23年春の紫綬褒章 受章
主催:内閣府
受賞者 北川 進
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 副拠点長/教授
業績名 錯体化学研究功績
ビームライン BL02B1、BL02B2、BL13XU
研究内容  北川教授は金属イオンと有機化合物との自己集合による結合反応(配位結合)を利用することで、ナノメートルサイズの規則的な孔を無数に有する新しいタイプの多孔性材料(多孔性配位高分子)の開発を行った。このような材料の細孔中に気体を大量に取り込むことができることを、1997年に世界で初めて立証し、これを契機として、種々の多孔性配位高分子による水素や天然ガスの大量吸蔵を行う研究が、世界中で盛んに行われるようになった。既存の多孔性材料(ゼオライト、活性炭など)を凌駕する性質や機能を開拓したことから、多孔性配位高分子の学術的・産業的価値を大きく拡げ、「配位空間の化学」という先駆的な分野を創成した。この業績は無機・錯体化学はもとより、今日の諸問題(エネルギー、環境、生命)に対し、化学が解決するために取り組む新領域の開拓を先導し、国際的に高く評価されている。同人は、多孔性配位高分子のナノ空間内での酸素の凝集状態を世界で初めて直接観測することに成功(Science 2002)するなど、大型放射光施設SPring-8を利用した研究で多数の特筆すべき成果を上げている。
受賞理由  錯体化学、特に配位結合を用いる多孔性材料の合成化学およびそれを用いる気体物質の貯蔵、分離、精製の応用分野で大きな貢献をなし、その功績はまことに顕著であることが評価された。
日本希土類学会奨励賞(足立賞)
主催:日本希土類学会
受賞者 長谷川 美貴
青山学院大学 理工学部科学・生命科学科 教授
業績名 希土類錯体の分子内・分子間の構造とエネルギー状態の相関に関わる光化学研究
ビームライン BL02B2、BL01B1、BL39XU
研究内容  レアアースと有機分子が結合した物質を希土類錯体という。レアアースの発光は、有機分子と結合させてUVを照射すると可視光や赤外領域に強く表れる。これはUVの光を有機分子が吸収し、このエネルギーがレアアースに引き渡されることで発現するがこの時のエネルギーの移動の速さや有機分子とレアアースのそれぞれの電子の状態とそれらの関係は不明な点が多かった。レアアースにプラセオジムを用いることで、このような系の分子内エネルギーが移動する速さと経路を初めて明らかにした。また、この知見をもとに、レアアースと有機分子をサンドイッチ状態に積み重ねた分子性薄膜の発光現象に偏光が伴うことを見出した。金属の層間の距離は50 Å程度であり、この間にある有機分子は第三の成分である別の有機分子も取り込むことができ、この第三の成分は、レアアースのサンドイッチ構造に挟まれることで2種の異なる角度の偏光発光を放つだけでなく、粉末や溶液で観測されないスピン状態を示す場合があることを明らかにした。
受賞理由  以上のように、受賞者はこれまで現象が先だっていた希土類発光のメカニズム解明に新たな指針を示し、さらに希土類錯体の超薄膜化が偏光発光やりん光発現の環境を与えることを証明し、未来の材料に向けた基盤的研究成果が評価され受賞に至った。
※日本希土類学会奨励賞(足立賞)を受賞の長谷川美貴教授(青山学院大学)の記事は本紙SPring-8利用者情報Vol.16 No.3(2011年8月号)の191ページ(http://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=20923)に掲載されています。


Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794