Volume 16, No.3 Page 224
4. SPring-8 通信/SPring-8 Communications
2008A期実施開始の長期利用課題の事後評価について -1-
Post-Project Review Results of Long-term Proposals Starting in 2008A -1-
2008Aに採択された長期利用課題について、2010Bに3年間の実施期間を終了しましたので、5月に長期利用分科会による事後評価が行われました。
事後評価は、長期利用分科会が実験責任者に対しヒアリングを行った後、評価を行うという形式で実施し、利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめました。以下に対象となる長期利用課題2課題のうち、評価を受けた1課題の評価結果を示します。研究内容については本誌197ページの「最近の研究から/Long-term Report」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。
なお、2008Aに採択された長期利用課題2課題のうちもう1課題については、今秋に事後評価を実施する予定です。
課題名 | Structural Study of Regulated Intramembrane Proteolysis |
実験責任者 | Nieng Yan(Tsinghua University) |
採択時課題番号 | 2008A0018、0019 |
ビームライン | BL38B1(2008A0018)、BL41XU(2008A0019) |
配分総シフト | 18シフト(BL38B1)、54シフト(BL41XU) |
〔評価〕
本課題は、制限的膜内切断(RIP)の構造生物学的研究をテーマに、GlpG基質複合体、rhomboidプロテアーゼ、S2P、SPPといった膜内在性プロテアーゼの構造解析とそれに基づく機能解明を目指した研究課題として採択された。そのうちの1つS2Pに関しては大腸菌ホモログであるRsePの細胞質領域の構造解析に成功し、その構造に基づいて制御機構を明らかにすることに成功した。申請者のグループは他にも多くの重要な膜蛋白質の構造を明らかにし、Nature等の高レベルのジャーナルに発表している。特に、FucPおよびUraAという2つの輸送体の構造解析は非常にインパクトの高いものとして評価できる。しかしこれら2つの蛋白質の構造解析は申請時のテーマとは関係が薄いことと、本来のテーマである制限的膜内切断に関連するその他の蛋白質については、多大な努力にも関わらず大量発現、精製、結晶化などの問題点を解決することができず、期間内に構造を明らかにすることができなかった点は残念である。
一方、SPring-8を長期的かつ計画的に利用することによって、この分野において傑出した成果を挙げた点については評価できる。