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Volume 16, No.3 Pages 216 - 218

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第11回SPring-8夏の学校を終えて
The 11th SPring-8 Summer School

SPring-8夏の学校実行委員会 委員長 八木 直人 YAGI Naoto

(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI

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 「第11回SPring-8夏の学校」は、7月10日(日)〜13日(水)の3泊4日の日程で、全国から76名の学生の参加を得て、普及棟およびSPring-8蓄積リング棟・ニュースバル放射光施設・XFEL実験研究棟を会場として開校されました。この夏の学校は、SPring-8サイトに施設を持つ各機関((財)高輝度光科学研究センター、(独)理化学研究所播磨研究所、(独)日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究部門)と、これらの機関と連携大学院協定を持つ大学(兵庫県立大学大学院物質理学研究科・生命理学研究科、関西学院大学大学院理工学研究科、岡山大学)、およびSPring-8サイトにビームラインを持ちそれを教育に生かしたいと考えている大学(兵庫県立大学高度産業科学技術研究所、東京大学放射光連携研究機構)が主催し、(財)ひょうご科学技術協会の後援を得て、ビームタイムや教官を出し合って行ったものです。校長は関西学院大学大学院理工学研究科(日本原子力研究開発機構兼務)の水木純一郎先生にお願いしました。実行委員会は主催団体のスタッフで構成され、事務はJASRIの研究調整部が行いました。

 この夏の学校の開校目的は、「将来の放射光利用研究者の発掘と育成」であり、大学院博士課程前期(修士)と学部4年生を対象としています。募集人員は60名程度でしたが、主催者となっている各大学からの推薦を含めて、北海道から九州にわたる日本全国30の大学から107人もの応募があり、選考過程を経て最終的に76人の参加者で開催されました。

 今回の夏の学校では、初日に3講座、2日目に4講座の講義があり、その後の2日間に2テーマの実習を行いました。講義題目と講師(敬称略)は以下の通りです。

 放射光発生の基礎(理研/兵県大:北村英男)、X線光学の基礎(JASRI:後藤俊治)、X線の強度を測る(JASRI:八木直人)、X線自由電子レーザー(理研: 新竹積)、回折散乱の基礎(関学/JAEA:水木純一郎)、XAFS(JAEA/関学:西畑保雄)、軟X線スペクトロスコピー入門(東大:松田巌)。

 どの講義も講師の方々の努力で専門外の学生にも配慮した分かりやすい内容となっており、人生訓なども盛り込まれた夏の学校らしい講義でした。

 また、2日目午前にはSACLAとニュースバルの見学、夜にはSPring-8の見学を行いました。じっくりと時間をかけた見学で、施設の大きさや複雑さに感銘を受けた参加者が多かったようです。

 実習のテーマと使用したビームラインおよび担当者(敬称略)は以下の通りです。

BL02B1 単結晶構造解析
(岡山大:野上由夫、JASRI:杉本邦久)
BL07LSU 合金の合成と光電子分光分析
(東大:原田慈久・堀場弘司・松田巌)
BL08W 磁気コンプトン散乱を用いたスピン磁化曲線の測定
(JASRI/岡山大:櫻井吉晴、JASRI:伊藤真義)
BL13XU 高分解能マイクロX線回折による局所ひずみ評価
(JASRI/岡山大:木村滋)
BL14B1 XAFS
(JAEA/関学:西畑保雄)
BL14B2 その場XAFS計測
(JASRI:本間徹生、JASRI/岡山大:廣沢一郎)
BL19B2 粉末X線回折
(JASRI:大坂恵一・松本拓也・梶原堅太郎、JASRI/岡山大:廣沢一郎)
BL19LXU 放射光時間分解X線回折法
(理研/関学:田中義人、理研:伊藤基巳紀)
BL22XU 放射光X線回折入門
(JAEA:大和田謙二)
BL24XU X線集光ビームの特性とその応用
(兵県大:高野秀和)
BL25SU 高分解能軟X線光電子分光
(岡山大:横谷尚睦・村岡祐治)
BL26B1 単結晶回折(タンパク質)
(理研:河野能顕・上野剛)
BL26B2 単結晶回折(タンパク質)
(JASRI/関学:熊坂崇)
BL37XU アンジュレーターBLを用いた蛍光X線分析
(JASRI/関学:寺田靖子)
BL45XU X線溶液散乱法を用いた蛋白質分子の構造解析
(JASRI:八木直人・山田好輝)
ニュースバル ニュースバル放射光を用いた光電子分光による表面分析
(兵県大:春山雄一・庄司善彦)

 

 

写真1 講義風景

 

 16本のビームラインを用いて実習を行いましたが、参加者が多かったために各ビームラインあたり5人で実習を行うことが多く、やや混雑した印象でした。参加者は実習テーマの選択の希望を出すことができますが、定員の関係でそれがすべてかなえられるとは限りません。しかし、第一希望の実習は行えるように配分できたので、希望はある程度満たすことが出来たと思います。もちろん参加者は専門外の講義や実習を受けることもありますが、講師や実習担当の方々の努力もあって、専門外の分野の技術や研究にも十分に興味を持ってもらえたようです。学生時代に広い研究分野を学ぶことの重要性はしばしば指摘されていますが、一般の講習会では得られないような広範な知識を得られる点こそが、夏の学校の大きな特長となっています。

 夏の学校の目的は、放射光の勉強だけではありません。同世代の異なった分野の人たちとの交流を通じて、知り合いの輪を広げ、将来の研究につなげることも重要です。初日には参加者の自己紹介と懇親会があり、3日目には萌光館でのバーベキューもあって、教官と参加者が一緒になって会話がはずんでいました。この夏の学校で刺激を受けて、将来の進路を決めた参加者も多かったのではないでしょうか。

 参加者が熱心に講義や実習を受け、また楽しんでいる様子からも、この夏の学校が有意義なものであったことは明らかでした。第1回の夏の学校では参加者が20人程度だったことを考えると、放射光に対する学生の関心が増していることがうかがえます。今年は参加希望が多く30人もの方の参加をお断りせざるを得なかったことは、非常に残念です。人材育成という観点から、参加希望者をすべて受け入れられるだけの体制を整えることが重要だと感じました。これは来年度に向けた反省点としたいと思います。

 最後になりましたが、熱意のこもった講義をしていただいた講師の先生方、2日間にわたる実習を最後まで熱心に指導していただいた実習担当の皆様、分かりやすい説明で参加者の興味を引きつけてくださった見学引率者の皆様、そして事務局としてウェブ作成から懇親会・バーベキューのお世話までご努力いただいたJASRI事務局担当者に感謝致します。

 

 

写真2 実習風景

 

 

写真3 懇親会風景

 

 

写真4 記念写真

 

 

八木 直人 YAGI Naoto

(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門

〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1

TEL:0791-58-2750

e-mail:yagi@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794