Volume 07, No.5 Pages 274 - 275
1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
ナノテクノロジー総合支援プロジェクトについて
Opening of a National Project “Nano Technology Support Project” in SPring-8
(財) 高輝度光科学研究センター 放射光研究所 利用研究促進部門Ⅰ Director of Materials Science Division, JASRI
この度、SPring-8では、JASRI、日本原子力研究所(以下、原研)および物質・材料研究機構(以下、物材機構)の3者が、文部科学省の「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト」の「放射光を活用した解析支援」を実施することになりました。このプロジェクトは、広範な研究分野にわたるナノテクノロジー研究に関して、産官学の研究者が研究分野を越えた横断的な研究活動を効果的に研究に取り組めるよう、基盤的研究施設を共用施設として解放し支援しようとするものです。平成14年度から5年間の計画で、次の4研究分野の支援グループが設定され、16研究機関が参画することになりました。すなわち、1)超高圧電子顕微鏡、2)極微細加工、3)放射光解析、4)物質・分子総合合成・解析、です。註)
この「放射光を活用した解析支援」を行う機関として、SPring-8の上記3機関と立命館大学総合理工学研究機構(放射光センター)が選定されました。このプロジェクトは、ナノテクノロジーに関わる科学・技術の広い分野の発展を促すため、従来、放射光実験の経験のない研究者にも利用できる様、実験計画に関する検討・助言や実験結果の解析に対する助言も含めた研究支援を行うことといたしました(勿論、研究のイニシアチブは、各研究者にあります)。
SPring-8では、高輝度放射光の特色を活かしたナノテクノロジー研究分野について12テーマを設定し、公募により課題を選定し、以下に述べるような研究支援を行うこととしました。以下に、研究テーマを紹介し、支援内容および審査方式等を述べます。因に、2002B利用期間の公募では、91件の応募があり、60件の課題が採択されました。
なお、これらナノテクノロジー総合支援プロジェクト課題の募集要領は、SPring-8利用者情報誌(本号)の募集案内およびホームページに掲載しております。URL: http://www.spring8.or.jp/JAPANESE/user_info/c_f_nano02B/
1.ナノテクノロジー総合支援プロジェクト研究テーマ
現在、以下の12研究テーマを設定し、N1 - N7の研究支援はJASRIが、N8 - N10は原研、N11、N12は物材機構が担当することになります。研究テーマの詳細は、ナノテクノロジー総合支援プロジェクトの課題募集要領を参照して下さい。また、各研究テーマに配分されるビームタイムは各ビームラインのユーザータイムの約20%です。
N1:磁気記憶材料等の元素別磁化測定(主にBL39XU)
N2:半導体等ナノ薄膜の表面・界面構造解析(主にBL13XU)
N3:新機能ナノ材料の光電子分光、磁気円二色性測定(主にBL25SU)
N4:新規ナノ材料の精密結晶構造評価(主にBL02B2)
N5:X線マイクロビームによる顕微分光、トモグラフィー(主にBL47XU)
N6:クラスター、微粒子及びナノ薄膜の電子分光(主にBL27SU)
N7:蛍光X線分析法による微量元素マッピング(主にBL37XU)
N8:核共鳴散乱法による局所構造と電子状態の研究(BL11XU)
N9:電気化学における固/ 液界面構造解析(BL14B1)
N10:極薄金属酸化膜の形成とその光電子分光解析(BL23SU)
N11:高精度小角散乱によるナノ凝縮体解析(BL15XU)
N12:高エネルギー内殻光電子分光(BL15XU)
2.支援内容
このプロジェクトでは、上記のナノテクノロジー研究課題として採択されれば、以下の研究支援を行います。
A.最適な実験計画の立案・指導
B.利用技術の指導・助言
C.実験結果の解析・評価に対する助言
D.その他;旅費支給等
すなわち、当方の研究スタッフが、個々の採択課題に対し、実験計画の立案から、実験実施に対する指導、および結果の解析まで助言を行います。また、これらに関わる旅費支援を行います(JASRIの規定に従って)。
これら各研究テーマに関する相談は、共用ビームラインについてはビームライン担当者が、原研および物材機構はそれぞれの担当者が対応します。
3.課題募集および審査
このナノテクノロジー研究課題は、一般課題と同時に公募し、審査は、一般の課題選定委員会(PRC)に先立って「ナノテク課題審査委員会」で審査し、選定された課題をPRCに推薦する方式を取ることになります。ナノテク課題審査委員会では、課題の科学および技術上の独創性/発展性/波及性、および先端基礎、開発、または生産技術としての研究戦略上の重要性に重点をおいて審査します。最終的な課題の採否およびシフト配分は、PRCで行われます。
註)これらのナノテクノロジー総合支援プロジェクトを総合的・有機的に推進するため、東京・虎ノ門に「ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター」が設置され、研究ネットワークとして、研究推進と研究交流が計られることになっている。URL:http://www.nanonet.go.jp
壽榮松 宏仁 SUEMATSU Hiroyoshi
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門Ⅰ
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
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