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Volume 07, No.3 Pages 129 - 130

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

ビームライン検討委員会報告
Report on Beamline Approval Committee

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 Graduate School of Frontier Sciences, University of Tokyo

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 平成13年度ビームライン検討委員会は特定放射光施設連絡協議会(原研、理研、JASRIによるSPring-8運営に係わる事項を審議する会議)からの諮問を受け、委員を一新して2年間の作業を行うこととなった。第1回検討委員会は平成13年4月4日に開かれ、前期委員会の活動状況報告を受けて、今年度からの活動方針の検討を行った。
 まず、平成11年度のビームライン検討委員会で建設することが適当であるとの答申を得ている以下の6本のビームライン提案について検討を行った。

(1)X線発光分析ビームライン
(2)地球惑星科学ビームライン
(3)超高輝度軟X線共鳴分光ビームライン
(4)生体高分子結晶構造解析ビームライン
(5)X線発光解析ビームライン
(6)高輝度高エネルギーX線ビームライン

 このうち、(1)X線発光分析ビームラインについてはBL39XUの混雑状況から考えて整備が急がれると判断し、平成12年度補正予算で実行中(平成13年度中に完成)であること、(2)、(3)および(4)については平成13年度補正予算ないし平成14年度予算として要求する方針がほぼ決定されていることが施設側から説明があり、了解された。(5)X線発光解析ビームラインについては既存ビームラインのハッチ増設により計画内容を整備することが適当であり、また、(6)高輝度高エネルギーX線ビームラインについては技術的な課題を調整の上整備することが適当であるとの結論を得た。
 一方、前年度の委員会ではビームラインの新設と共に、より高度な実験が可能になるようにビームラインを改造/増強し実験ステーションの新設/高度化を図らなければならないことが確認されている。増強計画もビームライン提案と同じく、ビームライン検討委員会で検討を行うものであるが、平成14年度の予算要求に間に合わせるために、施設側がビームライン担当者を通じて利用者懇談会からの提案をまとめることとなっていた。これを受けてまとめられた以下の3案が提示された。

(1)BL40B2及びBL41XU
 試料交換等の自動化による高速大容量解析技術の整備

(2)BL25SU
 実験ステーションの新設による新しいサイエンス領域の開拓

(3)BL09XU
 超伝導マグネットを整備した実験ハッチの増設による新しいサイエンス領域の開拓

 これらについて検討を行い、提案(2)については研究目標の具体化、組織作り、応用面のサポートが重要であるとの意見があったが、いずれも早急に整備することが適当であるとの結論を得た。なお、予算要求に関しては施設者側に一任することが確認された。これに基づいて、提案(1)と提案(3)が予算要求され、(1)について実行された。
 さらに平成15年度の予算要求を見据えた新規ビームラインと既存ビームライン高度化についての方針を検討し、前回答申からかなり時間がたっていることから、答申された提案の見直しと新たな提案を募ることが適当であるとの結論を得た。スケジュールとしては、平成14年3月に答申を行う予定で立てることとした。一方、施設の新たな計画については事前評価を行ってからにするべきであるという文科省の判断があり、今回の募集もそれを待ってからという意見があった。SPring-8に対しては5月ごろから科学技術・学術審議会の元でのSPring-8ワーキンググループ(主査:福山秀敏東大物性研所長)による評価が行われることになっており、年度内にもその結果が出る予定であるといわれていた。しかし、この評価結果を待って新たな募集を行っては予算計画に間に合わないことから、今回は募集ではなく、希望調査という形式をとることにし、希望調査の中からより詳細な検討が必要な場合には改めて詳細計画を提出してもらうこととした。なお、既に認められている6計画について、調査開始時に予算化の見通しが立っていない場合には、詳細計画書の提出の段階から参加してもらうこととした。調査の開始は8月ごろをめどとすることが確認された。
 希望調査を予定通り8月に開始し、10月に締め切ったところ、新規ビームラインに対する提案が12件、既存ビームラインの増強計画に対する提案が6件あった。これらの提案を11月1日開催の第2回検討委員会で検討した結果、新規ビームラインについては1件、増強計画については1件について詳細計画を提出してもらうこととした。新規ビームラインについては、既に認められていながら予算措置のなされていない4計画(前ページの(2)、(3)、(4)、(6))についても以前の提案からの修正を含めて提出してもらうこととしたので、新規ビームライン提案については5件の計画提案書の提出を求めることとした。これらの提案書に対して、新たな1件については外国人を含む3名のレビュアーに、また、再提出分については以前のレビュアーの中から1人に内容の検討を依頼した。
 第3回検討委員会(平成14年2月12日開催)でレビュアーの検討を参考にして、これらの提案についての審議を行った。その結果、新規ビームラインとしては3件、既存ビームラインの増強については2件を今後整備することが妥当であるとの結論を得た。


新規ビームライン
(1)地球惑星科学ビームライン

(2)高輝度高エネルギーX線ビームライン
 この提案に対しては、光源開発が提案の主題なので施設側が主体となって推進することというコメントがついている。

(3)高スループットナノ材料科学ビームライン
 この提案に対しては、時流に乗った提案なので共用ビームラインの枠に囚われずに他のビームライン建設方式も視野に入れて早期実現を目指すべきとのコメントがついている。


既存ビームラインの増強
(1)X線発光解析ビームライン

(2)BL39XUへの9軸回折計の導入
 この考え方は、ビームライン検討委員会から特定放射光施設連絡協議会に報告され、了解された。これらの結論を参考にして、施設側が平成15年度予算要求に盛り込んでいく予定である。

 今回のビームライン検討委員会は第4期(1期2年)になるが、施設の進捗状況に伴って今までの委員会とはかなり様子が変化してきた。SPring-8は61本ビームライン設置が可能であり、そのうち約半分の30本程度を共用ビームラインとする方針が決められている。現在共用ビームラインは25本設置済みであるので、共用としての残りは5本程度である。また、61本中未設定のビームラインは15本であるが、これらの中には30m長直線部、300m中尺、1km長尺、医学利用、RI棟などの特殊なものが多く含まれている。したがって、新たなビームラインの割り当てには慎重な検討が必要である。さらに、予算環境が次第に厳しくなってきている。このような状況で、新たにビームラインを今までのように建設することは容易ではない。一方、今までに25本の共用ビームラインを建設してきているので、それに対応する多くの種類の光源があり、これらが最適な配置になるように改めて検討する時期である。すなわち、まずそれぞれのビームラインの最適化について検討することが求められており、さらに、新たなサイエンス領域を展開するための装置を設置するにあたって、必ずしもビームラインを新設することが必須条件ではなく、既存ビームラインの整理によって行えることが多いことを念頭に入れるべきである。このような考え方は前期の委員会で既に議論されていることであるが、今期はそれを実行する最初の機会となったわけである。今年度から、施設側で設置後5年を経過したビームラインについてビームラインごとの外部評価を行うことになったと聞いている。この評価はビームライン検討委員会にも報告されるとのことなので、今後の新規ビームライン建設や既存ビームライン増強の参考としていきたい。利用者各位においても、このような状況をご理解の上、積極的なビームライン建設やステーション増強に対する提案やご意見をお寄せいただくことをお願いする。






雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki
東京大学大学院 新領域創成科学研究科
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FAX:03-5841-6949
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Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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