Volume 07, No.2 Pages 91 - 92
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第5回SPring-8利用技術に関するワークショップ
超高圧科学研究会ワークショップ(第21回)
テーマ:「純静水圧がもたらす高圧構造物性の新展開」
The 5th Technical Workshop for SPring-8 Utilization
The 21st Workshop on Ultra High-Pressure Science
– New Frontier in Structural Science Under High-Hydrostatic Pressure –
2001年12月17、18日の2日間、普及棟において「純静水圧のもたらす高圧構造物性の新展開」と題するワークショップが開かれ、活発な意見交換が行われました。
近年、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)高圧装置による高圧下構造物性において、不活性ガス圧力媒体を用いた研究が行われつつあります。従来のアルコール系の圧力媒体をもちいた"準"静水圧実験から"純"静水圧実験へ、精密構造物性研究を目指しヘリウム等の不活性ガスの使用が現在多く試みられてきています。そこで、ヘリウム等の圧力媒体を用いた"純"静水圧下の高圧実験に関して、How To的な事項も含めて、技術と知識を確実にSPring-8ユーザーが共有することをめざして、「静水圧性の重要性」、「ガス圧媒体技術」、「共同利用化に向けて」といったキーワードでこのワークショップが企画されました。
研究会のプログラム概略を以下に示します。ヘリウム圧媒体を使用した実験、その充填技術、そしてアルゴンも含めたガス媒体実験の実際の紹介をしていただき、さらにこれらの技術の今後の展開と問題点について発表と討論が行われました。
12月17日(月)
13:30より
・浜谷 望(世話人)「ワークショップの主旨」
・下村 理(原研放射光)「SPring-8の現況」
【静水圧条件で展開するサイエンス】
・西堀英冶(名大院工)「高圧下における精密構造物性研究のためのデータ測定」
・小林達生(阪大極限セ)「重い電子系の超伝導と価数転移−低温加圧実験−」
・綿貫 徹(原研放射光)「静水圧及び一軸応力下での準結晶の構造安定性」
・遊佐 斉(物材機構物質研)「反応流体としての圧媒体の利用」
【ガス充填装置と圧力発生技術】
・竹村謙一(物材機構物質研)「ヘリウムの充填と静水圧性の確保」
・綿貫 徹(原研放射光)「原研放射光のガス充填装置」
【ガス圧媒体実験の実際(Ⅰ)】
・中野智志(物材機構物質研)「He圧媒体中における圧力誘起構造変化:α-Quartzの場合」
・佐藤恭子(物材機構物質研)「He圧媒体中における圧力誘起構造変化:SnI4の場合」
・山脇 浩(産総研物質プロセス)「圧媒体の屈折率測定」
18:00より懇親会(夕食)
12月18日(火)
9:00より
【ガス圧媒体実験の実際(Ⅱ)】
・赤浜裕一(姫工大理)「He媒体を使ったスカンジウムの構造相転移」
・大石泰生(JASRI)「He媒体を用いた低温実験」
・一色麻衣子(JASRI)「レーザー加熱におけるAr 圧媒体の利用」
・石松直樹(広大院理)「CePでHe圧媒体を使ってみて」
【今後の展開】
・八木健彦(東大物性研)「サマリーと今後の展望」
【多くのニーズへの対応】
・綿貫 徹(原研放射光)「共同利用化のキーポイント」
・内海 渉(原研放射光)「JAERI、JASRIの安全管理」
討論
・浜谷 望(世話人)「終わりに」
当シンポジウムを通して、高圧構造研究において今やそれが行われた圧力環境が“静水圧性”をキーワードに、データの見方が違ってくること、または違えないといけないことが分かりました。さらに、元来高圧構造物性を主としていない研究者の参加も目に付き、それは精密構造物性に対して必要性と可能性を広く物性研究者が抱いていることを表していると感じました。しかしまた、このシンポジウムでは国内における法律的な壁を参加者は思い知らされました。ヘリウム等の圧力媒体の高圧容器への封入は、高圧下高密度流体で行うことが最適ですが、「高圧ガス保安法」により高圧ガスの取り扱いに関する規制があり、国内では容易に取り扱えないことです。現状ではヘリウム圧媒体の使用による高圧精密構造解析においては、日本は比較的先行しているといえると思いますが、今後の国内法に基づきながら、ヘリウム充填設備の整備が急務であることは間違いありません。SPring-8の敷地内においては現在、原研が管理運営するガス充填装置があります。このワークショップにおいて共同利用化について議論されました。
清水 克哉 SHIMIZU Katsuya
大阪大学大学院 基礎工学研究科
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