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Volume 07, No.1 Pages 18 - 19

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

2002A利用研究課題選定委員会を終えて
Report of the Proposal Review Committee for the 2002A Term

松井 純爾 MATSUI Junji

(財)高輝度光科学研究センター SPring-8利用研究課題選定委員会 主査、姫路工業大学 理学部 Faculty of Science, Himeji Institute of Technology

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はじめに

 毎年のことではありますが、A期の研究課題の募集締め切りが、B期の課題研究進行中の10月に行われることもありまして、各委員には「A期の課題選定が終わったばかりなのにもう次の選考」という印象が強いのが事実です。しかしこれは一方で、前回の選定経過や結果に対する各委員の記憶が新しい中で作業を続けることになるために、担当分野の研究展開をより正確に把握でき、きめの細かい審査につながる利点もあります。
 前回の審査から小分科を10に増やして審査分野を細分化しましたが、該当ビームラインの立ち上げが完了していない関係で実質的な審査は次回からとなる「産業利用分科会」を除いて、それぞれの分科会の体制が固まってきた感があります。


今期の一般課題募集と審査

 2002A期は2002年2月の第2サイクルから7月の第6サイクルまでの6ヶ月を利用期間とし、課題募集は9月5日から10月27日まで行われました。別途利用業務部からの報告にあるように、応募課題は総数643件、要求シフト数7,064シフトにも達しました。供用開始以来、年間の応募数は右肩上がりの中で、ここ数年の傾向としてはA期よりB期の応募数が少ない、いわば「斜め鋸歯」の状況にあったのですが、今回は予想に反して、前回(2001B期)の619件より多くなってしまったのは、やはりビームラインの整備が進んできた証でありましょう。これらの課題に対して、各小分科審査委員による事前評価に続き11月21日、22日の2日間で最終審査を行い、その結果を受けて12月10日に利用研究課題選定委員会を開いた結果、520件(応募数の81%)の課題を採択し、合計4,591シフトを配分する旨機構側に通知いたしました。今回は、1件あたりの平均シフト充足率は80%と過去最大の充足率となり、採択された課題に対しては十分なビームタイムを充てることで確かな成果を期待したい、という当初の課題選定方針が守られました。機構側の採択結果は12月14日に応募者に通知されました。
 今期利用期間のビームタイムの合計は94日間で1本あたり282シフトですが、JASRIが留保する「マシン調整や緊急課題充当分」の20%を除いて、共用ビームライン1本当たり225シフトとなります。最も採択率の低かったのはやはりBL39XUの49%で、続いてBL02B2(58%)、BL09XU(68%)となっています。分野ごと、ビームラインごとの詳しいデータは利用業務部からの報告をご覧いただきたいと思います。


特定利用課題の募集と審査

 特定利用研究制度は、ビームタイムを集中的計画的に利用することによって顕著な成果が期待される課題に対して、最大3年の利用期間を与えることを目的に2000B期からスタートした制度で、2000B(瀬戸、田村、早川課題)で3件、2001A(高田課題)と2001B(菅課題)でそれぞれ1件ずつの採択になっています。今回も10月11日に応募を締め切った時点で3件の応募課題がありまして、10月中旬の一次書類審査、10月31日の二次面接審査の結果、「高分解能磁気コンプトン散乱測定による巨大磁気抵抗物質の電子および軌道状態の研究」(小泉課題)が、実験遂行方法に対する条件付きながら採択されました。このような特定利用は共用ビームラインを優先的に使用することから、実施担当グループの責任は重く、ビームタイムの最大効率を考えながら実施していただかねばなりません。最初の3件の課題に対しては、12月末に実験責任者から中間評価用書類を提出していただき、審査を13年度中に行う予定で、所期の計画が達成されているかどうか厳しい審査を経て継続の可否を決めることになっています。


その他

(1)産業利用課題の推進


 SPring-8の産業利用を目的にした一般課題申請件数は毎回少しずつ増加していますが、今回、企業側が申請者となる課題は応募37件、採択26件とこれも過去最大となっています。加えて、大学ないしは施設側が申請者になるものが応募19件、採択17件となり、先の件数と合わせて産業利用課題は相当数に上っています。また、産業利用専用の共用ビームライン(BL19B2)が建設されたことに呼応して、このビームラインを利用する研究課題のうち、平成13年度内(平成14年第2、3サイクル)利用を対象に課題の追加募集を行い12月18日に締め切られました。これらの課題は産業利用分科会で審査されますが、このビームラインを利用する課題申請数が今後増加すると思われます。この現象は施設側での組織、体制が整ってきたことの表われとみられ、充実感が増しつつあります。


(2)少数バンチモード運転に伴うビームタイム配分

 少数バンチモードによるリングの運転で特殊モードでのビームを利用したいとする要求がここにきて増えつつあります。この特殊モードでのリング運転は他のユーザーにも多かれ少なかれ影響があるだけに、課題採択やビームタイム配分には特別の配慮が必要です。特に共鳴散乱・非弾性散乱分野(D3分科会関連)や分光分野(S1分科会関連)で該当課題が多く、今後の動向によっては、この少数バンチモード運転をどう効率よく運用するか大きな検討事項になっています。


(3)分野ごとに特徴ある課題選定

 課題選定委員会では、諮問委員会の命を受けて各分野主査と施設側委員とからなるワーキンググループを構成し、生命科学(L)、散乱・回折(D)、XAFS(X)、分光(S)、実験技術・方法(M)の各大分科ごとに、それぞれの分野の特徴を勘案しつつ、今後どのような基準で課題募集や審査を行うかを検討していただきました。今までに3回の検討会ならびに各分科委員の間での意見交換を通してある程度意見がまとまってきましたので、これを平成14年2月の諮問委員会に報告することになっています。書式も含めて応募する分野ごとに、今後は審査の方式が変わることもあり得ます。


(4)医学利用研究課題

 上記の分科の特徴を生かした課題審査のあり方にも関連しますが、現在、医学利用課題は「生命科学分科会」の中に医学関係委員1名を含んで審査しています。医学利用棟が完成して以来、相当期間の時間経過もあることから、人への適用を視野に入れた本格的な成果創出が急がれています。医学利用は専門分野が特殊であることもあって、生命科学分科会の中で医学関連委員を増やせばすむのかどうかも含めて、今後とも施設側、利用者側の双方で検討していただきたいと思います。


(5)審査方法の厳格化

 申請課題の審査は、一般課題、特定課題とも書面による一次審査と委員会(分科会)での二次審査、施設側からのビームライン担当者のコメント、安全審査等々、厳密な審査を経て選定採択されています。選定委員会では分科会ごとの審査基準にできるだけ共通性を持たせ、かつ審査のより一層の公平性を確保するための努力をしているつもりです。それでも申請者、とくに不採択になった申請者から、選定委員の力量を疑問視するかのコメントに接することもあります。このような意見は時として審査方法の改善策につながることもあることから、委員会としては真摯に受け止める必要があります。今後も積極的なご意見をお寄せ下さるようお願いする次第です。



松井 純爾 MATSUI Junji
姫路工業大学 理学部 物質科学科 教授
〒678-1297 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-2-1
TEL:0791-58-0233 FAX:0791-58-0236
e-mail:matsui@sci.himeji-tech.ac.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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