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Volume 06, No.6 Pages 459 - 461

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第5回SPring-8シンポジウムに参加して
The impression of 5th SPring-8 Symposium 2001

森本 幸生 MORIMOTO Yukio

姫路工業大学 理学部 Faculty of Science, Himeji Institute of Technology

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 2001年10月9、10日の2日間にわたって第5回SPring-8シンポジウムが普及棟において開催された。21世紀最初のシンポジウムということもあり、第3世代放射光の本格的な利用モードでのシンポジウムである。例年のように最初施設側からの報告があり、以下、蓄積リング・光源の現状、機器開発・分光器・検出器、新設ビームライン、ビームライン立ち上げ報告とつづいた。2日目は研究課題報告、最近のトピックス、締めくくりに各種委員報告となって散会した。以下に当日の簡単なプログラムを記し、それぞれ印象深かった事柄などを述べて報告としたい。

10月9日  
 
9時30分より、施設報告
第5回SPring-8シンポジウム開催にあたって (利用懇会長 坂田氏)
所長挨拶    (JASRI・放射光研究所所長 吉良氏)
施設報告    (JASRI・放射光研究所副所長 菊田氏)
ビームライン整備の状況と共同研究 (JASRI・部門長 壽榮松氏)
高度利用研究開発の概要 (JASRI・放射光研究所副所長 菊田氏)
SPring-8における産業界利用への取り組み (JASRI・GL 小宮氏) 
 
11時より、蓄積リング・光源の現状
加速器の現状    (JASRI・部門長 熊谷氏)
挿入光源の現状    (JASRI・GL 北村氏)
光学輸送チャンネルの現状    (JASRI・GL 石川氏) 
 
13時10分より、機器開発・分光器・検出器
X線変調分光法の高度化−kHzオーダーの円偏光スイッチングと蛍光X線電離箱の高速化− (JASRI 鈴木氏)
軟X線ビームライン光学系の現状    (JASRI 大橋氏)
タンパク質構造解析の迅速化    (理研 山本氏)
液体窒素分光器の現状    (JASRI 望月氏) 
 
14時50分より、新設ビームライン報告
BL13XU    (JASRI 坂田氏)
産業利用ビームラインBL19B2の現状 (JASRI 岡島氏)
中尺アンジュレータビームライン20XU(医学及びイメージング)の現状    (JASRI 鈴木氏) 
 
15時50分より、ビームライン立ち上げ報告
BL19LXU    (JASRI 矢橋氏)
BL29XUL    (理研 玉作氏)
BL35XU    (JASRI Baron氏) 
 
16時50分より、利用者懇談会総会 
 
18時より、懇親会

10月10日  
 
9時より、特定利用研究課題の進展状況
超臨界金属流体の静的・動的構造の解明 (京大院工 田村氏)
核共鳴非弾性散乱による元素およびサイトを特定した局所振動状態密度の研究およびその測定法の開発 (京大原子炉 瀬戸氏)
硬X線マイクロビームを用いる顕微分光法の開発 (広大院工 早川氏)
高圧下における実験的精密構造物性研究手法の開発 (名大 高田氏) 
 
10時30分より、トピックスサイエンス
原子配列の3D観察    (奈良先端大 大門氏)
高エネルギー放射光粉末回折による精密構造物性の研究    (名大 高田氏)
細菌べん毛素繊維の結晶構造とスイッチ機構 (ERATO,松下電器 難波氏) 
 
11時50分より、ポスターセッション 
 
13時30分より、各種委員報告
課題選定委員会報告    (姫工大理 松井氏)
ビームライン検討委員会報告    (東大 雨宮氏)
安全管理室報告    (JASRI・安全管理室長 多田氏)
利用者懇談会報告
質疑応答
閉会の辞    (JASRI・部門長 植木氏) 
 
 
 
シンポジウム会場 
 
 シンポジウム開催の挨拶の後、今年度より所長を務める吉良氏によるSPring-8施設としての状況、役割などについての紹介があり、予算的には苦しい中、新しいサイエンスを展開するために苦心されている様子などが伺えた。その後、壽榮松氏、菊田氏によりそのような中でのビームライン整備の状況やそれらを用いた共同研究、またビームラインの高度利用研究およびそれらに付随する機器類開発の現状などが報告された。ユーザー側としては、施設のご苦労を身近に感じつつも新しい事を模索している様子に力強いものを感じた。外部資金導入、ファイナンシャルサポートと言う意味ではその次の産業界利用との取り組み、という点が大きなポイントを占めることであろうと感じられた。コーヒーブレークの後、加速器部門からビーム安定性、長寿命化、ビーム電流増加などについての説明があり、次に挿入光源の現状と新しい挿入光源の仕様などについて説明があった。また光学系輸送、ミラー光学系、結晶冷却などなど、おそらくユーザー側からの最も無理難題が要求される部分について詳細な報告および説明が行われた。
 昼食の後、それぞれのユーザーに少し近い話題として機器開発、個別ビームラインの紹介があった。X線変調分光法の高度化を目指して高速に円偏光を切り替える装置など興味深い話題であった。個人的には、円偏光性を全く用いないユーザーであるため、どうすればうまく円偏光性を利用した解析ができるか、など少し考えさせられる話題であった。
 タンパク質構造解析の迅速化、という演題で最近特に生命科学の分野で話題になっているポストゲノムサイエンスとしてのハイスループットタンパク質解析について、その目的に特化した理研ビームライン建設とその周辺技術の開発についての紹介があった。タンパク質構造解析は波長可変性とタンパク質工学を駆使して、もはや、あるいは究極には人の手を借りずに構造解析が完了する時代に突入している事を実感させられる講演であった。アンジュレータを用いたビームラインでは大半が問題になるであろう分光器冷却について液体窒素を用いた方法の紹介があった。分光器内あるいはステージの振動などにより長尺ビームラインでは若干考慮が必要である旨、詳細なテストの結果とともに報告された。
 次にBL13XU,19B2,20XUの新設ビームラインの報告とBL19LXU,29XUL、35XUの立ち上げ報告があった。この中では中尺アンジュレータBL20XUの医学・イメージングビームラインと25mアンジュレータを使った19LXU、1kmビームラインの29XULがSPring-8らしく、おそらく施設の性能を最大限引き出したようなビームラインであると思われ、専門外の者にとっても興味深い話題であった。
 この日最後のセッションは利用者懇談会総会であり、議長に東大雨宮氏が選出された。出席者が100名近くで総会が成立している旨説明があり、議事進行が行われた。吉良所長よりJASRIとして共同利用を少し後退させても、内部スタッフのサイエンスの増進あるいはビームライン担当の負担を軽減するような方策を講じる必要のある旨説明があった。その後各種行事幹事より報告があり、サブグループのホームページを充実すること、本年12月のワークショップの応募が2件あったこと、利用懇会員はいずれかのSGへ登録すること、会計報告、会則の変更などについて話があった。この後は場所をSPring-8食堂に移し懇親会が開かれた。
 2日目は朝から主にユーザーのサイエンスに基づいたプログラムが組まれていた。最初のセッションはJASRIが設定した特定利用課題による研究の進捗状況や報告があり、超臨界金属流体の静的、動的構造解明についての発表があった。X線回折、小角散乱、非弾性散乱法を用いた解析の詳細が報告された。次に局所振動状態密度の研究に関してアバランシェフォトダイオード検出器の開発についての発表があった。また顕微分光法の最新の成果発表があり、高圧下での精密構造物性研究の発表があった。これはいづれもSPring-8の高輝度、平行性を存分に用いた研究であった。休憩の後最近の研究の話題として、原子配列の3D観察、粉末回折による精密構造、細菌べん毛の結晶構造と、立体構造解析あるいは観察といった、自然科学者が必ず夢見る物質の構造を見る、という事に主眼がおかれた興味深い発表があった。これらはいづれも回折という物理現象を用いた可視化であるの対し、次の心筋内微小血管のダイナミクス解析は、光の性質を充分に生かした撮像であり、直接対象物を見ている、と言う点で非常にリアリティーがあった。 
 
 
 
施設者側報告 
 
 2日目昼食を挟んでポスターセッションがあった。ここでそれぞれの詳細は省くが、共用、専用、原研、理研ビームラインのそれぞれ現状報告と高度利用技術研究開発に関しての活発な論議が行われた。お昼ご飯の後のオープンセッションなので気軽に話に加わってあちこちで多くの談笑する参加者が見られた。昼からのセッションは各委員報告ではまず、課題選定委員会から課題件数は年々増加していること、それに伴って選定の基準を、シフト充足率、挑戦的、平和目的に重点をおいた選定を行ったこと、生命科学分野で留保タイムを30%設けたことなどが報告された。また産業利用も増加していることも報告されたが、申請代表者が大学あるいはJASRIであることが多いことから、積極的に産業界が代表になって利用して欲しい旨、説明があった。次にビームライン検討委員会から報告があり、新規ビームライン提案の予算的な背景からの制約などの説明があり、今までの積み残し4〜5件に加えて、新規提案11件(うち既存BL改造計画6件)と合わせて、再度新規ビームライン建設計画を行うことの説明があった。最後に安全管理室から核物質(ウランなど)の持ち込みについての規定変更の説明があった。またフィルムバッチの置き忘れが少なからずあり、時には実験ハッチ内に忘れる(あるいは胸からはずれて落とす)などの事故(?)に留意するよう要請があった。
 シンポジウム全体の感想としては、2日間のスケジュールでは盛りだくさんで、少しタイムテーブル的にはきつかったような印象があるが、本格的な利用フェーズに入った現在、少なくとも年1回の施設、ユーザーの交流会としては、多少仕方のないことかも知れない。仮に年2回に分けて行って、参加者が減少する危惧を考えれば、やはり年1回で、少々タイトスケジュールでもいいのではないかとの思いも持った。今後もより一層の発展を期待し感想文としたい。 
 
 
 
質疑応答



森本 幸生 MORIMOTO  Yukio
姫路工業大学 理学部
〒678-1297 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-2-1
TEL・FAX:0791-58-0178
e-mail:morimoto@sci.himeji-tech.ac.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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