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Volume 06, No.6 Pages 426 - 428

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

SPring-8における出版物の全般的な見直し
Review of Publication Systems in SPring-8

菊田 惺志 KIKUTA Seishi

(財)高輝度光科学研究センター 理事 放射光研究所副所長、図書編集専門委員会委員長 JASRI, Deputy Director/Chairperson of Publication Committee

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 SPring-8が発信する情報は多岐にわたるが、利用者に対して的確な情報を遅滞なく提供することは、放射光利用の広範な研究分野で最大の成果を得るために必須であり、またSPring-8の活動を一般の方に広く理解してもらうことも重要である。このような観点からSPring-8では、利用者向けや一般向けに各種の出版物を刊行しており、各々の出版目的に添って、役割を効果的に果たしている。しかし、供用開始後4年が過ぎて、それらの中には、内容・体裁などを変更したり、それに伴い相互に内容を調整した方がよいものや、新たに出版すべきものなどもでてきた。このような検討作業を進めるために、従来の図書委員会の規程が先頃改訂された。それによると、図書委員会のもとに図書編集専門委員会と図書整備専門委員会が設けられ、前者では財団における出版に関する運営全体についての点検および調整を行い、後者では財団における図書の収集基準ならびに閲覧・貸出しなどの整備について検討することとなった。これに基づいて図書編集専門委員会が組織され、7月以来、出版物の全般的な見直し作業と発刊体制整備の検討が進められ、このたび結論が得られたので、ここにご報告する。


1.SPring-8年次活動報告書

<SPring-8年報>
 SPring-8における1年間の各部門、各部の活動状況は「SPring-8 Annual Report」として英文で1994年から出版され、SPring-8の全体的な活動を内外に広く紹介するのに役立ってきた。これを2000年版からは「SPring-8年報」として和文で出版することに変更した。これは、Annual Reportのようなかなり詳細なSPring-8の活動報告の提供は海外で必ずしも必要度が高くなく、また、国内では和文の方が各方面への情報提供に便利であるのは言うまでもないことによる。
 SPring-8年報に掲載されるのは、全体概要、施設の現状と進展(加速器、ビームライン、共通技術、安全管理、施設管理)、実験ステーションの現状と進展(共用、原研、理研、専用各ビームライン)、施設が実施する研究活動(共同研究、高度利用技術研究開発、所長ファンド、国際協力研究)、産業利用、研究会と国際会議、委員会活動、組織、発表論文リスト、利用者実験課題リストなどである。


2.研究報告書

<SPring-8 Experiment Report>
 SPring-8利用研究で成果非専有課題の場合、利用者は課題の終了後60日以内に研究成果をJASRIに報告することになっている。それを年2回の利用期間毎にまとめて「SPring-8 Experiment Report」が刊行されている。これは従来どおりに続けられる。このSPring-8 Experiment Reportにより各ビームラインでどのような実験が展開されているかを知ることができ、また新規利用者にとって計画立案に役立つと思われる。
 なお、利用者には学術雑誌などへの研究成果の積極的な発表が期待され、JASRIにその報告と別刷りの送付が求められている。これは、JASRIが利用研究の状況を正確に把握しておくために、徹底される必要がある。

<SPring-8 Research Frontiers>
 放射光利用の研究成果のうち顕著なものを編集委員会が各研究分野の専門家の推薦をもとに選び、供用開始から1年ごとにまとめて「SPring-8 Research Frontiers」として1997/1998年版から最新号の1999/2000年版まで出版されている。
 これまで、研究成果は利用研究課題選定委員会における分科会の生命科学、散乱・回折、XAFS、分光などの分類に従って掲載されてきたが、2000/2001年版からは生命科学、物質科学、化学、地球科学、環境科学、産業利用、装置技術と実験手法などの研究分野に区分することとした。これにより放射光利用研究が広範な科学技術領域の発展にどのように貢献しているのかが一層理解しやすくなると思われる。また、従来どおり加速器、ビームラインと検出器のR&Dの成果を掲載する。さらに、Annual Reportを和文のSPring-8年報に変更するのに伴い、SPring-8年報の中の全体概要などの項から海外向けに必要と思われる部分をResearch FrontiersのFacility Statusの項に掲載することとする。

<SPring-8 Report Series A, B, C, D>
 これは新たに設けられる出版物である。「Report Series A」は、インハウス・スタッフによる研究あるいは外部機関研究者との共同研究の科学的・技術的成果の中で、学術雑誌に載せるのにはマッチしないが、公表する価値のあるものを速報性を重視してWeb上に公開し、半年あるいは1年毎に冊子としてまとめて刊行する。英文で記述し、定期刊行物として参照できる形式を整える。投稿された論文の査読や掲載の可否の決定などは編集委員会によって行われる。
 「Report Series B,CとD」は、SPring-8で随時個別に刊行される冊子をつぎのような種別に分け、番号付けをするものである。Report Series Bの種別はコンファレンス、シンポジウム、ワークショップなどのプロシーディングスや各種の研究会報告書、Report Series Cは講習会、研修会などのテキスト、Report Series Dは調査報告書、評価報告書などである。このように整理し、入手しやすくして、研究活動に役立てる。


3.利用者向け情報冊子

<SPring-8利用者情報>
 本誌については、1996年から年6回刊行されている。SPring-8利用者情報はSPring-8利用研究に関わる多くの情報を利用者に提供し、利用者が施設側と情報を共有するとともに、研究計画立案や実験準備をするのに役立てるものである。この情報誌は内容が豊富で充実しており、十分に活用されているので、この体裁で継続される。

<SPring-8 Beamline Handbook>
 SPring-8のすべてのビームラインについて放射光利用実験に必要な仕様と性能をまとめたもので、利用者が研究課題の申請や実験計画の立案をするのに活用される。
 今後は測定系の記述も充実させる。ホームページにも載せているが、内容を随時更新し、隔年に冊子としてまとめられる。

<SPring-8ユーザーガイド>
 国内外の研究者がSPring-8を円滑に利用できるように、利用する際に必要な情報を盛り込んだ手引き書で、共用施設用と専用施設用がある。
 英文のユーザーガイドでは共用施設用はすでに刊行されており、専用施設用は発刊が予定されている。ユーザーガイドもホームページに載せているが、内容を随時更新し、隔年に冊子としてまとめられる。


4.一般向け広報小冊子

<SPring-8ニュース>
 一般向けに放射光利用の研究活動の普及・啓蒙に資するために、広報用小冊子として「SPring-8ニュース―ひかりの丘から」が平成11年から刊行されている。これには施設の状況や研究成果についてのよくまとまった分かり易い解説記事が掲載されてきた。
 今後、その体裁を変えてニュース性のある記事も多く掲載し、年6回の発行を予定している。その内容は、一般の方を対象に毎号にSPring-8で得られたトピックス的な研究成果などをごく平易に紹介したり、注目する分野の科学・技術の発展を分かりやすく解説する記事を掲載する。それとともにSPring-8の動きを速報する。それには主要な委員会、研究集会(シンポジウム、ワークショップなど)や各種行事の開催予告、およびそれらの実施報告、人事異動の紹介、職員募集などのアナウンス、来訪者のリストなどが含まれる。従来のスタイルのものの第7号が最終号としてもうすぐ刊行され、来年1月からは新しい体裁の「SPring-8ニュース」が創刊される予定である。

<SPring-8パンフレット>
 SPring-8の概要、活動状況、研究成果などを見学者を含む一般の方に広く知ってもらうため平易に記述されたパンフレットを作成している。英文のパンフレットは対象が主として専門家であることから和文のものより若干詳細な記述が含まれている。

<JASRIパンフレット>
 JASRIの概要、活動状況、役割などを一般の方に理解してもらうための要覧である。


5.電子出版

<SPring-8ホームページ>
 SPring-8ホームページは一般の方への広報活動、利用者向けの情報提供とインハウス・スタッフ向けの業務に関わる情報の提供などの役割を持っている。この電子媒体はSPring-8の情報発信の手段としてその利便性と速報性の点で印刷媒体を凌駕しつつあるので、その運用の仕方はきわめて重要である。
 SPring-8ホームページには上記の出版物のうち、SPring-8 Annual Report、SPring-8 Experiment Report、SPring-8 Research Frontiers, SPring-8利用者情報、SPring-8 Beamline HandbookとSPring-8ユーザーガイドが掲載されている。つまり、ほとんどが電子出版されている。また、利用研究課題選定委員会、ビームライン検討委員会などからのアナウンスメント、蓄積リングの運転スケジュール、シンポジウム・ワークショップ、講習会・研修会などの開催予定、施設一般公開などの行事予定のような主要な情報を伝えるとともに、トピックス的な研究成果の紹介なども行われている。SPring-8利用者懇談会の項も設けられている。
 このようにホームページの運用は軌道に乗っているが、今後、編集委員会においてホームページ利用者の声を反映させるとともに、多岐にわたる情報源の担当者からの情報の流れを再確認し、電子出版運用の一層の円滑化を図る。


 上記の出版物のうち1〜3の業務は利用業務部が担当し、4と5の業務は広報部が担当する。編集委員会のもとで運用が図られるのは、SPring-8年報、SPring-8 Research Frontiers、SPring-8 Report Series A、SPring-8利用者情報、SPring-8ニュースとSPring-8ホームページである。
 図書編集専門委員会ではSPring-8における出版物の全般的な見直しを行ったが、それぞれの出版物が今後とも充分にその役割を果たしていけるように、各種の出版物に寄稿される多くの方々と編集・出版に携わるスタッフの方々にご協力をお願いいたします。



菊田 惺志 KIKUTA Seishi
(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 副所長
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0454 FAX:0791-58-0878
e-mail:kikuta@spring8.or.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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