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Volume 06, No.5 Pages 321 - 335

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

第8回(2001B)利用研究課題の採択について
The Proposals Accepted for Beamtimes in the 8th Public Use Term 2001B

(財) 高輝度光科学研究センター 利用業務部 JASRI Users Office

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 高輝度光科学研究センター(JASRI)では、利用研究課題選定委員会による利用研究課題選定の結果を受け、以下のように第8回共同利用期間における利用研究課題を採択した。


1.募集及び選定日程

(募集案内)

4月5日   利用研究課題の公募についてプレス発表及びSPring-8ホームページに掲示

(一般課題)

5月26日   一般課題募集締切り

     (郵送の場合、当日消印有効)

6月19、20日  分科会による課題審査

(特定利用課題)

5月10日    特定利用課題募集締切り

5月14~21日  特定利用分科会による書類審査

5月29日    特定利用分科会による面接審査

(一般課題及び特定利用について課題選定及び通知)

7月6日     利用研究課題選定委員会による課題選定

7月16日    機構として採択し、応募者に結果を通知


2.選定結果

 今回の公募では619件の課題応募があり、これまでの最高となった。ここ数年、1年の前半の共同利用期間(A期)では応募が少なく、反対に後半(B期)では大幅に増加する傾向が続いていた。今回も同様の傾向となっている。連続する2回の公募状況を足し合わせたのが次の表である。応募数及び採択数ともに順調に増加している。

                  応募課題数 採択課題数

第7回+第8回(平成13年2月~14年2月)  1,121    866

第5回+第6回(平成12年2月~13年1月)  1,006    606

第3回+第4回(平成10年11月~12年1月)  823    504


 今回の応募では成果専有利用の応募が4件あり、また特定利用への応募が4件あった。第1回から今回の公募までの、分野別、所属機関別、ビームライン別の応募数及び採択数を表1に示す。また、関連するデータを図1から図3に示す。




図1 各公募時における応募課題数と採択課題数




図2 SPring-8利用研究課題



図3 ビームラインごとの採択状況



 今回の採択結果は、件数では応募619件に対し457件(採択率74%)、シフト数では応募7,166に対し採択3,853(採択率54%)であった。また、採択された課題の平均シフト数は8.4であった。利用研究課題選定委員会では、採択された課題の要求シフト数と配分シフト数の比(シフト充足率)を出来るだけ大きくするような方針のもと選定審査が行われている。今回、平均のシフト充足率は74%であり、前回の87%より減少したが、これは前回が応募が少なかったために採択率もシフト充足率も高かったためであり、前回を除いて、これまでの公募で一番高いシフト充足率となった。

 採択課題数の多かったビームラインは、BL40B2(構造生物学Ⅱ)及びBL41XU(構造生物学Ⅰ)の38件(1課題あたり4.2シフト及び3.1シフト)、BL20B2(医学イメージングⅠ)(同5.9シフト)及びBL02B2(粉末結晶構造解析)(同5.9シフト)の32件であった。これらのビームラインでは当然ながら1課題あたりの配分シフト数は少ない。ビームラインごとの採択率が低かったのはBL02B1(結晶構造解析)の41%であり、以下BL39XU(磁性材料)49%、BL09XU(核共鳴散乱)55%と続く。シフト充足率は、前述のように今回の審査では前回よりも低下した。その中でもシフト充足率の低かったビームラインは、BL20B2(医学イメージングⅠ)の49%、BL02B2(粉末結晶構造解析)54%、等である。

 研究分野別の採択課題数は、生命科学、散乱・回折、分光、XAFS、実験技術・方法の順であった。また、採択課題の実験責任者の所属機関別では、国立大学が全体の半分以上を占めていることはこれまでの共同利用を通じて変わっていない。

 特定利用(通常課題の実施有効期限が6ヶ月であるのに対し、3年以内の長期にわたって計画的にSPring-8を利用することによって顕著な成果を期待できる利用)では、今回の公募で4件の応募があり、そのうちから1件が採択された。審査は外部の専門家を含む特定利用分科会での書類審査、及び面接審査の2段階で行われた。採択された課題については概要を後述する。

 成果専有利用として4件の応募があった。この課題についてJASRI責任者による公共性・倫理性の審査と技術的実施可能性及び実験の安全性の審査が行われた。この内の1件が通常課題と同時の申請であり、利用の詳細が不明であるという理由で不採択となった。


3.利用期間

 年間の前期と後期の共同利用の利用時間に長短のアンバランスが通常以上に大きくなることを緩和するためこれまでと同様に、今期では来年の第1サイクルを加えることとした。このため、今回募集した第8回(2001B)共同利用の利用期間は2001年第7サイクルから2002年第1サイクルまで(平成13年9月から平成14年2月まで)となり、この間の放射光利用時間は237シフト(1シフトは8時間)となった。このうち共同利用に供されるビームタイムは共用ビームライン1本あたり190シフトとなる。


4.利用対象ビームライン及びシフト数

 今回の募集で対象としたビームラインは、共用ビームライン22本(R&Dビームライン3本を含む)とその他のビームライン5本(原研ビームライン3本及び理研ビームライン2本)であった。今回の募集から新たに加わった共用ビームラインは、BL20XU(医学イメージングⅡ)及びBL35XU(高分解能非弾性散乱)である。さらに、課題審査時においてBL13XU(表面界面構造解析)ビームラインの一部が利用可能となったことから、BL09XU(核共鳴散乱)の希望のあった散乱/回折分野の応募課題の一部について審査の結果、BL13XU(表面界面構造解析)においてビームタイムを配分した。

 今回、第8回共同利用期間のビームタイムは合計で79日237シフトであり、共用ビームライン1本あたりではビームラインの調整や緊急課題用などにJASRIが留保する20%を除く190シフトがユーザータイムとなる。ユーザーが利用可能なビームタイムは、これにR&Dビームラインの30%のビームタイム及び原研・理研から提供されるビームタイムを加えて合計約4,050シフトとなった。

 今回の採択では、BL20XU(医学イメージングⅡ)及びBL35XU(高分解能非弾性散乱)において実験装置の立ち上げ課題を優先して選定されたことや、これまでと同様に、生命科学分科における蛋白質結晶の出来具合のチェックや実験条件のチェックに使用する分科会留保シフトをBL41XU(構造生物学Ⅰ)及びBL40B2(構造生物学Ⅱ)で設けたことなどから、共同利用期間に利用されるビームタイムは約3,900シフトとなった。


5.生命科学分野におけるビームタイムの留保

 生命科学分野におけるSPring-8の利用では、特に実験試料の特殊性から、短い時間でもいいから試料の出来具合をチェック出来るような利用をしたい、試料が出来たときに緊急に利用したいと言った要望が強い。このような要望に応えて、これまでBL41XU(構造生物学Ⅰ)及びBL40B2(構造生物学Ⅱ)のビームタイムを留保し、緊急課題に準じた取扱いで利用を行った。留保シフトの供するビームタイムはBL41XU(構造生物学Ⅰ)で30シフト、BL40B2(構造生物学Ⅱ)で29シフトとなった。この留保シフトの取扱いについては、前回同様緊急課題に準ずる扱いにすることとするとともに、各サイクルに均等に割り振り、申請を受け付けることとした。申請の際には実験の必要性がわかるようにしていただき、それを分科会において審査されることとなった。詳しくは、本誌339ページのお知らせを参照されたい。


6.課題選定審査における留意点

(1)課題選定では、1課題に十分な実験時間を確保するために、選定された課題の要求シフトに対する配分シフトの比率(シフト充足率)を確保することにつとめた。また、前回の諮問委員会で決定された平和目的の確保、挑戦的な課題の確保を念頭に置いた審査を行った。

(2)特定利用制度が始まり、今期で1年半を迎える。そのため、2000Bから開始した3課題について中間評価を行う必要がある。その実施方法や提出書類などについて課題審査と合わせて検討し、平成14年2月に中間評価を実施するべくその要領を取りまとめた。

(3)今回の課題選定では、従来の5研究分野を次の10小分科に細分した。また、今回から新設された産業利用分科会においては、今回募集をせず、産業利用ビームラインの運用について検討を進めた。

 L1:生体高分子結晶構造解析

 L2:小角散乱

 D1:結晶構造、構造物性

 D2:高温・高圧構造物性、地球惑星科学

 D3:共鳴散乱、非弾性散乱

 X :XAFS

 S1:軟X線・赤外吸収物性

 S2:蛍光X線、XMCD

 M :実験技術、材料創製

 I :産業利用

 この分科会分類に従って、次回からの課題申請書に希望分野を記入する書式に変更することとした。


7.産業界の利用

 今回の公募で、民間からは31件の応募があり、21件が採択された。前回が応募30件で採択27件であったことと比較して、今回は民間からの課題の採択数及び採択率が大きく低下した。ここ数年の傾向である暦年の後半の利用期間に応募が増えることと対応して、全体の応募数は前回に比べて大幅に増加した。これは大学におけるテーマ設定が4月以降に行われるため、その直後の公募時に応募が増えるものと考えている。そのことから、今回大学からの申請は増えているが、その他は大きな変化は無かったと見るべきである。従って民間からの課題提案も全体の応募の増加によって応募数全体に対する割合を下げているが、応募自体は変化していないと考えられる。

 しかしながら、全体の応募が増加したことにより競争率が上がったことで、採択率は低下した。今回の民間からの申請は他の機関からの申請に比べて競争力が低かったことを反映しているものと見られる。JASRIの行っている利用支援の今後の課題の一つと考えられる。

 表1の応募及び採択課題の所属機関分類は実験責任者の所属で分類している。そのため、表1には、実験責任者が大学またはJASRIの職員などであるが、共同実験者に民間の研究者が加わっている共同研究課題については表れていない。今回の公募では、このような共同研究課題として17件の応募があり、そのうち16件が採択された。前回第7回では同様の課題が7件採択されたのみで、今回大幅に増加した。共同研究の大幅の増加はJASRIの産業利用支援の効果が表れたものと考えられる。昨年からJASRIに整備された利用拡大のためのコーディネータが支援を行った課題が16課題の内6課題になっている。


表1 利用研究課題 公募内訳





表2 第8回課題公募時に採択された産業利用課題





 また、このような産学・産官共同研究を含めた産業利用課題については、利用するビームラインによって多少がある。表2には、民間からの提案、産学等の共同研究のビームライン別課題数を示している。すなわち、産業利用課題は今回の全採択課題の8%であるが、BL01B1(XAFS)ビームラインの利用では、全採択課題29のうち7課題で24%を占めている。BL02B1(結晶構造解析)では15%、BL02B2(粉末結晶構造解析)では13%等となっている。これに対して、BL04B1(高温構造物性)、BL10XU(高圧構造物性)、BL25SU(軟X線光化学)などでは産業界からの利用は行われていない。


8.特定利用課題の選定

 2000B共同利用から開始したSPring-8特定利用については、今回は1件の課題が選定された。今回採択された課題は、平成13年9月から3年以内の期限で実施していただくものである。今回選定された研究課題の概要を以下に示す。


課題番号:2001B0009-LS-np

課 題 名:高分解能軟X線励起による高温超伝導物質および関連物質のバルク敏感角度分解光電子分光:光電子分光による高温超伝導体バルク電子状態研究のブレークスルーを目指して

実験責任者:菅滋正(大阪大学大学院基礎工学研究科)

利用するビームライン:BL25SU

3年間の要求シフト数:300シフト

2001Bの要求シフト数:50シフト(配分36シフト)

研究概要:

 物質の占有電子状態を調べる手段として登場した光電子分光は、エネルギー分解能の向上とともにその重要性をますます高めてきた。その中でも電子帯の分散を研究する手段として角度分解光電子分光は電子エネルギー分析器の性能向上に伴ってめざましい発展を示した。これは強相関系の電子物性研究にとって強力な武器となっているが、一つ盲点がある。それが表面敏感性である。これまでの一般的理解とは違い、申請者らの研究では強相関系でも3d遷移金属系においても、これまで報告されてきた角度分解光電子スペクトルは多くの場合必ずしもバルク電子状態を代表していないことが示されている。

 本研究の特色は、広い視点で言えば強相関系物質について世界で初めてバルク敏感な角度電子分解光電子分光を、高いエネルギー分解能で、体系的に行うことである。この手法によれば深刻な表面の問題からも行列要素の問題からもほぼ解放されてバルク電子状態を議論できる。本研究の目的は、強相関系の中でももっとも注目され、多くの光電子研究が行われてきたホールドープの高温超伝導体に加えて電子ドープの高温超伝導体および関連物質について、本手法によりバルク電子状態の測定を行うことで多くの未解決の問題を解決することである。

 本研究により高温超伝導体のフェルミオロジーや偽ギャップ、ストライプ秩序相の影響など電子相関に関連して未解決の諸問題に対して、バルク電子状態の立場からあいまいさの残らない解決を与えられることが期待される。


課題選定委員会での審査結果

 本提案は、電子分光の分野で科学的重要性が認められるので、特定利用研究課題として妥当と考えられる。しかし、以下の諸点に留意して研究の遂行に当たられたい。

1.研究組織の強化、特に電子分光測定装置の立ち上げ・測定に関わる研究者の組織強化が不可欠である。すなわち、当該グループの主力全メンバーを挙げて本計画に専念されたい。

2.試料の制作装置に関わる技術的問題点の整理、打開策の策定に当たっては、施設側関係者との綿密な協議を図られたい。

(1)装置の製造設計方針

(2)装置の改造・調整等作業の分担と日程



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794