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Volume 06, No.4 Pages 295 - 297

6. 談話室・ユーザー便り/OPEN HOUSE・A LETTER FROM SPring-8 USERS

利用者懇談会からII
From the President of the SPring-8 Users Society II

坂田 誠 SAKATA Makoto

SPring-8利用者懇談会 会長 名古屋大学大学院 工学研究科 Graduate School of Engineering, Nagoya University

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 私とSPring-8およびSPring-8利用者懇談会とのお付き合いは、それぞれの前身である「共同チーム」あるいは「次世代大型X線光源」の頃からの15年近くになります。ほとんど、一番古くからのお付き合いと言って良いのではないかと思っております。その意味では、SPring-8とは浅からぬ因縁と個人的には思って来ました。もともとの地声の大きさと、このような長いお付き合いのせいか、本年4月よりSPring-8利用者懇談会の会長の重職を引き継ぐ事になりました。松井前会長、菊田前々会長によって順調に発展を遂げてきたSPring-8利用者懇談会を、私のようなそそっかしい人間が引き受けて良いものかと言う思いは有りましたが、これまでお世話になった幾分かでも恩返しになればと思い、引き受けました。これを機会に、最近のSPring-8利用者懇談会の動向と私の個人的なSPring-8に対する思いを書いてみたいと思います。
 SPring-8利用者懇談会の動向に関しては、松井前会長が本誌に、これまでのSPring-8利用者懇談会の活動ならびにその当時のSPring-8利用者懇談会の状況を書かれているので、その後の動きを中心に書いてみたいと思います。まだ、幾らも時間が経っていないのですが、色々と変化もありましたので、それについて書きます。松井前会長の記事も、是非、お読み下さい。
 まず、第1は、会長交代に伴い幹事が代わりました。新幹事の名前は、利用者懇談会のホームページを見て下さい(http://www.spring8.or.jp/ JAPANESE/user_info/riyou/;SPring-8のホームページの「利用者・研究者のページ」からリンクされています)。SPring-8利用者懇談会に関して、ご意見のある方は、会長若しくは幹事に是非お知らせ下さい。今回の交代は任期満了に伴うもので、基本的なSPring-8利用者懇談会の活動は、引き続き継承して行きたいと思っております。もちろん、ビームラインの建設状況、財政状況などSPring-8あるいはSPring-8利用者懇談会を取り巻く環境は、どんどん変わって行くので、それには十分対処したいと思っております。新幹事は、私も含めて総勢13名で、1300名を超えるユーザーグループの舵取りをさせて頂くことになりました。(SPring-8利用者懇談会の会員数は、2001年4月10日現在、1338名です。)SPring-8利用者懇談会と言うのは、SPring-8が無ければ成り立たないわけで、施設側ならびに他の多くの方々のご支援をお願いしたいと思っております。
 既に、新幹事は、拡大世話人会の開催、SPring-8シンポジウムの企画、ビームライン・サブグループ(BL-SG)活動およびSPring-8利用研究会(研究会)活動における財政支援のガイドラインの作成など多岐にわたる活動を開始しております。BL-SGおよび研究会に関しては後述します。ここに例に挙げたSPring-8シンポジウムは、ご承知のように毎年1回開催される、施設側の最新の情報ならびに利用研究の情報が集まる大変重要な会合になっておりますが、シンポジウムにおける研究発表だけでなく、企画・運営も含めてSPring-8利用者懇談会は積極的な協力体制を取っております。今後、JASRIと共催で毎年開催している「SPring-8利用技術に関するワークショップ」などにも積極的に関わって行くつもりです。
 第2に述べたい事は、SG体制の見直し作業の完了と新SG(ビームライン・サブグループの省略形としてBL-SGと呼ぶことにする。)ならびにSPring-8利用研究会(単に、「研究会」と呼ぶ事もある。)の発足です。この様な新体制への移行は、松井前会長の下で行われたものですが、現在は既に新体制下でSPring-8利用者懇談会が運営されています。この結果、SPring-8利用者懇談会は、25 BL-SG、11研究会体制となりました。この見直し作業は、SPring-8利用者懇談会にとっては、非常に大きな意義のあることであったと思っています。再申請にともない旧SGの整理・統合が行われ、活動的なBL-SG、研究会として再生する事ができました。また、この機会に世話人の世代交代が多くのBL-SGで行われ、実情に合った体制になったものと思っています。これまで、事務局とSGとの連絡が、世話人頼みだったので、例えば、世話人が長期出張などの時には、SGとの連絡が全く取れませんでした。その反省の下に、再申請に際して副世話人も指名してもらいましたので、今後、事務局とのコミュニケーションも向上していくものと期待しています。SG体制の見直し作業の完了により、言わば“新生SPring-8利用者懇談会”として、今後、大いに活動を展開して行きたいと思っています。
 ご存知のように、今回新しい試みとして、SPring-8ユーザーの新しい集まりとして「研究会」が発足しました。これで、SPring-8利用者懇談会の活動が活発になるだろうと言う期待の反面、「研究会」に対しては不安も相当あります。不安の中身は「研究会」活動が、活発になりすぎて財政的に破綻するのではないかと言う不安と、あまり「研究会」が開かれなくて活動が盛り上がらないのではないかと言う両極の不安です。正に、良い方向に展開するようにすることが、知恵の絞りどころでしょう。取りあえずは、積極路線で行けるところまで行きたいと思っています。知恵の一つとして、今年から「SPring-8利用技術に関するワークショップ」は、「研究会」あるいはBL-SGからの公募性にしたいと思っております。これまで、上記ワークショップは行事幹事が中心になって企画しておりましたが、企画案を広く募り、「研究会」の活動の一環として、「SPring-8利用技術に関するワークショップ」を開催したいと思っています。この件は、具体案が決まり次第お知らせするので、活発な応募を期待しております。
 BL-SGおよび研究会の発足にともない、世話人・副世話人の方々とのコミュニケーションをはかるために、5月31日(木)および6月1日(金)の両日にわたって、拡大世話人会を開催しました。この機会を利用して、施設側からも実験ステーション整備計画などについての有益な情報提供がなされ、SPring-8利用者懇談会としてだけでなく施設側にとっても有益な会合になったものと自負しています。出席されていない方々に、どのような会合であったかを少しでも理解していただくために、拡大世話人会のプログラムを表1に載せました。時間の関係で、全てのBL-SG、研究会の活動状況を聞くことは出来ませんでしたが、引き続きSPring-8シンポジウムでは各BL-SGなどの活動状況が報告されて行く事と思います。 
 
表1 拡大世話人会プログラム
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5月31日(木)
挨拶       所長
挨拶および主旨説明       利用懇会長
施設の現状報告       植木龍夫
SG見直しの経過と今後のBL-SGと研究会のありかたについて       利用幹事
各幹事報告       各幹事
休憩
実験ステーション整備計画について       寿榮松宏仁
課題選定委員会について       利用業務部
ビームライン検討委員会報告       下村 理
今後のビームライン建設予定地について       石川哲也
総合討論
懇親会:萌光館(SPring-8内敷地。原研棟隣り。)

6月1日(金)
新しいBL-SG、研究会組織の概要     利用幹事代理
研究会・BL-SG紹介;
超高圧科学研究会、小角散乱研究会、
構造物性研究会、理論研究会、
原子分光研究会
休憩
内角励起ダイナミクスの最前線研究会、
ランダム系物質高エネルギーX線回折研究会、
表面界面構造BL-SG、X線発光解析BL-SG、
コヒーレント軟X線BL-SG 
 
 最近、SPring-8でも評価の事が話題になってきています。SPring-8のような大きな研究機関では、今後の発展のためには、評価は益々重要な事項になって行くことは間違いありません。SPring-8利用者懇談会としても、それぞれのビームラインがどのように評価されていくのか、重大な関心事です。SPring-8利用者懇談会の目的が、SPring-8における会員の研究活動を進展させることにあるわけで、研究評価に関しては種々の形で施設側と協力して行きたいと思っております。この文章を書いている時に、“宇宙開発など13特殊法人 政府支出を削減”と言う新聞記事[1]が飛びこんできました。その記事によると、“政府は”日本原子力研究所、理化学研究所を含む“調査・研究開発型の13特殊法人への財政支出を削減する方針を固め”、“同時に研究成果を客観的に把握するため、外部機関による評価も導入し、効率化を促す”、とのことです。これまで以上に研究成果が問われる、厳しい時代が到来しつつある様に感じます。SPring-8利用者懇談会としても、この厳しい時代を生き抜くために、一層の奮闘が要請されています。
 以上が、最近のSPring-8利用者懇談会の動向を私なりに書いたものです。最後に、私の個人的な感想を少し書かせてもらいます。最近、知った言葉で、マリーシアと言う言葉がある。「日本のサッカーには、マリーシアがない。」と言われているようです。サッカーで得点するためには、色々な創意工夫が要求されます。発想が良くても、技術が伴わなければ、相手にボールを取られるだけです。正面突破で駄目なら、サイドパス。それで駄目なら、バックパス。3人で守れなければ、5人で守る。何しろ点を取ろうと言う気持ちが、マリーシアを生むのでしょう。SPring-8のような大きな研究機関で、研究成果を上げるのにも、マリーシアが必要なのかも知れません。SPring-8と言う巨大なスタジアムでどんどんゴールシーンを見たいものです。その為に、SPring-8利用者懇談会も大いに役に立ちたいと思っています。

参考文献
[1]日本経済新聞6月18日朝刊1面


坂田 誠 SAKATA  Makoto
名古屋大学大学院 工学研究科 応用物理専攻
〒464-8603 名古屋市千種区不老町
TEL:052-789-4453 FAX:052-789-3724
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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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