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Volume 06, No.4 Pages 280 - 282

3. その他のビームライン/OTHER BEAMLINES

原研ビームライン(BL11XU)の現状
Present Status of JAERI Beamline III “BL11XU” for Materials Science

塩飽 秀啓 SHIWAKU Hideaki、片山 芳則 KATAYAMA Yoshinori、高橋 正光 TAKAHASI Masamitsu、稲見 俊哉 INAMI Toshiya

日本原子力研究所 関西研究所 放射光科学研究センター Synchrotron Radiation Research Center, JAERI Kansai Research Establishment

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1. はじめに
 BL11XUは、材料科学研究用硬X線アンジュレータビームラインとして、1996年に基幹チャンネルの製作が開始され、1998年冬にビームラインが完成した[1〜2][1]塩飽、三井、他:SPring-8利用者情報 Vol.3,No.6(1998)29.
[2]小西、塩飽、他:SPring-8利用者情報 Vol.4,No.5(1999)4.
。原研では、先に製作した重元素化学研究用軟X線アンジュレータビームラインBL23SU[3][3]横谷、関口、他:SPring-8利用者情報 Vol.2,No.1(1997)30.、材料科学研究用偏向電磁石硬X線ビームラインBL14B1[2,4〜5][2]小西、塩飽、他:SPring-8利用者情報 Vol.4,No.5(1999)4.
[4]小西、内海、他:SPring-8利用者情報 Vol.2,No.4(1997)20.
[5]小西:SPring-8利用者情報 Vol.3,No.3(1998)13.
、そして現在建設中でありRI使用可能な量子構造物性研究用硬X線アンジュレータビームラインBL22XU[6][6]小西、塩飽、他:SPring-8利用者情報 Vol.6,No.3(2001)198.と共に、目的に応じてビームラインを使い分け、研究・開発を展開していく計画である。
 BL11XUは一つの光学ハッチと3つの実験ハッチから成り、3つの実験ハッチをタンデムに配置している。BL11XUでは、非弾性核共鳴散乱法による物性研究、高温高圧下の物質構造解析、X線非弾性散乱法による強相関電子系の研究、表面X線回折計を用いたMBE結晶成長中その場観察等が主研究テーマである。


2. BL11XU現在の状況
 上記研究を遂行するために、実験ハッチ1には高分解能分光器、核共鳴散乱実験装置、各種検出器、およびマルチアンビル型高圧プレス(Fig.1)、実験ハッチ2にはX線非弾性散乱用回折計(Fig.2)、湾曲アナライザ、後置分光器、ミラー(Fig.3)、8T超伝導マグネット装置、実験ハッチ3には表面X線回折計(Fig.4)、MBE真空装置、分子線モニター、RHEEDなどを整備している。1999年より開始したビームラインの立ち上げ終了後、順次各実験装置の立ち上げを順調に行っており、今年夏までに各装置の立ち上げ調整と予備実験は終息しつつある。一部利用実験を開始し、共同利用実験の受け入れも行っている。
 既刊本誌において、核共鳴散乱実験装置に関しては既に報告済みである。今回はダイヤモンド結晶と高温高圧装置を中心に報告する。




Fig.1 A snapshot of the cubic-type multi-anvil press, "SMAP180" in the experimental hatch 1.




Fig.2 A snapshot of the Rowland X-ray spectrometer for inelastic X-ray scattering in the experimental hatch 2.




Fig.3 A snapshot of the focusing mirror system above the Rowland X-ray spectrometer.




Fig.4 A snapshot of the X-ray diffractometer with the MBE chamber system in the experimental hutch 3.



2−1 ダイヤモンド分光結晶
 SPring-8アンジュレータビームラインにて通常使用されている、ピンポスト傾斜回転型シリコン結晶を、当初分光素子として使用していたが、結晶での発散角のより小さいダイヤモンド結晶に変更した。使用したダイヤモンドは、合成された人工ダイヤモンドで、ほぼ透明に近い六角形である。第一結晶には8.6mm×3.5mm×0.3mm、第二結晶には10mm×4.7mm×0.4mmの大きさの結晶を、ブラッグ配置で使用している[7][7]M. Marushita, et al.:印刷中。回折に寄与しない放射光は、薄いダイヤモンドを透過するので、ブラッグ配置用ダイヤモンド結晶専用ホルダーを作製し、間接冷却にて除熱している。結晶冷却を間接冷却としているので、循環用冷却水や冷却水循環装置フィルターはほとんど汚染されることが無い。また、冷却水流量を抑えることができ、配管による振動も実験に支障を与えることが無くなり、ほぼメンテナンスフリーで運用されている。ただ、ダイヤモンド結晶はシリコンほど完全結晶ではないため、放射光のあたる場所によっては回折強度が下がることもあるので、その都度分光器を調整して対応している。


2−2 高温高圧実験装置
 アンジュレータ放射光を用いた高温高圧実験のために、キュービック型マルチアンビルプレス、SMAP180(Fig.1)をBL14B1からBL11XU実験ハッチ1に移設した。利用できる圧力・温度範囲は、それぞれ15GPaと1500K程度である。この装置を用いて2種類の実験を行っている。一つは角度分散型X線回折実験(ADX)であり、もう一つは、密度測定である。マルチアンビルプレスを用いたX線回折実験では、試料を包む物質からの回折や散乱を除去するために、シャープなコリメータが必要である。この場合、測定効率の高いエネルギー分散型X線回折法(EDX)がこれまで主に使われてきた。しかし、EDXでは、正確な回折強度を得るために様々な補正が必要である。この補正を正確に行うことは難しく、測定結果に不確定さが残る。より正確な測定にはADXが適している。しかし、コリメータが一つである場合、測定に非常に時間がかかり、EDXに比べ例えば100倍程度の測定時間が必要となるという問題が生じる。アンジュレータからの高輝度単色X線を利用すれば、測定時間を大幅に短縮することができ、この方法が実用的になる。また、放射状に並んだたくさんのコリメータを組み合わせた放射型コリメータを開発し、さらに測定時間を短くすることに成功した[8][8]K. Yaoita, et al.:Rev. Sci. Instrum. 68(1997)2106.。このコリメータを調整する方法もここ1年の間で確立し、満足すべき結果が得られている[9][9]服部、他:第41回高圧討論会要旨集 3(2000)B05.。また、液体の密度を高温高圧下で効率良く測定する方法はこれまでなかったが、最近X線吸収法を用いて測定する方法を開発してきた[10][10]Y. Katayama, et al.:J. Synchrotron Rad., 5(1998)1023.。この方法は、小さく絞った高輝度単色X線を用い、サファイアリングに入れた直径1mm程度の小さな試料の吸収プロファイルを測定するものである。これまでの実験によって、液体の構造変化を議論するのに十分な精度の測定ができることが示された[11][11]片山、他:第41回高圧討論会要旨集 3(2000)D06.


3. 将来計画
 BL11XUではミラーを設置する計画を進めている。エネルギー6keV〜30keVの基本波を使用する場合の、高調波除去と水平方向の集光が目的である。設置場所は、光学ハッチ内四象限スリット後方の汎用実験スペース(Fig.5、発光点よりおよそ43m〜45m地点)である。この汎用実験スペースは、ビームライン建設当初から将来利用を考慮して設けている。この場所には、集光または高調波成分を除去するための全反射ミラー、比較的低エネルギーX線を利用するために、ベリリウム窓を取り除いた場合にフロントエンド側の超高真空を保護するための差動排気装置、挿入光源から出てくる放射光のダイレクト観測、あるいは観測するための検出器等を設置する目的で、分光器を挟んで上下流に、それぞれ2mの汎用実験スペースを確保している。今回はその下流部分にミラーを設置する予定である。
 いわゆる横振りミラーを2枚設置する。溶融石英を母材とし、広範囲なエネルギー領域をカバーするために、反射面を上下に分割し、それぞれPtコーティングおよびRhコーティングを行い、上下方向並進機構により選択する。ミラーおよびミラー駆動機構は、今後詳細検討、製作を行い、来年秋以降には利用を開始したい。


4. おわりに
 当初予定していた実験装置は、着実に整備・調整を行っており、各実験装置を用いた研究成果が報告され始めている。各研究の成果についての詳細は、装置担当者の論文、報告書などを参照されたい。




参考文献
[1]塩飽、三井、他:SPring-8利用者情報 Vol.3,No.6(1998)29.
[2]小西、塩飽、他:SPring-8利用者情報 Vol.4,No.5(1999)4.
[3]横谷、関口、他:SPring-8利用者情報 Vol.2,No.1(1997)30.
[4]小西、内海、他:SPring-8利用者情報 Vol.2,No.4(1997)20.
[5]小西:SPring-8利用者情報 Vol.3,No.3(1998)13.
[6]小西、塩飽、他:SPring-8利用者情報 Vol.6,No.3(2001)198.
[7]M. Marushita, et al.:印刷中
[8]K. Yaoita, et al.:Rev. Sci. Instrum. 68(1997)2106.
[9]服部、他:第41回高圧討論会要旨集 3(2000)B05.
[10]Y. Katayama, et al.:J. Synchrotron Rad., 5(1998)1023.
[11]片山、他:第41回高圧討論会要旨集 3(2000)D06.




塩飽 秀啓 SHIWAKU Hideaki
日本原子力研究所 関西研究所 放射光科学研究センター
〒679-5148 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-2615 FAX:0791-58-2740
e-mail:shiwaku@spring8.or.jp


片山 芳則 KATAYAMA Yoshinori
日本原子力研究所 関西研究所 放射光科学研究センター
〒679-5148 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-2624 FAX:0791-58-2740
e-mail:katayama@spring8.or.jp


高橋 正光 TAKAHASI Masamitsu
日本原子力研究所 関西研究所 放射光科学研究センター
〒679-5148 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-2639 FAX:0791-58-2740
e-mail:mtaka@spring8.or.jp


稲見 俊哉 INAMI Toshiya
日本原子力研究所 関西研究所 放射光科学研究センター
〒679-5148 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-2643 FAX:0791-58-2740
e-mail:inami@spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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