Volume 06, No.2 Page 135

6. 談話室・ユーザー便り/OPEN HOUSE・A LETTER FROM SPring-8 USERS

新サブグループ「X線発光解析」の紹介
Introduction of the New Subgroup “X-ray Emission Spectroscopy”

七尾 進 NANAO Susumu

東京大学 生産技術研究所 Institute of Industrial Science, University of Tokyo

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 物質中の電子がX線によって中間状態に励起された後に生じる2次光学過程から放出されるX線のエネルギースペクトルからは、各電子の基底状態と励起状態に関する直接的な情報はもちろん、バンド構造、結合状態、電子系の動的構造因子、二体分布等の有用な情報が元素選択的に得られます。このような非弾性散乱X線のスペクトロスコピーがX線発光解析(XES)です。
 XESは、バルク試料はもちろん薄膜、液体、気体試料の使用が可能、超高真空が不要という利点がある上に、中間状態や発光過程に関するより多くの情報を含んでおり、XAS、XPS、EELSなどの1次光学スペクトロスコピーでは得られない情報の取得を可能にします。ラマン散乱領域においては、非弾性散乱したX線の二階微分散乱断面積を測定することによって、散乱体物質の電子系の動的構造因子を求めることが可能であり、物質内電子および原子配列の挙動や応答の詳細な知見を得ることができます。すなわち、X線発光解析は物質の新しい研究手段としての大きなポテンシャルを備えているわけです。
 「X線発光解析SG」は、本年1月のSPring-8利用者懇談会運営委員会で設立が認められ、その活動をスタートさせることになりました。本SGの結成は、平成11年度のビームライン検討委員会において、「平成12年度以降に特に早期に整備する必要のあるビームライン」(SPring-8利用者情報 Vol.5 No.3(2000)215参照)の一つとして答申が出された「X線発光解析ビームライン」の建設を実現することを目的としております。
 本ビームラインの主な特徴は、非弾性散乱、ラマン散乱、蛍光など様々なタイプの発光過程の解析が可能で、かつ、多様な実験オプション(偏光・磁場・高低温、高圧)を備えていること、さらに、約1eVの分解能で分光されたX線としては世界一の強度を有することであります。具体的には2種類のマルチオプションスペクトロメーターがX線発光解析に必要とされる主要な機能を網羅することになります。発光解析ビームライン完成後は、X線2次光学過程の物理やそれを利用した物質研究を幅広く行えるようにデザインされたX線発光過程・総合解析ビームラインとして広く共用に供される予定です。
 SGはビームライン建設を具体化すべく、とりあえず大学や研究所など11グループが中心となって発足いたしましたが、完成後には本ビームラインを利用した幅広い分野の研究が可能となりますので、そのサイエンスを先取りするためにも、X線2次光学過程に関する研究の開かれた交流の場として多くの方々の参加を求めています。


七尾 進 NANAO  Susumu
東京大学 生産技術研究所
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TEL:03-3401-3324 FAX:03-3401-3358
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SPring-8/SACLA INFORMATION

ISSN 1341-9668 EISSN 2187-4794