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Volume 06, No.2 Pages 125 - 126

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第14回日本放射光学会年会・放射光科学 合同シンポジウムの報告(その3)
Report of the Joint Symposium on the 14th Annual Meeting of Japan Synchrotron Radiation Society and Synchrotron Radiation Science (Part-3)

鈴木 朝雄 SUZUKI Asao

仁木工芸㈱ 輸入部 放射線計測機器グループ Niki Glass Co, Ltd. Tokyo Office Group Leader for Nuclear Science

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 私に編集委員である水木さんより執筆依頼が来たときなにを書けば良いのやら正直困惑した。私を知る多くの人は、たぶん<吉本のネタ本でも書くんかい>的なのりだろうと安易に想像出来る。私としても学術誌に載せるわけである、そうそうもめったな事を書くわけにはいかない。たとえば<商社の裏側>なる暴露文を書くなら多少の文字配列は出来るだろうが、それを載せるとなると明日からの生活に困る事確実であろう。
 さてさて前置きはこのくらいにして本題に移ろう。
 21世紀の幕が上がり、早々に<第14回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム>が広島大学にて開催された。何度かこの地を訪れたことがあるがこの地の印象は、<広大な土地と新鮮な空気>である。ま、知らない人でもこの言葉でどういう所か想像がつくであろうか。日本一の敷地面積と言うが、思うに、良くこれだけの敷地を開発したものだと言う印象が強いところである。
 このシンポジウムは年々アクティブになり年を追うごとに参加人数も増え賛助会員も60社、企業展示に至ってはなんと41社に達した。経済が低迷する昨今、本学会が企業にとり非常に魅力的なものとなってきている事を物語るにふさわしいデータであろう。
 さて、今をさかのぼること10余年前本学会の会員数は300名足らず、賛助会員も10数社、企業展示に至ってはせいぜい4から5社が参加すると言った淋しいものであったような記憶がある。それが10年足らずで会員数も1100人を越え企業の参加は先に記載した結果となっている。まさに今はやりの学会であることは言うまでもない事実であろう。分野的に見ても物理・化学はもとより生物・生化学・医学・半導体工学等と、ありとあらゆる分野が混載とした状況である。これは第三世代放射光が測定ソースとしてより確実に裾野を広げてきている証であろうか。
 さて企業側はどうであったか、学会の多様化をよそに企業展示といえば毎回同じ顔ぶれである、もう少し今までにはない分野、たとえば生化学関係や化学・生物関連の展示があってもおかしくはないであろうと思う。これら関連の企業は放射光=物理・工学機器メーカーのお付き合いと判断してしまい営業活動に関し低い評価を印象づけているかに他ならないのではないか。我々も含め主催者ももう少し多様化した対応に企業枠を広げる必要があるのではないだろうか。少々反省をし先に繋げたいものである。
 また、今回は主催者側の好意により展示場内にコーヒーブレークを取れるスペースを作っていただいた、これにより人の流れは展示ブースへと流れこみ多くの人に企業展示を見ていただけたのは大いに喜ばしいことであったろう。
 さて、今回は雪にたたられ、寒い思いをした方々が多かったと思うが、楽しみを満悦された方もいたであろう。
 東広島と言えば酒処、瀬戸内の今が旬の牡蠣との組み合わせは絶品である。今時期の広島の牡蠣は豊満な味わい、生で食べて良し・炊いても・焼いても、その風味は言うまでもない。したがって澄んだ味わいの淡麗酒が美味い。
 東広島、特に西条は水と米に恵まれた酒処である、広島の軟水と良種の酒米である山田錦や雄町米をふんだんに使った吟醸酒で広島の牡蠣を食べる、どんな境遇にいてもここに来て良かったと思う瞬間があったのではと想像する。<酒は百薬の長とは良く言ったものである。>
 話しは少々それるが、冬の味覚の話しをするとなんと言っても私はアンコウをあげたい。これは私の故郷の魚であるから他ならないが、この魚で育ったせいかやはり冬は地のアンコウである。そして、アンコウ料理を食べるならなんと言っても平潟港である。常磐線を北上すると福島の県境に北茨城市がある、野口雨情の故郷であり、岡倉天心の六角堂がある五浦海岸で有名なところである。この町の北東に位置する関東最北端の漁港それが平潟港である。近年底引き網で底浚いをしてしまうせいかアンコウの水上げは極端に少なくなった。アンコウは冬時期深海から産卵のため浅瀬に上がってくる、従って完全な季節魚であるがため今は乱獲がたたり高価なものとなってしまった。私が子供のころはそれこそ、そこかしこでアンコウをさばき、炊いたものである。
 東京に出がけの頃アンコウなべを食べて苦い思いをしたことがある。水炊きなのである、それをポン酢で食べるのである、こんな食べかたしたらアンコウがかわいそうと思ったほど東京で食したアンコウ鍋は美味くなかったのである。
 一般で良く知られるアンコウ料理はアン肝であろうか、海のフォアグラといわれるほどその味は濃い。しかしなんと言ってもアンコウを食するならアンコウ鍋である。肝和えの味噌仕立てである。肝を軽く焼き臭みを取り味噌と混ぜすり鉢にかける。出し汁をたし徐々にのばしたスープでアンコウの身を炊く、香ばしい肝と味噌の風味が淡白なアンコウの身を味わいぶかいものに仕上げる、これがアンコウ鍋の標準的な作り方である。日本酒にはもってこいの鍋である。機会があったなら是非お試しあれ。
 さて、かなり大きく脱線してしまった話しを元に戻そう。
 旧来、加速器と言うと物理分野だけの学問であったような気がする、それが現在に至っては、先に触れたように、物理・化学はおろか、生物・生理学・医学・考古学と種種・多分野にわたる。そしてなによりも若い研究者の方が多く、活躍が目立つ、今、活性な時期だけにいろいろ考え深いことはあろうがとにかく前向きに進んでもらいたい。
 さて、学会もスタートして15年、まだまだ育ち盛りではあるがその若さを活かしアクティブにそして前進・新鋭的な更なる飛躍を期待したい。
 時は変わり、ある年の11月、自宅で酒を飲み眠い目をこする。ふと気がつくとテレビにテロップが流れXXXX氏、XXX・XXX学賞受賞、酒で濁った赤い目をこすりもう一度覗く。あれ〜。電話に手を伸ばし何回かの呼び出し音。<あ、もしもし、嫌味な電話をしました。…あっはっはー>
そんな日が来るのを期待して。


鈴木 朝雄 SUZUKI  Asao
仁木工芸㈱輸入部・放射線計測機器グループ
〒108-0073 東京都港区三田3-9-7
TEL:03-3456-4700 FAX:03-3456-3423
e-mail:asachan@nikiglass.com



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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