Volume 06, No.2 Pages 113 - 115

3. その他のビームライン/OTHER BEAMLINES

挿入光源の現状
Status of SPring-8 Insertion Devices

田中 隆次 TANAKA Takashi

理化学研究所 播磨研究所 RIKEN  Harima Institute

Abstract
The number of IDs installed in the storage ring as of January 2001 is 23, which corresponds to about two thirds of the number of straight sections available for IDs. Most of the ID beamlines adopt IDs called standard in-vacuum undulators with the periodic length of 32 mm, which can supply hard x rays between 5 and 80 keV using up to the 5th harmonic. As for other beamlines, very exotic devices such as helical, figure-8 or revolver undulators are adopted to provide special polarization states, very high flux, or very wide energy range. In this report, the status of IDs is presented including recent topics concerning the ID construction at SPring-8.
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1.はじめに
 SPring-8の一般供用開始から早くも3年半近く経過し、2001年1月の時点で、既に36本のビームラインが稼動/建設/計画されている。全ビームライン数が62本(途中で建設が決まった赤外ビームラインを含む)であるため、6割程度が埋まった計算となる。このうち、挿入光源ビームラインは23本であり、全挿入光源ビームライン数が38であるため、やはり6割程度が埋まった計算となる。
 Table 1(次頁)は現在までに建設が終了し、蓄積リングに設置された挿入光源とその種類について示している。これらのうちのほとんどが周期長32mmの標準型真空封止アンジュレータとよばれるものであり、5次光までを用いることによりエネルギー範囲5〜80keVの高輝度光を供給する。この他のビームラインではヘリカル、8の字、あるいはリボルバーといった特殊なアンジュレータを採用することにより、可変偏光、高フラックス、広エネルギー範囲といった要求に応えている。 
 
Table 1  Insertion devices already installed in the SPring-8 storage ring. 
 
 
 
 本稿ではこれらの挿入光源の現状について報告し、加えて挿入光源開発に関する最近の話題について触れることとする。

2.挿入光源開発の推移
 Fig.1は、冬期(1月)及び夏期(8月)シャットダウン時における、挿入光源の設置数の増加について示したものである。初期の段階ではほぼ7台/年の割合で増加しているが、最近は3台/年に落ち着いてきている。ただ、この中にはBL19XU用25m挿入光源(5台分に相当)も含まれているので建設のペースが落ちているとはいえないかもしれない。 
 
 
 
Fig.1  Number of IDs installed in the storage ring vs date. 
 
3.新型挿入光源の建設
 著者が本誌(SPring-8利用者情報)に同タイトルで執筆(1998.11)してから2年以上経過したが、この間に標準型以外の特殊な挿入光源がBL15XUおよびBL40XUに設置された。ここで簡単にそれらについて紹介する。
3-1.  真空封止ヘリカルアンジュレータ(BL40XU)
 BL40XU用挿入光源は真空封止ヘリカルアンジュレータと呼ばれるもので、その名のとおり、ヘリカルアンジュレータの磁気回路が真空チャンバ内に設置されたものである。よく知られているとおり、ヘリカルアンジュレータ放射の特徴は円偏光が得られるということ、並びに、軸上では1次光しか観測されないということであるが、それ以外に、得られるフラックスが通常型アンジュレータよりも高いという利点がある。しかしながら、周期長が短いヘリカルアンジュレータの場合、十分な強度の垂直磁場が得られないという問題点があった。これを解決するために真空封止型を採用したものが、本アンジュレータである。1999年の夏のシャットダウンに設置され、大きな問題なく運転されている。
3-2.  リボルバーアンジュレータ(BL15XU)
 このアンジュレータは、回転可能な磁石支持機構に数種類の周期長の異なる磁石列を配置し、必要なエネルギー範囲に応じて磁石列を切り替えることにより極めて広いエネルギー範囲の光を得るためのものである。BL15XUに設置されたリボルバーアンジュレータは周期長44mmのリニアアンジュレータ、および周期長92mmのヘリカルアンジュレータの2種類の磁石列から成る。前者が硬X線、後者が軟X線領域をカバーする。ヘリカルアンジュレータを採用したのは、円偏光が必要であるためではなく、熱負荷を軽減するためである。これはSPring-8において軟X線挿入光源を建設する際に最も重要な事柄である。

4.最近の話題
 挿入光源開発に関する最近の話題としては、25m挿入光源の建設/設置、およびBL25SUにおける円偏光高速切り替えのためのキッカ—マグネットの設置があげられる。
4-1.  25m挿入光源の建設(BL19XU)
 2000年夏に、30m長直線部における磁石の再配置が行われ、27m長の挿入光源の設置が可能になるのにあわせて、X線ビームライン用の長尺アンジュレータの建設が1999年12月から開始された。このアンジュレータは全体の長さとしては27mであるが、磁石列の長さとしては約25mである。5mを1つのセグメントとして5つのセグメントに分割され、各々のセグメントが通常の真空封止アンジュレータと同じ構造をしている。真空封止型であるため、磁石が装置全長にわたってつながっており、完全に分割してしまった場合に生ずる位相整合の問題(各セグメントから発生する光の位相を同期させて、5m×5ではなく25m×1の挿入光源にすること)を克服している。各セグメントについて磁場調整を行った後、接続部について磁場測定を行い、全体として理想的な挿入光源に近づけるための調整を行った。2000年夏のシャットダウンに蓄積リング内に設置され(Fig.2)、ベーキング、真空立ち上げを経て、同年10月よりコミッショニングを行った。運転時の問題点、光源特性の評価など、この挿入光源については報告することが多数あるが、紙面の都合上、割愛する。 
 
 
 
Fig.2  Photograph of the 25-m long in-vacuum undulator installed in the ring. 
 
4-2.  キッカーマグネットの設置(BL25SU)
 2000/2001年冬期シャットダウン時に円偏光の高速切り替え用のキッカーマグネットが設置された。これは5つのキッカーマグネットにより電子軌道にシケインを作り、そのシケインの方向を反転させることにより軸上において左右円偏光を高速に切り替えるためのものである。第2サイクルからキッカーマグネットの調整(COD補正など)を行う予定である。

5.まとめ
 以上、挿入光源の現状について簡単に報告した。ここで取り上げたものは、「挿入光源開発の現状」であって、既存の挿入光源についての報告ではない。そのため、ユーザにとって有益な情報はあまり無いかもしれない。既存の挿入光源に関する情報や磁場データなどはSPring-8のホームページで閲覧できるので参照されたい。アドレスは以下のとおりである。
http : //www.spring8.or.jp/JAPANESE/facility/bl /insertion/index.html

 本稿は、SPring-8挿入光源グループの、清家隆光(JASRI)、Xavier Mare´chal(JASRI)、原 徹(理研)、備前輝彦(JASRI)、北村英男(理研)の各諸氏を代表して著者が執筆しました。



田中 隆次 TANAKA  Takashi
理化学研究所・播磨研究所
〒679-5148 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-2809 FAX:0791-58-2810
e-mail:ztanaka@spring8.or.jp



SPring-8/SACLA INFORMATION

ISSN 1341-9668 EISSN 2187-4794