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Volume 06, No.2 Page 93

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

−特定利用分科会−
– On the SPring-8 Long Term Use –

村田 隆紀 MURATA Takatoshi

京都教育大学 教育学部(利用研究課題選定委員会 主査) Department of Physics, Kyoto University of Education

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 今期の委員会は、利用研究課題の中に新しい制度を創設しました。特定利用制度がそれですが、これについては、利用者情報誌のVol. 5, No. 2(2000年3月)に経過と内容、選定作業の方法、委員会の構成、課題審査、利用期間、ビームタイムの配分、中間・事後評価などについて詳しい報告をいたしました。また、2000Bと2001A期に課題募集を行って、すでに合計4件の課題が選定されて、実験が行われています。今年のSPring-8シンポジウムでは、これらの課題の進捗状況と成果についての報告が行われる予定になっています。

 2000Bと2001A期の特定利用の課題選定についての報告も、利用者情報誌の中のそれぞれの期の課題審査報告の中で簡単に触れています。一般課題の場合は、権利保護の観点から課題名の公表は実験終了後にしか行われませんが、特定利用課題の場合は課題名や選定理由も公表されています。これについても利用者情報誌に掲載されています。

 ここで審査基準をもう一度確認しておくことは、今後申請を考えておられる研究者の方々の参考になる事と思いますので、再掲載をします。
この制度における利用研究課題(以下、特定課題とする)の審査は、これまでの6ヶ月を有効期限とする共同利用の選定基準に加えて、
(1)長期の研究目標、研究計画が明確に定められていること
(2)SPring-8を長期的、計画的に利用することによって、
  1)科学技術分野において傑出した成果が得られること、
  2)新しい研究領域及び研究手法を開拓できること、
  3)産業基盤技術を著しく向上させること、
を考慮して行われます。


 特に、(1)に記された「長期の研究目的や計画が明確に定められていること」は審査基準の根幹であり、単にいろいろな試料を取り替えつつ長期間のビームタイムを占有したい、という事でないことは当然です。更に、SPring-8を使わなければできない研究課題であることが明確に示されていることも必要です。また、使用を希望するビームラインの担当者との事前の打ち合わせも十分に行う必要があります。ビームタイムの配分はその期のユーザータイム全体の20%が上限として決められています。仮に200シフトのビームタイムがあるとすると、40シフト(約13日間)となるわけですが、これだけのビームタイムの中で試料セットから一連の測定を行うことが、必ずしも十分とは言えない実験もあり得ると考えられます。その意味で、与えられたビームタイムを効率的に使うためには、ビームライン担当者の 理解やサポートが必要になるのは当然でしょう。


 審査は2段階で行われますが、制度としては第1段階の書類審査を通った課題が第2段階の面接審査に残ることになっています。しかしこれまで2回の審査では、すべての課題について面接を行いました。その際には当然の事ながら、研究内容が審査委員に良く理解できるような提示がされていること、SPring-8を使う必然性が明確に示されていること、説得力のある研究計画が示されることなどが重要なポイントになります。

 この制度の枠組みは今後変更される可能性もありますが、まずは現行の枠組みの中で続々と優れた成果が生まれてくる、という状況になることが必要です。それらの成果が呼び水となって、さらなる新しい研究分野が生まれることも期待できます。今後もたくさんの優れた研究課題の応募があることを期待しています。



村田 隆紀 MURATA Takatoshi
京都教育大学 物理学教室
〒612-8522 京都市伏見区深草藤森町1
TEL:075-644-8256 FAX:075-645-1734
e-mail:murata@kyokyo-u.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794