Volume 06, No.2 Pages 82 - 83

所長室から
From the Director’s Office

上坪 宏道 KAMITSUBO Hiromichi

(財)高輝度光科学研究センター 副理事長、放射光研究所長 JASRI Vice President, Director of JASRI Research Sector



 新しい世紀を迎えて、我が国における科学技術の有りようが大きく変わろうとしている。最近発表された第2期科学技術基本計画(基本計画)では、わが国の将来像を、知的存在感のある国、国際競争力のある国、安全で安心感のある国とした上で、平成13年度から17年度までの5年間に総額24兆円の研究開発投資が必要と述べている。それと同時に、このような多額の税金を有効に利用し、創造的な成果を得るためには、研究開発システムの大幅な改革が必要であると指摘し、具体的には、競争的な研究開発環境の整備、任期制の広範な普及、評価制度の拡充などをあげている。また研究開発の成果を国民に還元するため、重点施策として産学官連携の仕組みの改革と社会とのチャネルの構築を指摘している。
 基本計画の下でSPring-8の果たすべき役割はきわめて大きい。世界最先端の放射光施設として、基礎科学における創造的、先端的研究に重点を置くだけでなく、産業基盤技術の研究開発を推進することが求められている。
 なお、SPring-8の運営や研究成果をわかりやすく一般に伝えることも必要になっている。幸い、SPring-8利用者情報誌は、利用者に必要な情報を提供するだけでなく、SPring-8と産業界の連携を強化し、あるいは社会とのチャネルを構築するのに有効な媒体である。今後、幅広い情報を豊富に分かりやすい形で伝えるようにしなければならない。

研究所の新体制と産業利用支援

 これまでたびたび述べてきたように、平成13年度からSPring-8は本格的な利用段階に移行する。既に加速器の性能は計画仕様を超えており、当初第2期と想定していた蓄積リングの長直線部も実現した。ビームライン総数も47本が予算化されていて、SPring-8は建設段階を終え完成したと言って良い。なお、共同利用ビームラインは予定数30本には達していないが、ビームライン検討委員会から推薦されているビームラインは、これまでの研究成果を踏まえた新しい計画という面があり、必ずしも当初計画の積み残しとはいえない。今後はSPring-8による研究のさらなる発展を目指すという見地から、新ビームラインの建設を提案していくのが良いのではないかと考えている。
 平成13年度にSPring-8が本格的な利用段階に移行するのに合わせて、JASRI放射光研究所の組織を変えることになった。その骨子は、施設管理部門を除く既存の4部門を再編成し、各部門は複数のグループ(G)で、また各グループは複数のチームで構成される。加速器部門は従来どおり、運転・軌道解析G、線形加速器G、リング加速器G、制御Gの4グループとプロジェクト的な高度放射光技術開発Gで構成される。一方、利用系は大幅に編成替えして、ビームライン・技術部門、利用研究促進部門Ⅰ(促進部門I、材料科学系)、利用研究促進部門Ⅱ(促進部門Ⅱ、生命・環境科学系)の3部門にする。各部門のグループは、光源・基幹チャンネルG、光学系・輸送チャンネルG、制御G、共通技術開発G、共通技術支援G(ビームライン・技術部門)、産業応用・技術支援G、構造物性ⅠG、構造物性ⅡG、分光物性ⅠG、分光物性ⅡG(促進部門Ⅰ)、産業応用・技術支援G、構造生物G、生物・医学G、顕微・分析G(促進部門Ⅱ)である。すべての共同利用ビームラインおよび実験ステーションは、促進部門Ⅰ、Ⅱの何れかのグループが必ず担当することにして、ビームライン維持・管理・運営の責任を明確にする。
 放射光の産業応用はSPring-8の重要な柱になっている。平成12年度からその支援のために、材料科学分野にコーディネータ制度の新設が認められ、2名のコーディネータ(国立研究所および企業出身)が着任した。更に平成13年度には生命科学分野でもこの制度が新設される予定で準備が進められている。また、コーディネータの下には新しく採用された研究者・技術者が配属され、産業応用・利用支援Gを構成することになっている。このほか、利用業務部には新たに産業応用支援グループが設置され、外部からの問い合わせに対応するほか、講習会、研修会の実施や産業応用に関係の深いテーマでシンポジウムを開催している。さらに「表面・界面の残留応力の研究」など産業技術に深く関係した問題で、産学共同研究を準備中である。
 なお、チームを含めた組織の詳細と、担当するビームライン/実験ステーションは利用者情報誌で別途紹介する予定である。

平成13年度の予定

 SPring-8の運転計画は現在暦年方式で立てている。既にお知らせしたように、共同利用の2001A期は、本年2月第1週から始まる第2サイクルから6月末に終わる第6サイクルまで続き、2001B期は9月第1週に始まる第7サイクルから翌年1月末に終わる2002年第1サイクルまでを予定している。翌年の第1サイクルまでを組み入れるのは、前期(2001A)と後期(2001B)とのシフト数をほぼ等しくして、ユーザーが研究計画をたてやすくするためである。2001年の場合、予定しているユーザータイムは2001Aが238シフト、2001Bが204シフトで、2000年に比べてユーザータイムは25%ほど増加している。但し2001年の夏期長期運転停止期間に行われるビームライン建設作業の内容が定まっていないので、最終的な夏期のスケジュールは決まっていない。従ってここにあげた2001Bのシフト数は全くの概算であることを付記しておく。
 2001Aで共同利用に供されているビームラインは、R&Dビームラインを含めた共用ビームラインの19本と、原研・理研ビームライン5本である。2001Bでは医学利用2や産業利用など新たに数本のビームラインで立ち上げ実験が始まると予想されている。従って、共同利用に来るユーザーの延べ数は更に増えて延べ6000名に達するであろう。
 共同利用方式の多様化はまだ成案を得ていないので、当面は従来どおりである。具体的にはタンパク質構造解析ビームラインの留保ビームタイム利用課題と緊急課題以外は半年毎の利用研究課題募集に応募し、利用研究課題選定委員会の審査を経て採択された課題のみ実験できる。ただし、成果専有課題と実施時期指定課題は利用の妥当性の評価と安全性の審査のみを行う。また、医学利用ビームライン1、2と産業利用ビームラインについては、全ビームタイムの一定割合を特定目的に使用する案を検討しており、諮問委員会の承認を得て実施することになろう。
 SPring-8講習会やビームを用いた研修会はユーザーを育てる良い機会であり、また、新しいユーザー開拓するまたとない機会である。平成13年度には講習会を2回、研修会を6回開くことにしている。

国による中間評価

 評価システムの改革は基本計画の重要な柱であり、「評価の公正さと透明性の確保、評価結果の資源配分への反映」はその重点事項になっている。
 ところで平成13年度にSPring-8に対する国の中間評価が行われることになった。大型プロジェクトの研究開発評価は既に定められた大綱的指針に従って実施されている。新しい大型プロジェクトの評価の例としては、昨年行われたKEK・原研の統合計画「大強度陽子加速器計画」の第3者による事前評価が記憶に新しい。一方、SPring-8の場合は完成した大型プロジェクトとして中間評価を受けるのであり、新しく発足した文部科学省の科学技術・学術審議会が行うことになっている。
 評価の内容や実施時期、実施方法など具体的なことはまだ決まっていない。いずれ具体的な実施方法や評価項目が明らかになるものと思われるが、評価の資料を作るにあたってはユーザーの協力が欠かせないであろう。ユーザー各位のご協力をお願い致します。



SPring-8/SACLA INFORMATION

ISSN 1341-9668 EISSN 2187-4794