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Volume 16, No.1 Page 44

4.SPring-8 通信/SPring-8 Communications

2007A期実施開始の長期利用課題の事後評価について -2-
Post-Project Review Results of Long-term Proposals Starting in 2007A -2-

(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 User Administration Division, JASRI

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 2007Aに採択された長期利用課題について、2009Bに3年間の実施期間を終了しましたので、長期利用分科会による事後評価が行われました。

 事後評価は、長期利用分科会によるヒアリングの後、評価を行うという形式で実施し、利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめました。評価を受けた2課題のうち1課題の評価結果を以下に示します。研究内容については本誌10ページの「最近の研究から/長期利用課題報告」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。なお、もう1課題については、「SPring-8利用者情報」Vol.15 No.3(2010年8月号)の200ページに掲載済みです。

 

 

課題名:高時間・空間分解能X線イメージングを用いた凝固・結晶成長過程における金属材料組織形成機構の解明

実験責任者 安田秀幸(大阪大学)
採択時課題番号 2007A0014
ビームライン BL20B2
配分総シフト 90シフト

〔評価〕

 本課題は、高融点金属(Cu, Ni, Fe)基合金を高温から冷却しながらその場観察することで、デンドライト生成あるいは界面形状等の凝固メカニズムに関する知見を得るための長期利用課題である。その要点は、1)X線吸収像によって、上記合金融液からの冷却時の固液相界面の挙動を観察すること、2)合金中の密度分布(組成分布)を二次元濃度分布として定量的に表示することの検証、3)合金が固化する際の偏析形成過程観察とデンドライトの成長、その溶断と移動等に関わる組織形成の解明、4)とくにFe系合金における相変態と、これに伴う凝固組織の微細化の観察、等である。

 担当者らは、金属合金を高温から冷却するときの固液界面の移動、とくにデンドライト成長時の挙動を見るために、透過X線吸収像(屈折像は中間評価時点において分解能等の点で中止)でその場観察することを目指して、グラファイトヒーターを採用した高温電気炉の設計、融体を長時間保持できるセルの改良等を行った結果、1700℃まで保温できる電気炉および広い面積で均一厚さに融体を保持できるセルを試作するに至った。

 彼らは上記のハード構成を用いて、主にFe基合金を素材として、固液界面の直接観察を積極的に行い、従来のCu-S-P合金で見られていた溶断現象が、Fe-C-Mn系合金中でもデンドライトアームの溶断として観察されることや、C濃度が低い炭素鋼では、デルタ相からガンマ相への変態が、従来言われていた包晶変態ではなく、デルタ相から直接ガンマ相に変態すること、さらには、溶質が動かないマルテンサイト変態が起きていることなど、多くの興味深い観察結果を得ている。

 加えて、Fe系合金中組成濃度の二次元的分布の観測にも努力し、ある程度の密度差があれば凝固中の濃度変動が把握できることも実証した。一方、当初計画にあった屈折イメージによる固液界面の可視化や偏析現象の観察は、実験システムの限界や実験時間の不足から一部未遂行の部分ができたが、それにも増して、上記の凝固過程における組織変動の知見は、鉄鋼材料の組織制御にも関係することから、鋳造物の割れ抑制や構造材料への欠陥利用の観点から、産業界への波及効果が期待されるところである。論文等の外部発表の視点では、成果のアピールが若干不足の感は免れないが、長期利用課題終了後も引き続き成果公表に努力されるよう期待したい。また一般利用も含めて、当該機関はもとより、本報告の結果を受けて複数の企業が関連実験の課題申請を行うなど、放射光を利用したこの分野の科学技術の発展を切に希望するものである。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794