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Volume 06, No.1 Pages 21 - 22

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

2001A利用研究課題の審査を終えて
Report of the Proposal Review Committee for the 2001A Term

村田 隆紀 MURATA Takatoshi

(財)高輝度光科学研究センター SPring-8利用研究課題選定委員会、京都教育大学 教育学部 Department of Physics, Kyoto University of Education

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1.はじめに

 第3期の課題選定委員会にとって2001A期は最後の課題選定作業になりました。申請者に結果の通知が届いたころ、この記事を書いています。ここでは2001A期の課題選定の特徴について述べ、その後にこの2年間を振り返って、委員会主査としての反省や今後に残された問題点などについて述べたいと思います。

 例によってまず今期の課題審査についての簡単な報告をいたします。


2.今期の募集と審査

 2001A期は2001年2月の第2サイクルから2001年6月の第6サイクルまでの4ヶ月間が利用期間で、利用できるシフト数は前回よりも少し減少して238シフトになります。2000年夏に長直線部にアンジュレータを入れる工事が行われたため、2001A期開始時期を少しずらせたためですが、今後は両期がほぼ同じ程度のシフト数になる見込みです。
 申請書類は特定利用課題が10月7日、一般課題が10月16日に締め切られました。応募課題総数は502件でした。この中に、特定利用課題2件と成果専有課題2件が含まれています。一般課題の審査は通常の手続きに従って行われ、11月9日と10日の2日間、分科会で審査し、選定しました。詳しい統計は利用業務部の報告にありますので、参照して下さい。
 いつものように、今回の申請の特徴を以下に記します。
 今回は少ないシフト数に見合って応募課題数もわずかながら減少しました。また、平均の課題採択率とシフト充足率は、ともに前回よりも大きくなりました。分科会の分野別に統計を取ると、どの分野も78%を超える採択率となっています。しかし、ビームラインごとに見ると、少し凹凸があります。特に人気のあるBL39XUなどは、課題採択率が57%と極端に低くなっています。しかしこのBLもシフト充足率は88%ですから、採択されたものには、ビームタイムを要求に近い数値で配分できていることになります。またBLによっては課題採択率100%のものや、シフト充足率が100%を超えるものもあります。これは選定の段階で申請された課題の研究を遂行するためには、申請シフトでは不足している、という委員会の判断があったためです。もちろんこのようなことはビームタイムに余裕がある時にしかできませんが、必要ビームタイムの算出を十分な根拠を持って行う事の大切さを示した例であるともいえるでしょう。
 その他、生命科学分野での留保ビームタイム制度も定着し、BL40B2とBL41XUでそれぞれ30シフトが留保されました。また両BLともに238シフトまではまだ余裕があり、BL43IRも61シフトの余裕があるため、留保とは別に、平成13年2月末を締切にして、追加の課題募集が行われます。関連する分野の研究者の方々は、ホームページのアナウンスに注意して下さい。
 特定利用課題については、2件の応募があり、その中から1件を選定しました。これで現在研究が行われている特定利用課題は4件になります。


3.2年間の反省と残された問題

 1998年4月から始まった第3期の委員会は、回を重ねるごとに委員の方々の経験が蓄積されて、作業が効率的になっていきましたが、同時に審査する課題数も増加し、毎回深夜になるまで選定作業をしていただきました。そのおかげで、2日目の午後に分科会主査によって行われるビームラインごとのビームタイム調整作業も滞りなく行われるようになりました。
 この期の委員会は、当初考えていたよりもはるかに多くの事柄を扱ってきました。今振り返ってみると、少し大げさに言えば、全く休む暇なしに課題選定の事をやってきた、という感じがあります。これは補正予算などによってビームラインの建設が順調に進んだことによる応募課題数が増加したことが最も大きな原因でしょう。その内容は、課題申請用紙のフォーマットの改善、審査方法の工夫、ビームライン担当者の意見の吸い上げ、効率的な作業のためのネットワークシステムの改善などの細かいことから、留保ビームタイムや特定利用課題、という新しい制度の立ち上げに至るまで、大小さまざまな課題に取り組んできました。中でも特定利用課題の導入は、SPring-8にとっては画期的な制度の新設と言えるでしょう。この課題で採択された課題は、審査に当たった分科会委員が世界のトップクラスの研究であると認めたものであり、成果が期待されるところです。次回のSPring-8シンポジウムでは、第1回の特定利用課題3件の中間報告が予定されています。
 また、最近始まったSPring-8の新しい事業として、産業利用ビームラインBL19B2の建設と、その利用促進があります。現在作業グループによってその運用について検討が行われていますが、課題選定については課題選定委員会が一元的に行うと規定されているため、その対応を考える必要があります。JASRIの中にはすでに産業利用のコーディネータのもとで、産業界へのPRや講演会、利用促進のための検討部会がおかれ、精力的に作業が進められているようです。
 また、現在の国の予算の状況から見て、今後は今までのようなペースでビームライン建設が行われることは期待できないため、既存のビームラインの高度化が焦点になるでしょう。それに伴って、真に高輝度光源の特徴を生かした新しい実験技術の開発も重要な課題となります。このことは利用者情報の前号の巻頭にも上坪所長が「所長室から」で強調しておられることです。その中では、ユーザーの意識が従来の放射光利用研究のレベルに留まらずに、新しい実験に果敢に挑戦するということに転換することが望まれていると思います。ESRFやAPSではCRGやCATという日本とは異なる方式で先端的な研究を行っていますが、SPring-8では利用者懇談会の協力という、世界に例を見ない方式で進めてきました。利用者懇談会では現在サブグループの見直しや研究会方式への転換が論議されていると聞いています。SPring-8が定常的な利用フェーズになった今日、ユーザーと施設の協力体制をより強固にしていくためにユーザーがどのような形でコミットしていくのか、これまで築いてきたサブグループ方式を今後どんな形で発展させていくのか、などを考えることは、今後の日本の放射光科学の発展にとって、不可欠のものでしょう。このことは課題選定の問題を逸脱することかも知れませんが、優れた科学をSPring-8で研究を進めるということを考えていく際には、このことは避けて通れないことだと思います。


おわりに

 2年間のあいだ、多くの方に支えられてこの仕事を行ってきました。特に委員の先生方には4回の課題選定に積極的に協力していただきました。また、特にJASRIの利用業務部の方々には、裏方として目に見えないところでサポートしていただきました。申請の締切の日から、夜遅くまで残って黙々と手際よく500部以上の申請書を整理し、分科会の時に書類が見事に整えられているのを見ると、プロの仕事とはこういうものだ、ということがよく分かりました。課題選定のあり方に対して批判も含めていろいろとご意見をお寄せいただいた方々にも感謝いたします。ありがとうございました。



村田 隆紀 MURATA Takatoshi<
京都教育大学 教育学部 物理学教室
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Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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