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Volume 05, No.2 Pages 121 - 122

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第46回米国真空国際会議(AVS)報告
Report of AVS 46th International Symposium

佐伯 宏 SAEKI Hiroshi

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門 JASRI Accelerator Division

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 今回で46回目となる米国真空国際会議が、会員数6000名以上を抱える米国真空学会主催で、米国ワシントン州シアトルのコンベンションセンターで1999年10月25日から29日まで開催された。筆者は、真空計に関するポスターセッションで発表する機会を得たために、久々に参加した。
 本会議は、Technical Program, Exhibits,Short Courses等で構成されており、その分野は半導体から宇宙におよぶ真空に関わりある全ての範囲にわたる大規模なものである。主催者側からの発表では、今回は、Technical Programだけでも、4 Topical Conferencesを含む125 sessions(8 Divisions)で1300以上のペーパ数、展示会参加企業約140社という規模とのことであった。(以下参照)
8 Divisions:(Applied Surface Science Div.,Electronic Materials and Processing Div.,Nanometer-scale Science and Technology Div.,Plasma Science and Technology Div.,Surface Science Div.,Thin Film Div.,Vacuum Metallurgy Div.,Vacuum Technology Div.)
4 Topical Conferences:(The Science of Micro-Electro-Mechanical Systems,Emerging Opportunities and Issues in Nanotubes and Nanoelectronics,Flat Panel Displays,Organic Electronic Materials)
 筆者の感じた全体の雰囲気は、80年代後半から90年代初頭とは対照的に、米国内の経済の好調を反映しているかのように米国勢の躍進が著しく、新しい取り組みが随所に見受けられたように感じた。本稿では、筆者と仕事上関係が深いVacuum Technologyおよび大変注目を集めていたMicro-Electro-Mechanical Systemsを中心に、特筆すべき発表の簡単な紹介と、僭越ながらその感想を多少記させていただく。

1.Vacuum Technology
 Total and Partial Pressure Gaugingのsessionでは、Granville-PhillipsのP.C.ArnoldのStable-Ion Gaugeに関するInvited Talkが注目された。このStable-Ion Gaugeは、熱電子の生成、残留ガスのイオン化、イオンのコレクタへの捕獲までの過程を精密にシュミレーションした上で設計されたことで、精度と信頼性の向上が計られており、NISTでも高い評価を受けている。また、同じくGranville-PhillipsのA.R.Filippelliからは、小型部品製造技術を用いてのミニチュアデュアルコレクタ式イオンゲージの試作と評価の報告があった。これは、今後の真空機器の新しい方向性を示すものであるように感じたのは筆者だけなのであろうか。加速器としては、Brookhaven National LaboratoryのL.A.SmartからRelativistic Heavy Ion Colliderに付けたPPA(分圧計)についての現状と稼動状況についての報告があった。多数取り付けられたPPAは、ヘリウムおよび大気の洩れ検出と超高真空内の残留ガス分析に使用されており、PPAによる真空環境の監視は、全圧計のみの場合と比較して遥かに有効との見解を改めて力説していた。筆者も同感した次第である。
 Vacuum Pumping Systemsのsessionでは、AlcatelのS.DohertyからDry Pump Systemの設計について(成功例、失敗例等含)のInvited Talkがあった他、VarianのP.A.Lessardからは、半導体製造プロセスやフラットパネルディスプレー製造プロセスにおけるDry Pump Systemの重要性がコンタミ評価手法で明解に示された。台湾のNSCのH.-P.Chengからは、ターボ分子ポンプ(TMP)内部での実際の圧力状態の実験調査結果の発表があった。EdwardのA.D.ChewからDry Pump SystemのPPAを用いた清浄度評価、系の清浄化についてのInvited Talkがあった。EbaraのY.Watanabeからブラシレス直流モータを用いた2段ドライスクリューポンプについての紹介があった。Pfiffer VacuumのH.Barfussからは、ガスロードに対して排気系のポンピングスピードで圧力を制御する話があり、注目を集めていた。現在では常識となりつつある排気系のドライ化、コンタミフリー化が今後ますます展開していく感を強くした次第である。
 Outgassing,Leaks,and Mass Flow Controllersのsessionでは、Jefferson National Accelerator FacilityのH.F.Dyllaから真空材料として一般的なANSI300系ステンレス材とCarbon Steelとのガス放出量の比較試験の報告があった。酸化皮膜の厚さと放出ガス量の関係を如実に物語っている結果であった。Chicago Bridge and IronのW.A.Carpenterからは、現在進行中のCaltechとMITとのjoint projectであるNSFのLaser Interferometer Gravitational-wave Observatory(RIGO)について、片腕4km(L型)に及ぶ超高真空ビームパイプを中心に説明があった。直径1.25mの長大な真空系のリークチェックを、高感度の残留ガス分析器(RGA)を用いて実施する手法の紹介があった。

2.The Science of Micro-Electro-Mechanical Systems
 本sessionは、先に述べたように筆者には大変興味深い内容であった。Invited Talkとして、University of LiverpoolのS.TaylorからミニチュアQuadrupole Mass Spectrometer(QMS)の試作およびその試験結果が報告された。内蔵されている4重極のロッドは、グラスファイバー製で、その直径0.5mm、その長さ20〜30mmと極小であり、シリコン基板上に形成されている。現在のところ、測定可能質量数は、1〜50a.m.u.とのことであった。JPL-CaltechのJ.Z.Wilcoxからは、sub-cmサイズのミニチュアUltra-High Vacuum Orbitron Pump、Jet Propulsion LaboratoryのI.Chakrabortyからは、宇宙機器用のミニチュアSilicon Valveの紹介があった。それぞれの機器の基本性能はこれからという面もあったが、随所に工夫がこらされた逸品であり、将来的に極めて有望であることを痛感した次第である。

 本会議の全てを筆者の浅学な頭で網羅することは不可能である。ただ、今後の技術動向の一指針が、現実に現れてきたことを、ここに記述することで、筆者なりの報告として締めくくらせていただく。



佐伯 宏 SAEKI Hiroshi
(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門
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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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