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Volume 05, No.2 Pages 119 - 120

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SPring-8第5回マシンスタディ報告会
The 5th Meeting on Machine Studies of SPring-8

高雄 勝 TAKAO Masaru

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門 JASRI Accelerator Division

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 第5回マシンスタディ報告会が1999年12月16日に中央管理棟1階講堂において開催された。報告対象となるマシンスタディはサイクル99−07〜11に実施された21件であった。ニュースバルのコミッショニングも順調に進んできたことから、これについての特別報告も行われた。以下にスタディのテーマと報告者を挙げておく。

線型加速器入射部のOTR光光量測定    
 小林 利明
508MHz〜2856MHz周波数同期回路導入によるビームパラメータ測定    
 安積 隆夫
電子ビームがリニアック加速管内に誘起するマイクロ波測定    
 花木 博文
種々の運転パターンにおけるクロマティシティの測定と補正    
 深見 健司
シングルバンチ用RFKOシステムのローレベル系の変更    
 青木 毅
シンクロトロン冷却水温度変化のビーム電流値に与える影響    
 細田 直康
真空封止型挿入光源のインピーダンス測定 
 中村 剛
アブソーバの放射光照射効果の測定  
  大石 真也
シンクロトロン加速位相の変更    
 大島 隆
垂直ディスパージョンをプローブとした垂直エミッタンス評価    
 田中 均
HHLV Optics運動量アクセプタンス増大のメカニズム解明  
  田中 均
HHLV Opticsでのベータトロン関数の測定 
 早乙女光一
新オプティクス(HHLV)のベータトロン結合共鳴とスキュー電磁石の影響  
  高雄 勝
入射ビームロスと蓄積リング及びSSBTパラメータとの関係    
 田中 均
ID23ギャップ依存の軌道歪み補正  
  田中 均
BL33LEPレーザー打ち込み試験  
  伊達 伸
BL33LEP双極電磁石励磁試験    
 伊達 伸
HHLV Opticsを有する蓄積リングの応答マトリックスの測定    
 田中 均
エネルギー広がりのバンチ電流依存性    
 中村 剛
ビームを用いたスキュー電磁石の位置測定 
 熊谷 桂子
ニュースバルにおける蓄積電流依存チューンシフトの測定    
 安東愛之輔
ニュースバル現状報告    
 安東愛之輔

以上の報告の内いくつかについて簡単に紹介する。

 線型加速器ではストリークカメラによるバンチ構造測定が計画されており、光源としてOTR光が考えられている。実ビームを用いてその実用性試験が行われ、十分な光量があることが確認された。
 現在、線型加速器の加速周波数2856MHzとシンクロトロン及び蓄積リングの加速周波数508.58MHzには同期関係がない為、1ns幅のビームは2または3パルスになるという不確定な要素があり、これに起因するショット毎のシンクロトロン入射電流値の変動が観測されている。これを抑制することを目的とする2856MHzと508.58MHzの同期運転を行う回路系が構築されたので、安定度を確認するための試験が行われた。結果は、250ps幅ビームでも安定にシンクロトロンに入射することが出来た。しかしながら、同期回路で生成された2856MHzの周波数変動は従来使用していた発振器に比較して若干大きくなった為、ショット毎のエネルギー変動が0.1%に拡大した。今後、これを改善する同期システムを構築する予定であるとの報告があった。
 加速周波数を変えながら加速管内に誘起されるマイクロ波の位相が測定されたが、電子ビームエネルギー最大時の加速RFと誘起波の位相差が約200度という結果で、理想とする180度にならなかった。このことから加速管位相器の調整不足が予想され、今後のスタディで再調整を行いたいとのことであった。
 シンクロトロンについては、次のような報告があった。
 リアルタイムスペクトラムアナライザーを用いてベータトロンチューンが測定され、ランピング区間でのクロマティシティが求められた。この間でのクロマティシティ変化の傾向は渦電流効果で定性的には説明でき、4極、6極電磁石の励磁特性を考慮した励磁パターンの検討を行い改善する予定である。
 旧来のシングルバンチ生成用RFKOシステムでは、ディレイ調整の結果RFKO波形のゼロクロス点が1バケット分前後する現象が起こる可能性があった。これが起こり難いシステムに変更し、そのシングルバンチ生成性能が従来と変わらないことを確認した。
 現在、シンクロトロン冷却水温度が15〜20分周期で+/−1.5度程度変動している。この変動のビーム電流値に対する影響が調べられたが、ビーム電流値変動の主原因は冷却水温度変化以外にあるようであった。
 蓄積リングでは99年夏期長期停止期間後のマシン立ち上げにおいて、4極電磁石磁場設定がそれまでのハイブリッドタイプ(直線部の水平ベータ関数が交互に大小する24回対称性を持つ)からHHLVラティス(全ての直線部でアンジュレータに適した大きな水平ベータ関数と小さな垂直ベータ関数である48回対称性を持つ)に変更された。これに伴って、新ラティスの種々のリングパラメータがマシンスタディで精力的に調べられた。ハイブリッドラティスに較べ、ベータ関数の歪みが局所的に幾分大きいところが存在するなどの問題はあるものの、他のパラメータは良好であることが確認された。むしろモーメンタムアクセプタンスは横方向ダイナミクスに依る制限が取れて拡大し、ビーム寿命が延伸する結果となっているが、このメカニズム解明のスタディも行われた。
 この立ち上げから垂直ディスパージョン関数を補正する為にスキュー4極電磁石が導入されたが、これを利用し垂直ビームサイズの評価が行われた。チューンセパレーション、タウシェックビーム寿命からの評価と整合性ある結果が得られた。
 今夏に蓄積リングに導入される30mアンジュレータに対する基礎データの一つとして、真空封止型挿入光源のインピーダンスが測定された。真空封止型挿入光源の条件によっては不安定性を引き起こすことが確認され、測定されたインピーダンス特性からresistive wallに依るものと同定された。
 BL33LEPでは、蓄積電子ビームにレーザーを照射し、逆コンプトン散乱に依りガンマ線を生成する。レーザー照射の結果、必然的に電子ビームは失われビーム寿命は短くなるが、レーザー打ち込み試験を実施して、他の放射光実験に影響をしない照射量の調査が行われた。また、実験ハッチに設置された巨大な双曲電磁石の漏洩磁場のビーム軌道に対する影響が調査され、励磁時間の最適化が行われた。
 ニュースバルでは、99年夏期長期停止期間における真空系改良作業の結果、ビーム寿命も大幅に改善されてきた。電子ビームが安定に蓄積できるようになり、マシンパラメータが正確に測定することが可能となってきた。そこで今回初めてニュースバルでもマシンスタディが実施され、ベータトロンチューン測定方式を確立する為のスタディが行われた。また、ニュースバル全般に渡った現状報告が行われた。
 スタディの詳細に興味がある方は、本報告会で使用されたOHPのコピーが中央制御室に保管されているのでご参照下さい。



高雄 勝 TAKAO  Masaru
(財)高輝度光科学研究センター
放射光研究所 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0851 FAX:0791-58-0850
e-mail:takao@sp8sun.spring8.or.jp


大熊 春夫 OHKUMA  Haruo
(財)高輝度光科学研究センター
放射光研究所 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0851 FAX:0791-58-0850
e-mail:ohkuma@sp8sun.spring8.or.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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