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Volume 05, No.2 Pages 100 - 103

2. 共用ビームライン/PUBLIC BEAMLINE

平成12年度整備共用ビームラインの概要
Public Beamlines to be Completed in 2000

後藤 俊治 GOTO Shunji[1]、竹下 邦和 TAKESHITA Kunikazu[1]、石川 哲也 ISHIKAWA Tetsuya[2]

[1](財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 ビームライン部門 JASRI Beamline Division、[2]理化学研究所・播磨研究所 RIKEN Harima Institute

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1.はじめに
 平成11年度補正予算によって、新たに2本の共用ビームライン建設予算がいわゆる15ヶ月予算として認められ、平成12年度末の完成を目指して整備を進めることになった。1本は、一昨年にビームライン検討委員会での答申を頂いて積み残しとなっていた表面界面ビームラインであり、他方は本年度新たに答申を頂いた産業利用ビームラインである。表面界面構造解析ビームライン(原研予算)は、X線アンジュレータビームラインとして、BL13INに設置することとした。また、産業利用ビームライン(理研予算)は、中尺偏向電磁石ビームラインとして、BL19B2に設置することとしたが、これには蓄積リング棟の外側に建物(蓄積リング棟附属施設W、WはWestの頭文字であり西側の中尺ビームラインを収容することを表す)を増設する工事も含まれている。
 本稿では、これら2つの共用ビームラインを、輸送チャンネル部分を中心に焦点を絞って紹介する。実験ステーション機器の検討も平行して進められているが、これについては別の機会に本誌上で紹介されるであろう。

2.ビームラインの概要
2-1.挿入光源・フロントエンド

 表面界面構造解析ビームラインBL13XUは標準真空封止アンジュレータ(周期長32mm、周期数140)を挿入光源とするアンジュレータビームラインで、これに続くフロントエンド部も標準アンジュレータ用フロントエンドとなる。ただし、フロントエンドと輸送チャンネルの取り合い点は収納部遮蔽壁から約6m(光源点から40m地点)と通常より下流側に延長されている。これは、隣接ビームラインとの干渉を避けるため光学系・輸送チャンネルをより下流側に設置する必要が生じ、可能な範囲でメンテナンス頻度のより少ないと考えられるフロントエンド部を延長する方針としたためである。
 一方、産業利用ビームラインBL19B2は標準偏向電磁石ビームラインのフロントエンドが採用されるが、BL13XUと同様にフロントエンドと輸送チャンネルの取り合い点についても収納部遮蔽壁から約8.3m(光源点から38.5m地点)と通常より長くなっている。輸送チャンネル標準コンポーネントの水平開口寸法の制約からフロントエンドにおいて水平取り込み角を1.4mradに制限している。
 挿入光源およびフロントエンドの概要については文献[1、2]を参照されたい。

2-2.光学系・輸送チャンネル
(1)表面界面構造解析ビームラインBL13XU
 ハッチ外形を含む全体構成は図1に示す通りである。光学系・輸送チャンネルは標準アンジュレータ用であり、標準型二結晶分光器とタンデムのミラー調整機構により主要光学系が構成される。 
 
 
 
図1 表面界面構造解析ビームライン(BL13XU)の全体構成
 
 二結晶分光器のSi結晶冷却には循環型液体窒素冷却装置の導入が検討されている。
 ミラーはビームの水平方向の集光と高調波除去を目的とする。ミラーの仕様は表1に示す通りである。水平偏向のミラー調整機構を2台タンデムに配置し、二結晶分光器からのストレート光およびそれに平行な反射光を選択して利用することが可能である。ミラーの視射角はおよそ2〜10mradの範囲で選択可能であるが、ストレート光と反射光のオフセットは最大で27mmと視射角に依存して変化する。このため、ミラー調整機構より下流はICF152規格のコンポーネントを用いてビームのオフセットに対して余裕をもたせている。場合によって実験ステーション機器はミラー視射角に依存して水平方向に追随できるような併進機構が必要になる。コーティングはPtとRhの2種類を塗り分けた平面鏡であり、光軸に直角方向の併進機構によりコーティング材を選択可能にしている。この手法はアンジュレータからの放射光のビームサイズが小さいことによって実現可能になる。また、ミラーは子午線方向に湾曲させることが可能であり、水平方向のビームの平行化や集光を可能にしている。 
 
表1 BL13XUおよびBL19B2のミラーの仕様 
 
 
 
 実験ハッチは3つあり、輸送チャンネル終端のベリリウム窓から各実験ハッチの機器まではかなりの距離となり、真空パイプもしくはヘリウムガスのビームパスが必要になる。これらについては実験ステーション機器との取り合いが具体的になってから用意する予定である。
(2)産業利用ビームラインBL19B2
 ハッチ外形を含む全体構成は図2に示す通りである。蓄積リング棟に隣接して建設される蓄積リング棟付属施設Wまでビームラインが延長される中尺ビームラインであり、実験ハッチは隣接ビームラインとの干渉を避けるように考慮した結果、光学ハッチに連結して実験ハッチ1、蓄積リング棟実験ホール内に飛び地の格好で実験ハッチ2が、さらに蓄積リング棟付属施設W内に実験ハッチ3が設置され、これらは実験目的に応じて使い分けられることになる。 
 
 
 
図2 産業利用ビームライン(BL19B2)の構成 
 
 光学ハッチ内は標準的な偏向電磁石ビームラインの構成であるが、垂直偏向のミラー調整機構を2台タンデムに配置し、二結晶分光器からのストレート光およびそれに平行な反射光を選択して利用することが可能である。ミラーの視射角はおよそ2〜10mradの範囲で選択可能であるが、BL13XUと同様にストレート光と反射光のオフセットは最大で33mmと視射角に依存して変化する。当面準備するミラーは平面ミラーであり、高調波除去を主目的として利用されることになるが、子午線方向の湾曲機構を有し、縦方向の集光が可能である。
BL19B2では最大約120mまでビームを導くため、非集光の場合横方向のビームサイズは約170mmまで広がることになる。このため、ミラー調整機構より下流は内径約190mmとなるJIS200フランジ規格のコンポーネントを用いてビームに対して余裕をもたせている。実験ハッチ間は鉛シールドされた真空パイプ、ベローズ、ゲートバルブ、および排気ポートを組み合わせて接続される。保守のことなどを考慮し、真空セクションはベリリウム窓およびゲートバルブにより5つに分け、最長約20mの真空セクションを300 L/sクラスの広域ターボ分子ポンプと500 L/minクラスの大排気速度スクロールポンプの組み合わせによって排気する。このような中尺ビームライン対応のシールドを含む輸送チャンネルと大排気速度の排気ユニットはほぼ標準化されつつあり、長尺アンジュレータビームラインBL19LXUおよび医学・イメージングアンジュレータビームライン BL20XUにおいて同様の中尺輸送チャンネル構成が用いられることになっている。
 下流側実験ハッチにおいて実験をおこなう際には、上流側実験ハッチ内も真空パイプ等を用いて接続する必要があるが、BL13XUと同様にして実験ステーション機器との取り合いが具体的になってから用意する予定である。 
 

2-3.遮蔽ハッチ
 遮蔽ハッチ設計における基本的な原則、一般事項は平成10、11年度整備ビームラインの場合[1、2]と同様である。表2にBL13XUおよびBL19B2の遮蔽ハッチの仕様を示す。ハッチ内寸とはハッチパネル内面からの距離を示し、補助遮蔽体、アングル材などの突起物は含まない。 
 
表2 BL13XUおよびBL19B2の遮蔽ハッチ仕様 
 
 
 
 BL13XUは、光学ハッチから実験ハッチ3まで連結型の標準的な構成であるが、実験ハッチ2および実験ハッチ3は、ユーザー持ち込み装置および超高真空回折装置を設置するためハッチ高さを3.8mとしている。
 BL19B2は、光学ハッチと実験ハッチ1を連結型とし、実験ハッチ2および実験ハッチ3は分離型である。実験ハッチ2は蓄積リング棟実験ホール内の光源から75mの位置、実験ハッチ3は蓄積リング棟付属施設W内の光源から114.6m位置をそれぞれ中心として設置される。

2-4.制御・インターロック
 制御・インターロックは標準的なものとなる。その考え方は既に文献[1、2]に示した通りであるのでそちらを参照されたい。BL19B2は中尺ビームラインで建家を隔てた制御・インターロック系が必要になるが、その雛型は既に医学利用偏向電磁石ビームラインBL20B2で確立されており技術的な問題は解決されている。

3.おわりに

 平成12年度には、当初予算による共用ビームラインの建設計画はなく、ここで紹介した2本の共用ビームラインが、平成10年度にスタートした医学利用アンジュレータビームラインと共に建設の中心となる。両ビームラインとも平成13年3月のハードウェア完成、同年連休明けのビームライン調整終了を目途に計画が進められている。

参考文献
[1]後藤俊治他:SPring-8利用者情報Vol.4,No.3(1999)53〜64.
[2]後藤俊治他:SPring-8利用者情報Vol.4,No.4(1999)7〜15.

後藤 俊治 GOTO  Shunji
(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 ビームライン部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0831 FAX:0791-58-0830
e-mail:sgoto@spring8.or.jp


竹下 邦和 TAKESHITA  Kunikazu

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 ビームライン部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-1847 FAX:0791-58-0830
e-mail:ktake@spring8.or.jp


石川 哲也 ISHIKAWA  Tetsuya

理化学研究所・播磨研究所 X線干渉光学研究室
〒679-5148 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-2805 FAX:0791-58-2807
e-mail:ishikawa@spring8.or.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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