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Volume 05, No.2 Pages 74 - 75

所長室から
From the Director’s Office

上坪 宏道 KAMITSUBO Hiromichi

(財)高輝度光科学研究センター 副理事長、放射光研究所長 JASRI Vice President, Director of JASRI Research Sector

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建設フェーズから利用フェーズへ

 この4月から始まる平成12年度では、建設中のビームラインは表面界面構造解析(BL13XU)、産業利用(BL19B2)、医学利用ID(BL20XU)、理研物理科学Ⅱ(BL19LXU)と台湾APCST BM、同IDの6本になり、全て年度末までに完成する。そのほか高分解能非弾性散乱(BL35XU)など数本が立ち上げ調整後順次共用に供される予定である。
 一方、平成12年度予算には新規に着工するビームラインが含まれていない。現在、平成13年度予算に要求する新規ビームラインを検討中であるが、昨今の財政状況では数本のビームラインの建設が認められるのは極めて困難と予想される。従って平成13年度には、建設中のビームライン数は少なく、立ち上げ調整中の数本を含めて総数41本のビームラインが稼働し実験に供されることになる。また後述するように、当初第2期に想定していた蓄積リングに長直線部4カ所を実現する改造も平成12年夏期に行うので、平成13年度には蓄積リングの新しいオプティックスによる運転が定常化する。
 このように平成13年度には、SPring-8は当初計画の主要部分の建設をほぼ完了し、世界のフロントランナーとしての性能を達成して、建設フェーズから利用フェーズに移行する。一方、行政改革で文部科学省が新しく誕生して、我が国における科学技術の基礎的研究は一元化され、新しい体制で発展していくものと思われる。その際、SPring-8のような基盤的研究施設は、今後長く世界的なフロントランナーの地位を保持し、科学技術分野における学術研究および研究開発で中核的役割を果たさなければならない。次の時代に向けてSPring-8が放射光利用研究でフロントランナーであり続けるためには、装置の高度化や実験手法の開発を通して優れた成果を生み出し、新しい研究領域の開拓に寄与することが肝要である。さらに、最先端の研究を可能にするビームラインの実現に努めることが不可欠で、残された共用ビームラインの建設と専用施設誘致の努力が必要である。


コーディネーター制度の新設

 利用フェーズに向けて、平成12年度予算には交付金としてSPring-8の利用を促進し、研究活動をいっそう向上させるのに必要な措置を進める経費が計上されている。具体的には「特定放射光施設の共用の促進に必要な経費」としてSPring-8利用研究支援、産業界等利用拡大支援、講習会等の開催に必要な諸経費である。その中に新しくコーディネーター制度を設ける経費も認められた。
 具体的には(1)実験手法を検討し試行するとともに、利用者に対する情報支援と技術支援を行う、(2)産業界のSPring-8利用拡大のコンサルティングおよび今後の共用施設利用や専用施設整備の検討を行う、(3)SPring-8利用研究者等を対象にした講習会、研修会等を開催することになっており、そのために要する諸経費のほか、来年度からハイレベルの放射光研究者であるコーディネーターと、技術的指導を行う中堅研究・技術者ならびに利用実験に協力する若手技術者を採用することが認められた。
 SPring-8の利用研究を発展させるためには、テスト実験を積み重ねて、新しい実験手法や実験装置を開拓していくことが不可欠である。その中心になるシニア研究者が( 1 ) のコーディネーターで、SPring-8でのR&D活動の一翼を担うことが期待されている。なおJASRIでは、実験手法の検討・試行は、SPring-8のより優れた性能を利用者に提供するために必要なJASRIの業務と考えている。
 産業界13企業による専用施設BL16XUおよびBL16B2が完成して実験が始まっている。また、産業界からの共用ビームライン利用も増加傾向にあり、成果専有あるいは成果専有・実施時期指定の制度も定着して来た。さらに本年度補正予算で産業利用ビームラインの建設が認められ、産業界のSPring-8利用が活発化しようとしている。しかし、具体的に高輝度放射光を自社の目的にどう使ったらいいか分からないという企業技術者が多い。そこでこうした企業研究者・技術者の相談に応じ、放射光利用を指導する役割を果たすシニア研究者が(2)のコーディネーターである。
 JASRIでは、上記(1)、(2)、(3)のコーディネーション、指導を行うコーディネーター、該当実験ステーションでの実験指導や講習会を担当する中堅研究・技術者と、該当実験ステーションを担当し放射光実験に協力する若手研究者を募集することになった。募集人数は若干名で、できるだけ早急にJASRIに参加することを希望する。なお、コーディネーターに関しては年齢制限を置かないが、60歳以上の場合は5年の任期とする。(募集要項を本誌137頁に掲載)


長尺アンジュレータビームラインの建設と2000Bの運転計画

 2000年のSPring-8利用は、2000A(第2〜第7サイクル、2月2日〜6月16日)と2000B(第8〜第12サイクル、9月20日〜12月22日)の2期に行う予定で、6月中旬から8月下旬までの期間には施設全体の運転を停止して、理研物理科学Ⅱ BL19LXUおよび表面・界面構造解析ビームラインBL13XUの挿入光源とフロントエンド据え付けを行うことにしている。
 BL19LXUはSPring-8で初めて建設される長尺挿入光源(25m長)ビームラインである。建設にはかなりの時間と技術開発を要するので、理研ビームラインとして予算要求し、認められた経緯がある。しかし、長尺挿入光源はSPring-8の高輝度特性を最もよく発揮する超高輝度光源であり、そのビームラインは世界でSPring-8のみが有する優れた実験施設になる。そこで、理研ビームラインであってもできるだけ広く共同利用に供することにし、また、ビームライン設計および利用計画の検討も初めから国際的な広がりをもって行うことにして、既に3回の国際ワークショップが開かれた。なお、BL19LXUは周期長32mm、長さ25mのアンジュレータを光源とするビームラインである。
 長尺挿入光源を設置するには、蓄積リングにその設置場所を作らなければならない。具体的には、現リングに4カ所ある直線セルの収束磁石群を両端に寄せて長直線部をつくり、長尺の挿入光源を設置する。ビーム運動学的に言えば、蓄積リングのラティス(磁石配列)を現行の48回対称ラティスから、4カ所に長直線部をもつ4回対称ラティスに変更することになる。ところがこの改造を行うことによって蓄積リングの対称性が下がるので、ビーム寿命やエミッタンスなどビーム特性が幾分下がることが予想される。その影響をできるだけ抑えるために、加速器グループでは周到な事前準備を行ってきており、また改造後のマシン調整時間を有効に使って、早急にビーム性能を定常化させるよう計画している。
 しかし今回行う夏期の作業は、SPring-8供用開始以来初めての蓄積リング大幅改造である。現在までのところ、作業日程や立ち上げ調整のスケジュールは規定方針通りで進めているが、まだ確定できない部分も残っている。また、ビーム軌道が変化するのでビームライン再調整も必要になり、場合によっては、今後スケジュールを変更しなければならないことも起こりうる。その場合、スケジュール会議を中心に随時検討し、その結果は速やかにユーザーに伝えることにしているが、まず事前に計画の概要を説明して、あらかじめ理解していただくことにした。なお、BL19LXU計画および関連する加速器改造計画の詳細は本誌の次号に載る予定である。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794