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Volume 05, No.1 Pages 39 - 40

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第3回SPring-8シンポジウムに参加して(その2)
Report of the 3rd SPring-8 Symposium (Part-2)

木村 英和 KIMURA Hidekazu

日本電気㈱ 基礎研究所 Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation

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 SPring-8の供用が開始されてから早くも2年が経ちました。ビームラインの建設も順調に進み、訪れるたびにその景色が変わっていきます。スタッフ、ユーザーを含めて建設あるいは立ち上げ当初から参加されている方々から、これから利用を計画されている方々までSPring-8に関与する人の数も増えているでしょう。SPring-8シンポジウムも今回で3回目となり、参加者に占めるユーザーの割合も増しているものと思います。シンポジウムの内容も、これまでの「施設報告」と「新設BL」中心のセッションの他に「X線ビームを使ってみて」や「機器開発」が加わって、ユーザーにとっても身近な企画、内容に変わりつつあるように感じました。以下、今回のシンポジウムをセッションごとに振り返ってみたいと思います。
 「施設報告」では、秋からのオプティクスの変更、ビームラインの建設状況と計画、フロントエンドと光学系の現状、の各報告がなされました。いずれもユーザーよりな視点からの講演がなされました。特に、普段は縁遠いと思われがちなオプティクスの話題もハイベータオプティクスに変更されたことによる光源サイズの縮小、あるいは光束の向上といった、ビームへの影響(恩恵)が議論され、ユーザーにも受け入れられやすかったのではと思います。
 「新設BL」では、立ち上げ中もしくは共同利用開始間もない5本のビームラインとR&Dビームラインについて、概要と代表的なアクティビティが紹介されました。粉末回折ビームラインと高エネルギー単色偏向電磁石ビームラインは、立ち上げ実験として行われた具体的な研究の一例も報告されました。
 今回、新しくセッションとして加わった、「X線ビームを使ってみて」と「機器開発」は、多くのユーザーが最も期待と興味を持ったセッションではなかったかと思われます。現時点で得られている実験に使用可能なビーム性能と開発中の新しいX線検出器が紹介されました。前者は、集光ミラーシステムの性能評価、マイクロビームと顕微鏡システムの現状、液体窒素冷却分光器、偏光スイッチの各報告で、中でも、マイクロビーム形成では、フレネルゾーンプレートを用いて高エネルギー(83keV)でのサブミクロン集光が紹介され、今後の応用研究が期待されます。また後者は、マルチエレメント・アバランシェ・フォトダイオード、Micro-Strip Gas Chamber、1次元位置有感型X線検出器が紹介され、高時間応答性、大面積2次元画像検出、高エネルギー分解能検出器の開発状況が報告されました。ところで、この3種類すべての検出器が多素子化という点で共通していることは偶然なのでしょうか。また、このセッションでは、ある意味で測定の入口と出口の一例が示されたことになります。あとは、その間に入る測定が問題になるわけですが、個人的には、SPring-8ならではの測定手法と対象を提案し実行することが私を含めユーザーの課題だと改めて実感させられました。
 「ポスター」セッションでは、各ビームラインの概要とアクティビティが紹介されました。発表件数は約50件弱で前回よりも多少減ったようですが、建設中のビームラインでは意欲的な内容の報告がなされていました。一方で、多くの実行課題を抱えるビームラインでは、量的な問題から内容を限定せざるを得なかったとの声も聞きました。また、主会場と並行して行われたためか、発表者の方に立ち会って頂ける時間が少なかったような気がしたのは残念でした。
 「産業界のビームライン利用」のセッションでは、産業界専用ビームラインと兵庫県ビームラインが紹介されました。産業界専用ビームラインは利用を開始して間もないためか、前回同様ハードウェアの報告が主でしたが、兵庫県ビームラインでは、屈折イメージングやマイクロビームを用いた研究成果が報告されました。これまでの企業の放射光利用は、リソグラフィなど紫外や軟X線の利用を除けば、電気(電機?電器?)メーカーなどによる分析評価が中心でしたが、リアルタイム観察や微小領域評価などを用いた利用が主流になるものと思われます。また、SPring-8では蛋白構造解析やイメージングを用いた、医学、薬品関連の企業の利用も今後ますます活発になると想像されます。既に数多くの企業がSPring-8を利用しています。業種も多岐にわたっています。産業界専用ビームラインでの利用はもちろんですが、共用ビームラインへの課題申請も増えていると聞きます。産業界利用を目的とした新しいビームラインも計画されているようですし、今以上に企業がSPring-8を利用する機会が増えることは間違いありません。それだけに、産業界がどういった目的で、どのような方法で利用していくのか、各方面から注目されているのではないかと思います。私も企業に所属する一人として、SPring-8の特徴を生かした研究を行わねばと考えます。
 最後に次回のSPring-8シンポジウムへの希望を記して報告を終わります。優れた研究がより具体的に紹介されるようなセッションの新設とポスターセッションでの各ビームライン報告の充実を願います。同時に、講演後の質疑応答が活発に行われることを期待します。


木村 英和 KIMURA  Hidekazu
日本電気㈱ 基礎研究所
〒305-8501 茨城県つくば市御幸が丘34
TEL:0298-50-1139 FAX:0298-56-6137
e-mail:kimurah@frl.cl.nec.co.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794