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Volume 05, No.1 Pages 31 - 32

4. その他のビームライン/OTHER BEAMLINES

R&D (II)ビームライン(BL46XU)の現況とこれから
Present Status and Future Plan of the R&D (II) Beamline, BL46XU

水牧 仁一朗 MIZUMAKI Masaichiro

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 利用促進部門 JASRI Experimental Facilities Division

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1.概要
 BL46XUは、R&D(II)ビームラインとして1996年に建設がスタートした。その時点では光学ハッチのみが建設されたが、1999年になり短期的な計画マシンタイムでは不可能なチャレンジングな研究・開発をおこなうためにBL46XUの実験ハッチの建設計画がスタートした。以下にBL46XUのビームラインの構成と実験ハッチ建設後の計画について報告する。


2.挿入光源について
 BL46XU挿入光源は現在、SPring-8で唯一のハイブリッド型アンジュレータであり、また周期長がもっとも短い24mmである。このため1次光で24keVまでの高エネルギー光を供給することが可能となっている。また、機械的には5mmまでギャップを閉じることが可能であり、この場合、エネルギーの下限は6keVとなる。周期長が短く、周期数も多いために磁場調整が標準型アンジュレータよりも困難であるが、磁極の入れ替えを多数行うことにより磁場調整を行い、ほぼ満足のいく調整結果が得られた。ただし現在では(1999年12月)ギャップの下限が8mmとされている。これはエネルギーでは12keVに対応する。したがって1次光のみに限ると使用できるエネルギー範囲は12〜25keVとなっている。


3.輸送チャンネル・ビームライン光学系
 輸送チャンネルの概念図を図1に示す。現在は上流から順に傾斜型二結晶分光器、γ-ストッパー、4象限スリット、X線ストッパーと並んでいる。実験ハッチ建設後は現在あるX線ストッパーを実験ハッチの最下流に移設し、下流シャッターを光学ハッチに導入する。
 BL46XUは光学素子として傾斜型二結晶分光器を持つ。分光結晶はSi(111)をもちいており、SPring-8標準型二結晶分光器と同型である。分光器の評価は今年に行う予定である。




図1 ビームライン概念図



4.実験ステーションについて
 BL46XU実験ステーションの今後の計画について述べる。実験ステーション内に導入される装置はHuber社製8軸回折計を予定している。この回折計の写真および軸構成概念図を図2に示す。この8軸回折計は軸として水平面内の回転であるγ-αの2軸、垂直面内のω-2θの2軸、これに偏光解析用の結晶を搭載するアーム上のωa-2θaの2軸、あとはχ軸と試料回転のφ軸の計8つをもつ。




図2 結晶構造解析用8軸ゴニオメータの概要



 我々はこの回折計を用い偏光をキーワードとしてこのビームラインを立ち上げていくつもりである。そのためには移相子は必要不可欠であるがSPring-8においてはすでにBL39XUにおいて移相子を用いて多くの研究がされており、様々な成果をあげている[1−2][1]M. Suzuki, N. Kawamura, S. Goto, M. Mizumaki, M. Kuribayashi, J. Kokubun, K. Horie, K. Hagiwara, K. Ishida, H.Maruyama, and T. Ishikawa : SPring-8 Annual Report 1997(1998)233.
[2]M. Suzuki, N. Kawamura, M. Mizumaki, A. Urata, H.Maruyama, S. Goto and T. Ishikawa : Jpn. J.Appl. Phys. 37(1998)1488.
。移相子は重要な光学素子である。
 研究対象となる試料は磁性体を用いる。特に磁性体の場合、制御された偏光X線を用いると詳細な情報が得られる。今のビームラインの状況とあわせて考えるとできる実験は非共鳴領域のエネルギーを用いることが多くなると考えられるが、その場合の進めていきたい実験をいくつかあげてみよう。ひとつは偏光解析を用いた磁気散乱である。直線偏光で磁気散乱をいくつかの逆格子点にて行うと磁性体の軌道角運動量・スピン角運動量という物理量を各々分けて求めることができる。この手法を用いると、遍歴磁性体における反強磁性-強磁性相転移などの機構にMCD(Magnetic Circular Dichroism)やMCP (Magnetic Compton scattering)や白色磁気回折法などに比べてより詳細・直接的に迫ることができる。というのもMCDなどの方法では強磁性状態のものしか見えないからである。さらに試料からの散乱X線についても偏光解析することによって新しい情報がないかも考えていきたい。これはシグナルの強度において非常に厳しいものになると思われる。また磁気散乱を用いた磁性体の精密な磁気構造の決定あるいは中性子吸収原子を含む磁性体の磁気構造決定も考えている。




図3 結晶構造解析用8軸ゴニオメータ



5.まとめ
 実験ハッチは1999年12月に建設を始めている。2000年1月にはハッチ完成、3月末には使用前検査を終了し4月には実験ハッチに放射光を通す予定である。BL46XUは光源がアンジュレータである回折・散乱のビームラインの最初となる。またこのビームラインの役割は冒頭にも述べたようにチャレンジングな研究・開発を行うことであることを踏まえて腰を据えた研究を行っていきたい。

 このビームラインの立ち上げにご尽力いただきましたSPring-8の多くの人に感謝の意を表します。


参考文献
[1]M.Suzuki, N.Kawamura, S.Goto, M.Mizumaki, M.Kuribayashi, J.Kokubun, K.Horie, K.Hagiwara, K.Ishida, H.Maruyama, and T.Ishikawa : SPring-8 Annual Report 1997(1998)233.
[2]M.Suzuki, N.Kawamura, M.Mizumaki, A.Urata, H.Maruyama, S.Goto and T.Ishikawa : Jpn.J.Appl.Phys.37(1998)1488.



水牧 仁一朗 MIZUMAKI  Masaichiro
(財)高輝度光科学研究センター 利用促進部門 実験ステーショングループ
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0802  ext. 3870 FAX:0791-58-0830
e-mail:mizumaki@spring8.or.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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