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Volume 04, No.5 Pages 47 - 48

7. 談話室・ユーザー便り/OPEN HOUSE・A LETTER FROM SPring-8 USERS

拡大世話人会報告
Report of Enlarged Sub-Group Meeting

松井 純爾 MATSUI Junji

姫路工業大学 理学部 Faculty of Science, Himeji Institute of Technology

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 夏期シャットダウンに入る直前に100mAでの蓄積リング運転が実施されて、SPring-8放射光の利用展開がますます期待されることとなりました。ビームラインも既設あるいは建設中のもの以外に、6本の新たな計画が諮問委員会で審議され答申のはこびになったということで、SPring-8における利用効率の向上は21世紀に入り格段にアップすることになります。一方で既に輝かしい実績を出しているビームラインもあって、それらは、論文発表に加えて、施設側で企画している「SPring-8 Research Frontiers」を通じて世界に発信して行くことになりましょう。
 そういう背景の中で、ビームライン利用への取り組み、あるいは成果の取りまとめ段階において利用者からさまざまな意見が出始めており、施設側との調整が必要な場面が顕在化しつつあるのも事実です。中でもSG(サブグループ)世話人の役割については、昨年12月のシンポジウム、あるいは本年3月のワークショップの折りにも問題点に触れさせていただき、会員諸氏の意見交換をお願いしました。SG世話人は、建設フェーズにおいてはSG会員の意見集約と建設の責任者的任務を負い、また利用フェーズにおいては利用の進捗を監視し、機器改良とビームの高度化を目指しておられる訳です。建設フェーズの世話人がそのまま利用フェーズにまたがったまま、アニュアルレポート等の利用報告の取りまとめを依頼されたりする一方で、本人の課題申請が「代表者」を意識されないことによるフラストレーションは、小職への直訴、あるいは時には叱責へと変化することもあります。
 そこで、日頃ご苦労されている世話人の方々に一堂に会していただき、施設側の責任者を交えて虚心坦懐に意見交換する機会を作っていただきました(平成11年7月28日(水))。まず上坪所長から、ビームタイム利用効率と実験のスループット向上を期待して、採択課題にメリハリを付けたり、評価をフィードバックして次の創造的研究を推進したい、ということや、R&Dビームラインを増やしてビームラインの高度化や萌芽的研究の創出のためのプロジェクト研究を進めたい、ということ、さらには成果専有課題を含めて、産業界からのSPring-8へのアクセスをし易くする方策などについてご提案がありました。
 「建設立ち上げモード」のビームラインと「ユーザーモード」に入っているビームラインの違いは、利用者懇談会の各SG会員諸氏の認識するところでありますが、必ずしも完成に至っていない「立ち上げモード」のビームラインでは、従来のSGの概念にとらわれず、複数の「装置責任者」的な指導者を置いたり、プロジェクト志向の重点的マシンタイム配分を試みつつ、できるだけ早くユーザーズモードに移行できる体制が必要、との意見が出され、施設側にも概ね了解していただいたと感じました。
 アニュアルレポートやシンポジウムでのSG報告については、SG単位による成果取りまとめに対する世話人の任務軽減策や、同じビームラインの他の利用者の成果集約やその記述結果の責任など、いろいろな問題点が指摘されましたが、依然として明瞭な打開点には達していません。すでに立ち上がっているビームラインでは、施設側ビームライン責任者とSG世話人の相互の役割を明確にしつつ、両者の良好な関係を保つこと、そして当面は、テーマ毎にSGの誰かが報告を担当せざるを得ない、というのが現状ではないでしょうか。そのビームライン責任者の選出について世話人側の意向も勘案してもらいたいという意見が、これから新しくビームラインを建設したいと希望する世話人から出ましたが、施設側の運営体制の中で検討をお願いしたいと考えます。
 全体の議論の中で、「特定課題制度」を作って文部省研究費による実験、SPring-8予算による実験、あるいは6ヶ月で完了しない長期の重要課題などに対処して行きたい、との施設側からの提案を受けて、「高度化」を見据えた特定課題や、新しいアイデアを試行できる実験課題などもこのような枠の中で消化できないか、との積極的な意見が提示されたことは、今回のSG拡大世話人会の一つの成果であったと思っています。 
 
松井 純爾 MATSUI  Junji
姫路工業大学 理学部 物質科学科 教授
〒678-1297 兵庫県佐用郡三日月町光都3-2-1
TEL:0791-58-0233 FAX:0791-58-0236
e-mail:matsui@sci.himeji-tech.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794