Volume 04, No.5 Pages 45 - 46
6. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
SPring-8第4回マシンスタディ報告会
The 4th Meeting on Machine Studies of SPring-8
SPring-8マシンスタディ報告会も今回で4回目となる。今回は、昨年の第13サイクル(1998年12月)から今年の第6サイクル(1999年6月)までに実施されたマシンスタディが対象となり、25件の報告があった。会場は中央管理棟1F講堂。報告会で発表されたスタディのテーマと報告者は以下の通りである。
ビーム性能の加速周波数依存性の測定
安積隆夫
電子入射部のビーム軌道の調査
水野明彦
電子ビームがリニアック加速管内に誘起するマイクロ波の測定
花木博文
シンクロトロンでの加速途中エネルギーの平衡軌道測定
深見健司
シンクロトロン制御系変更作業にともなうBPMの動作確認試験
青木 毅
新RF-KOシステムによるビーム純度の測定
青木 毅
DBMを用いたRF-KOシステムによるシングルバンチの純度測定
青木 毅
リアルタイムスペアナを用いたシンクロトロンにおけるベータトロン振動数の測定
大島 隆
蓄積リングにおけるベータトロン振動のゆらぎの測定
中村 剛
蓄積リングSingle Bunch運転大電流蓄積試験
中村 剛
バンチ純度のRFバケットハイト依存性
田村和宏
ポッケルスセルを用いた光シャッターシステムの性能評価
田村和宏
放射光ビームプロファイルモニターの調整および水平方向のビームサイズの測定
正木満博
蓄積リング加速空胴内のHOM測定
恵郷博文
蓄積リング加速空胴HOMチューナー位置の最適化
恵郷博文
電子抑制ゲージのテスト
大石真也
蓄積リングのビーム軌道に対する電磁石冷却水温度変化の影響
熊谷桂子
蓄積リングバンプ電磁石のビームキック量の測定
熊谷桂子
フィリングパターンとビーム寿命
高雄 勝
バンチ体積とタウシェックビーム寿命
高雄 勝
ビームシェーカーのテスト
小路正純
蓄積リングの48ヶ所の直線部すべてにおいて高水平、低垂直ベータトロン関数を有するオプティクスのスタディ
早乙女光一
電子ビームのエネルギー制御のためのマシンスタディ
田中 均
ID RF-BPMフィリング依存性解消のための回路調整
原 徹
L3BT・ニュースバルでの放射線モニターの調整
高城徹也
以上の報告のうち、いくつかについて紹介する。
線型加速器では、加速周波数(通常2856MHz)のビームエネルギーへの影響について調べるスタディが行われ、加速周波数を+20kHz とした場合でもエネルギー変動1%以内であることが確認された。また、電子銃を出たばかりの電子はエネルギーが極めて低く、このため地磁気など周辺磁場の影響を受けやすい。そこで、電子銃出射直後のビーム軌道のずれについて調査され、ビームライン付近の磁化が原因であると推定された。このほか、ビーム自身が加速管に誘起するマイクロ波の周波数、強度、位相などが測定された。
シンクロトロンでは、主にシングルバンチ純度向上のためのスタディが行われた。シングルバンチを生成するうえで重要なパラメーターであるベータトロンチューンをリアルタイムスペアナを用いて詳細に測定し、この結果、電磁石電源に起因されると思われるリップルが観測された。今後、チューンの測定結果をもとにRF-KO法の高度化等により純度のさらなる向上が期待される。また、シンクロトロンでは、昨年下半期に制御系を蓄積リングの制御系と統合化することが行われた。スタディ期間を利用して統合化後の動作試験を行い、統合化以前のパラメーターを再現することが確認された。操作性についても飛躍的に向上し、たとえば、通常シンクロトロンでは1GeVで入射された電子を8GeVまで加速するが、この加速途中に一定エネルギーの区間を設けるような運転も容易に行えることが確認された。
蓄積リングについては、以下のような報告がなされた。No.38セルのBM2 偏向電磁石を光源とするラインに、放射光可視光成分を光学窓を通して取り出すミラーチャンバーをマシン収納部に設置してある。その放射光可視光成分をダブルスリットを通して得られる干渉縞のビジビリティから、水平方向ビームサイズを評価する手法が試みられた。同じく、シングルバンチのバンチ純度を効率よく高精度に評価するためのスタディが行われた。ポッケルスセルを用いた高速シャッターを応用した1000秒の計測により、1mAメインバンチに対し4×10−9 の不純バンチを評価できることが確認された。また、RFバケットハイトの違いによる後方バケットへの電子の流れ込みについてのスタディが行われ、モーメンタムコンパクションファクターが1.65×10−3 となるオプティクスで蓄積リングを運転し測定を行ったが、後方バケットへの電子の流れ込みは観測されなかった。計算ではリングの蓄積エネルギーを低くすると起こる可能性のあることが示された。
加速空胴内のHOMを測定し、各々の空胴についてHOM抑制に用いるチューナの最適な位置が得られた。ここで求められたチューナ位置の妥当性については、ビームを用いて確認する予定であることが報告された。
バンプ電磁石励磁によるビーム軌道の変動についてのスタディが行われた。シングルパスモニターで入射後数ターンの軌道変動を観測した結果、水平方向についてはバンプ軌道が完全に閉じていないことに起因する振動が観測された。
フィリングパターンとビーム寿命についての調査が行われた。Full-Fill近傍で急激にビーム寿命が延びる原因については、さらに調査を進めるとの報告があった。このほか、将来的に高水平、低垂直ベータトロン関数を有する48回対称のオプティクスを実現するためのスタディや、長期のビーム軌道安定化システムを構築するための基礎データ取得を目的としたスタディも行われた。本報告会で使用されたOHPのコピーが中央制御室に保管されているので、参照願いたい。
深見 健司 FUKAMI Kenji
(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0851 FAX:0791-58-0850
e-mail:fukami@spring8.or.jp
大熊 春夫 OHKUMA Haruo
(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
TEL:0791-58-0858 FAX:0791-58-0850
e-mail:ohkuma@spring8.or.jp