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Volume 04, No.5 Pages 43 - 44

6. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第24回リニアック技術研究会に参加して
Report of the 24th Linear Accelerator Meeting in Japan

水野 明彦 MIZUNO Akihiko

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門 JASRI Accelerator Division

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 リニアック技術研究会は、おそらく、読者諸氏にとってはなじみが薄いかもしれない。しかし、線型加速器に分野が特化されているものの、1975年にKEKで第0回が開かれてから既に4半世紀の歴史を誇る。元々はお互いに問題点等をざっくばらんに議論するために開かれたと聞いている。したがって、各施設の現状報告が多いし、あまり格式張った感じがないので小さな事でも気兼ねなしに発表できる利点がある。また、一方では最新の研究成果の報告も多い。
 今回は、北海道大学で7月7日(水)から7月9日(金)の3日間に渡って開かれた。発表件数は口頭発表44件、ポスター発表92件の計136件、参加者数は約200名であった。例年、口頭発表とポスターは同時進行すること無く別々に時間がとってあり、参加者は(聞きたければ)全ての発表を聞くことができた。しかしながら、ポスター発表会場は少し手狭であり、全てをじっくり見て廻るのは困難であった。発表は、現状報告、FEL、制御/運転、モニター、RF電源、加速空胴、電子銃、その他応用の各分野に分かれていた。ポスター発表はともかく、口頭発表ではいつもながら現状報告が最多である。
 初日は、午前中と午後の4時まで現状報告、および将来計画の発表で占められ、2日目もさらに、朝から4件現状報告の発表があった。折角であるから、現状報告セッションで報告された施設の名を列挙してみる。
 北大電子加速器、東北大核理研ライナック、東大原施トリプレットライナック、日大電子線利用施設、阪大産研ライナック、SPring-8ライナック、KEK PF、およびKEK B用リニアック、KEKにおけるCバンド開発の現状、電総研リニアック、KEK ATFの現状、KEK田無、原研-KEK統合計画用超伝導リニアック。(ちなみに、ライナック、リニアックとバラバラな単語を用いた理由は、各加速器施設がそのように呼んでいるからである。SPring-8線型加速器スタッフの間では、ライナックと呼ぶのが一般的である。)
 北大の45MeVライナックは日本でもっとも古い加速器の1つである。現在、主に、中性子の利用、パルスラジオリシス、PXR(パラメトリックX-ray)用に運転されている。また、バンチの生成する電界を観測することによる電子ビームのパルス幅測定が継続して行われている。
 東大のライナックは、従来、ツインライナックと呼ばれていたものであるが、新しく導入したプラズマカソードライナック(パルス巾10fs程度)を含めてフェムト秒トリプレットライナックとして発表があった。また、ツインライナックのRFとTワットレーザーとの同期精度300fsを目指した実験を予定している。RF電子銃の実験では、高出力の半導体レーザーを用いることによって、レーザー安定度0.29%、電子ビーム安定度1.1%を達成しているとの報告があった。
 日大電子線利用施設(線型加速器)では、KEK PFで使用済みとなった三菱製クライストロンを借り受け、メーカー保証値を上回るスペック(20MW,20µsec、2Hz)で運転したところ、軒並み高周波窓が破損したとの報告があった。(裏を返せば、高周波窓さえ対策すれば、まだまだ使える??)また、加速管にRFを注入する前に電子ビームを加速管に通し、後からRFを注入すると、ビームに不安定性が起こることが報告された。新たなBBUであるとの報告であったが、理由ははっきりしない。
 阪大には従来からの38MeV Lバンドライナックと150MeV Sバンドライナックの2つがある。Lバンドライナックでは、パルスラジオリシス用に、サブピコ秒パルスを生成している。Sバンドでは、電子銃をphotoカソードRF電子銃に置き換え、性能評価を行なっている。その他、長波長領域でのFEL、シケインでのコヒーレント放射の観測、低速陽電子源の運用などの報告があった。
 SPring-8では、昨年の夏に冷却系温度の安定化、RF励振系の安定化、クライストロン変調器の安定化等の対策を施し、線型加速器出力ビームのエネルギー安定度±0.1%(1σ)、電流安定度±0.7%(1σ)を達成したと発表した。この数字は、線型加速器の安定度としては、おそらく世界でもトップレベルである。
 KEKの入射器では、KEK Bのための改造後、KEK B電子リング、KEK B陽電子リング、2.5GeV PFと、PF蓄積リングの4つのリングに入射することになった。このため、各リングにエネルギーの違うビームを入射する必要があり再現性が厳しいものとなっている。PFとの間では、リング入射に対してシステマティックなスキームを決め、入射器、リングの責任分担を明白にして入射をスムーズに行なう試みをしており、順調に入射できているとの報告があった。
 原研FELでは、現在のFEL出力0.1kWのところを、将来的に1kWを達成するために、エネルギー回収型の超伝導リニアックを計画中であると報告した。加速用cavityとして超伝導空胴を用い、FEL発振した後の電子ビームを再度cavityに減速位相で通してエネルギーを回収する。回収したエネルギーで、更に電子ビームを加速してやれば、原理的にはRFからビームへのエネルギー変換効率100%が可能であるとのことである。
 核燃料サイクル機構(旧動燃)のCW電子線型加速器では、ピーク電流74mA、パルス幅420µs、繰り返し1ppsのビームまで安定的に加速できるようになったとの報告があった。この加速器は、今年度末で開発中止となるそうで、残念である。
 JLC計画に向けたKEKにおけるCバンド技術開発の報告では、CバンドのRFパルス圧縮システム、HOMフリーの加速管の完成、Cバンドクライストロン(E3726、東芝)の完成等の話題が報告された。
 電総研の現状報告では、TERASでの逆コンプトン実験、NIJI-4の改造、NIJI-4で行われているFELで、昨年秋に212nmの発振に成功したこと等の報告が行われた。
 KEK田無分室の短寿命核用リニアックは、平成12年に予定されている田無分室の閉鎖に伴い、原研東海のタンデム施設に移転する計画が進められていることの報告があった。
 原研-KEK統合計画用超伝導リニアックの報告では、まず、原研とKEKで別々に計画していた大強度プロトンリニアックが、昨年秋に統合されて1つの新しい計画として再スタートした旨の報告があった。統合計画の下での新設計のビームオプティクスの報告があった。リニアックとしては出力のビームエネルギー安定度を±0.1%に押さえる必要があるとのことで、非常に野心的な計画である。
 以上、現状報告を中心に紹介した。その他、筆者が興味を持ったもの(分野が偏るかもしれない)をいくらか紹介すると、宇都宮大学の西田氏らは、レーザー光をビームに対して斜めに入射し、なおかつ、外部から(レーザーによる磁場を打ち消すための)磁場を加えてやれば、磁場強度をうまく選ぶことによって陽子ビームを加速することができることを報告した。
 原研の鈴木氏は、レーザー光を、多数の鏡で鼓状に閉じ込めることのできる多面鏡システムを提案した。荷電変換装置、多価イオン生成装置、逆コンプトンのレーザー源等として利用できる。
 広島大学の井上氏らは、単結晶チャネリング放射光による陽電子の生成に成功したと報告した。KEKにおける実験では、通常標的によるものよりも生成率は落ちるが、世界初の報告と思われる。
 今回の北大での開催は、遠いこともあって参加者が少ないのではないかと、主催者側は危惧されていたそうであるが、それに反して非常に多くの申し込みがあり、また、会場や懇親会場の選択においても成功であったように思う。(ただ、地の利もあって、研究会の最終日午後には参加者数が1/10くらいに減ってしまったのは残念であったが。)
 来年は、SPring-8で開催されることに決まった。7月に姫路での開催を考えているが、事務部門の方々には色々とご迷惑をお掛けすることになるかもしれません。実りある研究会にしたいので、よろしくお願い致します。



水野 明彦 MIZUNO  Akihiko
(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門
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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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