ページトップへ戻る

Volume 04, No.4 Pages 71 - 73

7. 談話室・ユーザー便り/OPEN HOUSE・A LETTER FROM SPring-8 USERS

つれづれなるままに

Download PDF (428.77 KB)


 持ち回り連載も4回目となるとなかなかネタに困ってくるものである。しかし、西播磨は四季折々の楽しみがたくさんあり、列挙にいとまがないほどであるが、西播磨に来てはや4年、ぶらぶら散歩(?)に行ったところを少し紹介することにしよう。


○花

 花は桜に限る!なんて狭量なことを言う気はないが、やはり行ってみたくなるのは桜の名所が真っ先にくるのは仕方のないことであろうか。ここで、「播磨の桜というと姫路城公園とか龍野公園でしょう。」という御仁は多いことと思う。しかし、これらの場所で思い出すのは「夜桜を愛でる。」と言うより、酒飲みの介抱の記憶ばかりである。夜桜見物は気温が下がることが多いので、中から暖めようとついつい飲み過ぎることが多いうえ、たいてい冷や酒なので、これは後から効く。これで猛反省をして、花見を警戒するようになった方も一人や二人ではないのではないだろうか?そう、そこのあなた!花見は十分暖かい格好をしていくこと。これにつきるのである。暖かいものを飲み食いできれば、それはそれは幸せな宴会になることであろう。私の趣味を言うなら、虎の出る宴会は大好きなのであるが…。

 私のおすすめは南光町の光福寺にあるオオイトザクラである(写真1)。大きな桜が山寺の境内に1本。地元のおばさんが売っている餅の出店があるだけ。





写真1 光福寺 オオイザクラ 夜の方がライトアップされて美しい


 SPring-8からは昼休みに食堂で昼食をとった後、ふらっと出かけても充分帰ってくることができる近さである。夜はライトアップされてこれもなかなか。どちらかというとこっちの方が素晴らしい。「桜=花見宴会」ではないのである。しだれ桜、八重桜の大木が近くにないであろうか?これらもなかなか好きなのだが…。

 さて、播磨にきて、「おお、これはなかなか」と思うものに、菜の花がある。朝の通勤時に見ることができる栗栖川沿いの菜の花は、私が播磨に来てから今年が一番多かった(写真2)。去年までは播磨ではないが、岡山県の長船から西大寺に至る吉井川沿いの堤防が5,6km一面の菜の花が咲いていたのであるが、今年はなぜかあまり咲いていなかった。そもそも、菜の花というものは川の堤防に植えるには不適当な植物であるということを聞いたことがある。菜の花は菜種油をとるために栽培されるほど、油分の多い植物である。この菜の花を目指してミミズがよく繁殖するそうである。これが畑ならば、土に栄養があることの証明になるのであろうが、あいにく、堤防にとってはよくないものがこのミミズを目指して増えてしまうそうである。モグラである。モグラが土の中をミミズを求めて動き回ると、いざ増水となったときの耐久力が弱まってしまうと言うことである。真偽のほどは知らないが、何となくつじつまはあっていそうである。播磨の菜の花に話を戻すと、最近のお気に入りは林田川沿いの菜の花である。姫新線鉄橋下付近の菜の花、今年はなかなかの風情であった。一面菜の花の河原の中を、3両編成のディーゼル列車が鉄橋を渡っていく風景は鉄道雑誌のグラビアにでも載りそうな一コマとなっている。なぜか分からないが、この風景には缶ビールであろうか。余談にはなるが、その昔、揖保川は日本で汚い川の3指にはいる川であった。その元凶が揖保川の支流である林田川より流れ込む汚水であった。そのため、自治体あげての浄化につとめ、現在は林田川もふつうの川になっている。 まだ行ったことのないところに万勝院のボタンがある。春になるとSPring-8の近くに、あちらこちらに「ボタンの寺 万勝院 ↑」と書かれた看板が立っているので、御存じの御仁もいらっしゃるだろう。一番近いSPring-8の境界からは直線で1km程度で、長尺ビームラインの端っこに行くよりは近いのであるが、そのような道はないので、大きく迂回して6km位の道のりを行くことになる。一度、万勝院の前までは行ったことがあるのだが、駐車料金プラス入園料がかかるといわれ、やめてしまった。ひとりで行ったので、「駐車料金がもったいない、平日の昼休みに何人かを誘ってこよう。」と思ったためだが、結局シーズンが過ぎてしまった。来年こそは!である。



写真2 栗栖川沿いの菜の花 運転しながら撮るのは危険である


○蛍

 今の時期、播磨の山奥で楽しめるのは蛍見物であろうか。梅雨に入り立ての6月上旬が旬である。この冊子の出る頃にはもう季節は終わっているだろうから、来年まで覚えていてほしい。名所!と言うわけではないが、SPring-8の近くにもいいところはある。新宮方面に向かう道で、角亀つのかめの集落より角亀川を下って上莇あざ原の集落に至る途中の河原は、夕食後のちょっとしたドライブで楽しむことができる。なお、河原(?)におりる際にはオフロード車の方がいいであろう。去年はちゃんと草が刈られていたのであるが、今年はその気配がない。この近郊で有名な名所と言うのが上月町にあるらしい。

 こんな話を書いているときに新聞を読んでいたら、「安富町林田川沿いに螢乱獲防止のパトロール」という記事が載っていた。先に書いた林田川の汚れ具合も、龍野より下流の話であったはずなので、上流は螢がいるくらいきれいな状況が保存されていたのだなーと感心した次第。またまた余談であるが、安富町は私のお気に入り「奥播磨」の醸造元があるので、そうでなくては困る。「奥播磨」の「袋しぼり」はなかなか素晴らしい酒だと思う。機会があればお試しあれ。尤もなかなか置いてあるところにお目にかからない。


○鮎

 鮎漁の解禁は全国ほぼ6月である。この文章が読まれる頃にはきっと最盛期になっていることだろう。その国々に鮎の名所はあるが、ご多分に漏れず、この播磨の川も鮎の名産地である。SPring-8は揖保川と千種川の2本の川に挟まれた格好になっている(といってももちろん、ESRFのように川の中州にあるわけではなく、どちらも10kmほど離れてはいるが)。どちらの川もこの季節になると釣り師たちが魚の数より多いのではないかと言うくらい川の中に立っている。夏の風物詩の友釣りである。残念ながら、いまだ友釣りの趣味はないので、この風景を見てうずうずするということはないが、舌なめずりはついしたくなる。鮎の塩焼きのあの苦みのあるはらわたを食べながら、すっきり辛口の日本酒なんて最高である。ここは地酒と言うには少し遠いが稲美町の「倭小槌」なんて酒がいい。うるかなどというものも日本酒のアテに最高である。屋形船に乗って川遊びをしながらというのもなかなか涼をそそるものがある。一度試してみたいものである。


○芋煮会

 東北地方の風習に芋煮会というものがある。秋になると河原に出て焚き火で里芋の鍋をつつくという奇習である。もちろんあうのは日本酒である。飲む分以外にも味付けにだぶだぶとそそぎ込むので、十分な量の酒を用意しなくてはならない。長年、東北にいると芋煮会が待ち遠しい体質に染まってしまう。東北といっても主に行われるのは山形県と宮城県であり、味付けが異なることはいろいろなところで紹介されている。

 さて、播磨にきてからも、何回か有志による芋煮会を行ったが、一番困るのは場所である。ちょっと贅沢を言わせてもらうならば、清流とそこそこ広い石河原。ちょっと歩けば薪が拾えて、トイレと酒屋と材料を買うことができるスーパーが近くにあって、鍋がレンタルできて、歩いて行けて…。などというところがあるはずもない。これまで、SPring-8敷地内、安室ダム湖畔、新宮の広場などでやってはみたが、石河原という第1条件を満たしたことがない。石河原という条件だけなら千種川あたりで何とかなりそうなのだが、近くにトイレがないと女性陣には猛反対を食うことになる。石河原でなければ、煉瓦などを持っていって、竈を作ればよいのであるが、基本は石を積んで大鍋を乗せるという方が雰囲気が出る。

 会場としての手持ちの札は、「山崎町道の駅の裏の河原」、「龍野大橋脇」(写真3)などがある。しかし、山崎町はいい石河原ではない、龍野は大橋の交通量が多く風情が出ない、などの不満点がある。どなたか適地をご存じないだろうか。条件は「清流とそこそこ広い石河原。ちょっと歩けば薪が拾えて、トイレと酒屋と材料を買うことができるスーパーが近くにあって、鍋がレンタルできて、歩いて行けて…。」





写真3 揖保川鮎友釣りこの河原は芋煮会向き?



鈴木伸介(SUZUKI Shinsuke)

(財)高輝度光科学研究センター

 

加速器部門 線型加速器グループ



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794