Volume 04, No.4 Pages 60 - 61
7. 談話室・ユーザー便り/OPEN HOUSE・A LETTER FROM SPring-8 USERS
SPring-8利用者懇談会 サブグループ(SG)拡大世話人会報告
Summary and Report of Enhanced SG Meeting ’99
今年(1999年)3月19日に、SPring-8中央管理棟講堂において、サブグループ(SG)拡大世話人会が開催された。これは同時期に開催されたSPring-8ワークショップが、本格的な運用を踏まえた議論の場になることに対応して、それまで個々のビームライン(BL)の立ち上げ、整備に向けて活動していたSGに、今後の整備、高度化に向けた議論の場を設けようと言うことで、今年度懇談会会長の姫路工業大学理学部松井氏により提案されたものである。SG間の親睦、交流もかねてBLの問題点や今後の方策について、中央管理棟講堂で、さらにその夕方から車で30分ほどの新宮町にある国民宿舎「志んぐ荘」において懇親会込みの忌憚のない意見を交換する場が設けられた。
SPring-8利用者懇談会 拡大世話人会
日時:平成11年3月19日(金)
午後2時から
SPring-8中央管理棟 1階 講堂
午後6時30分から
志んぐ荘
議題:1.既設ビームラインの高度化
2.新規ビームラインへの期待
3.リングのバンチモードについて
4.利用懇に対する意見
5.その他
筆者は都合により志んぐ荘での会合には出席できなかったが、前半の会合には参加した。その時のプログラムを簡単に下に記す。
(1)ビームライン計画
SPring-8のビームライン計画について 上坪宏道(SPring-8)
ビームライン検討委員会における審議 下村 理(SPring-8)
(2)長直線部の利用
長直線部の建設計画 北村英男(SPring-8)
非線形光学SG活動 並河一道(東京学芸大)
(3)長尺ビームラインの利用
長尺ビームライン建設計画 石川哲也(SPring-8)
(4)RI棟の利用
RI棟利用計画 下村 理(SPring-8)
(5)セベラルバンチモード運転
加速器の運転モードについて 大熊春夫(SPring-8)
セベラルバンチモード運転の利用課題 依田 卓(東京大学、現SPring-8)
(6)利用懇の活動等について
コメント 植木龍夫(SPring-8)
討論
(7)懇親会
以下記憶に残る限りでの報告を記してみたい。
上坪氏により共用BL30本のうち、10本が現在順調に稼動していること(ただし相乗りSGのBLも含まれている)、9本は建設中でそれらは放射光としての「光」の性質を十分に考慮したBLの名称を用い、その考えに沿った建設が行われていることの報告があった。さらに次の11本のBLについては、今年度以降一気に提案を受け付けるのか、あるいは再来年度以降に少し残しておくのか議論中であることが示された。またこの提案は中期提案の9本の建設主旨(つまり光の性質を前面に押し出したBL)と異なり、ユーザー主体での提案を積極的に受けつけたい、との説明があった。我々ユーザー主体のSGにとってはうれしいニュースであると感じた。次に下村氏からBL検討委員会の審議報告があり、終期提案にあたる27件の建設計画趣意書の結果が(この時点で)非公式ながら発表された。相乗りSGも含め各SGやユーザーからは、さらなるBL建設希望があることが示され、それに呼応するように1次審査の経過が説明された。この時の討論の時間か最後の討論の時間か失念したが、菊田氏から多大な建設計画があることから、それに応えるため今後はBL分岐を可能にするトロイカ方式を採用したい旨の説明と、今回の提案はエンドユーザーからの提案のため必ずしもBLの光の性質の名前が付けられていない点などの説明があった。
北村氏からはSPring-8の最も特徴を引き出すBLとしての長直線部を使った挿入光源の開発についての説明があった。磁石長25mで8〜18keVと23〜50keVをカバーし、フォトン数1020 を達成する頼もしい挿入光源である。この長くなるコヒーレント長をさらに生かすべく並河氏より「非線形光学SG」の設立提案と活動方針、X線領域でのコヒーレンスの利用と科学、についての説明があった。第3世代SRにしかできない利用として、専門家ではなくても興味深い内容であった。
大熊氏から我々ユーザーが日頃あまり見えない加速器の運転モードの詳細な説明があった。現在マルチバンチ、2/3filling patternの安定な運転状況などが報告された。依田氏からセベラルバンチモードでの実験課題と利用の必要性などが説明された。次の総合討論でも植木氏から説明があったが、加速器運転モードと利用ユーザーの振り分けなどが今後の課題となりそうであった。
最後の総合討論・コメントでは、植木氏から、シフト割り当て(特にユーザーが集中するBLでの細切れシフト)の方法の改善案が提案され、今後は学生の教育効果なども考えグループ運用なども考慮したい旨の説明があった。
この後、場所を志んぐ荘に移して、SG間交流も含め、さらに熱心な討論が行われた模様である(筆者は都合により参加できず。残念!!)。
日頃自分たちのSGしか対象にない(特に筆者)参加者にとっては、総合的なSPring-8の現状と、今後の方策、目指すものが明確にされて、たいへん有意義であったと思う。またユーザーにとっては日頃聞けなかった加速器運転チームのたいへんな努力も、少しは理解できたと思う。会合の名称は「SG拡大世話人会」であったが、今後はぜひ一般ユーザーも参加した「SPring-8 vs ユーザーの会」になれば、とも思う。短文ながら拡大世話人会報告、としたい。
森本 幸生 MORIMOTO Yukio
姫路工業大学 理学部
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